月光館学園
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最後に会った時よりも高くなった背を丸めて、白く長い髪を壁につけて、その人は戸惑っていた。
腕は、瞳は、こんなに心もとないほど弱そうだったろうか。
コロ丸が気付いた時もそうだ。彼は少し学校に入ろうとして、そして耳を塞ぐように手を当ててしゃがみこんでしまっていた。
(……あの時は、ずっと何事も無いように歩いていたのに)
自分達の事を本当に忘れてしまっているのか。けれどそれにしては、何か様子がおかしい。
「ぁ……」
震える声で、彼は応えようとする。
眉を寄せ、必死に記憶を手繰り寄せるように。
「……あ、い、ぎす……それと、……ころ、まる……?」
聞き覚えのある、静かな、けれど怯えているような声。
間違っていたらどうしようと、記憶の端のか細い糸を握って震えているその声に、アイギスは泣きそうな顔で大きく頷いて見せた。
「!!そう、そうです!」
「……ご、めん。少しだけ、戦ってた時の記憶だけ、しか、なくて……」
必死に、必死に。
桜木が思い出そうとしている様が、嬉しくて、辛くて。
「良かった……生きて、いたんですね……!!……良かった……!!」
そう言って、アイギスは笑う。
コロ丸も嬉しそうに彼の周りをまわって、その手を少し舐めた。
それに桜木も落ち着いてきたようで、「アイギス達も、生きてて良かったよ」と目を細めて立ち上がる。
「……そうだ、ゆかりさん達は?元気?」
「はい!皆さん、元気で……」
「……?」
「……ごめんなさい。貴方のことを覚えてるのは、全員ではなくて……」
忘れた存在がある。というのは、認識しづらい。
有里は覚えていた。コロ丸も、アイギスも、それと、僅かとはいえ荒垣も。
けれど、それ以外は。
『一緒に戦っていた存在が他にもいた』ということ自体が、曖昧になっていて。
「……そう。別にいいんだ。忘れてほしいと願ったのは、俺だから」
俺も、忘れちゃってたし。そう言って桜木は首を振る。
その記憶が滅亡を止めたという偉業と知ってなお、仕方がないと言う。
アイギスにとって、とても辛くて苦しいことを、言う。
「俺、あまり皆と関わってなかったろ?覚えていたって、どうしようも……」
「……でもきっと!すぐ、皆思い出します。だって、だって貴方は……!」
遮ってきた言葉に、彼は息を呑む。
アイギスは一度俯いて、でもそれでも、口にしなければならないと顔を上げた。
いや。
口にしたい。
伝えたい。
あの時の、何も恐れなかった彼のように。
「今でも私達の仲間、であります!」
「ワンッ」
「……な、かま……」
かつての彼なら、「俺はアンタ達の仲間じゃない」と切り捨てていただろう。
実際桜木もそう言おうとして、けれど何故か言えなかった。
言う前に心臓のあたりが暖かくなるような、そんな何かが包み込んできたからだ。
適切な言葉にしようとして、できなくて、彼は少し躊躇いながらも口を開く
「……うん。ありがとう」
それが、せめてもの礼だった。
眉を少し下げて、口元を緩めて、下手くそな笑顔を作ってみせた。
ああ、この人は、アイギスは思う。
止まって、でも進もうとしているのだ。
あの時よりもぐちゃぐちゃになった道を、必死になって。
(……やっぱり、貴方は強い人。普通なら留まってしまうのに、真摯に私達にも向き合ってくれるなんて)
ならば、自分達の出来ることは1つだと、コロ丸を抱えて優しく笑い返した。
「ウサギさん。またいつでも、遊びに来てください!」
腕は、瞳は、こんなに心もとないほど弱そうだったろうか。
コロ丸が気付いた時もそうだ。彼は少し学校に入ろうとして、そして耳を塞ぐように手を当ててしゃがみこんでしまっていた。
(……あの時は、ずっと何事も無いように歩いていたのに)
自分達の事を本当に忘れてしまっているのか。けれどそれにしては、何か様子がおかしい。
「ぁ……」
震える声で、彼は応えようとする。
眉を寄せ、必死に記憶を手繰り寄せるように。
「……あ、い、ぎす……それと、……ころ、まる……?」
聞き覚えのある、静かな、けれど怯えているような声。
間違っていたらどうしようと、記憶の端のか細い糸を握って震えているその声に、アイギスは泣きそうな顔で大きく頷いて見せた。
「!!そう、そうです!」
「……ご、めん。少しだけ、戦ってた時の記憶だけ、しか、なくて……」
必死に、必死に。
桜木が思い出そうとしている様が、嬉しくて、辛くて。
「良かった……生きて、いたんですね……!!……良かった……!!」
そう言って、アイギスは笑う。
コロ丸も嬉しそうに彼の周りをまわって、その手を少し舐めた。
それに桜木も落ち着いてきたようで、「アイギス達も、生きてて良かったよ」と目を細めて立ち上がる。
「……そうだ、ゆかりさん達は?元気?」
「はい!皆さん、元気で……」
「……?」
「……ごめんなさい。貴方のことを覚えてるのは、全員ではなくて……」
忘れた存在がある。というのは、認識しづらい。
有里は覚えていた。コロ丸も、アイギスも、それと、僅かとはいえ荒垣も。
けれど、それ以外は。
『一緒に戦っていた存在が他にもいた』ということ自体が、曖昧になっていて。
「……そう。別にいいんだ。忘れてほしいと願ったのは、俺だから」
俺も、忘れちゃってたし。そう言って桜木は首を振る。
その記憶が滅亡を止めたという偉業と知ってなお、仕方がないと言う。
アイギスにとって、とても辛くて苦しいことを、言う。
「俺、あまり皆と関わってなかったろ?覚えていたって、どうしようも……」
「……でもきっと!すぐ、皆思い出します。だって、だって貴方は……!」
遮ってきた言葉に、彼は息を呑む。
アイギスは一度俯いて、でもそれでも、口にしなければならないと顔を上げた。
いや。
口にしたい。
伝えたい。
あの時の、何も恐れなかった彼のように。
「今でも私達の仲間、であります!」
「ワンッ」
「……な、かま……」
かつての彼なら、「俺はアンタ達の仲間じゃない」と切り捨てていただろう。
実際桜木もそう言おうとして、けれど何故か言えなかった。
言う前に心臓のあたりが暖かくなるような、そんな何かが包み込んできたからだ。
適切な言葉にしようとして、できなくて、彼は少し躊躇いながらも口を開く
「……うん。ありがとう」
それが、せめてもの礼だった。
眉を少し下げて、口元を緩めて、下手くそな笑顔を作ってみせた。
ああ、この人は、アイギスは思う。
止まって、でも進もうとしているのだ。
あの時よりもぐちゃぐちゃになった道を、必死になって。
(……やっぱり、貴方は強い人。普通なら留まってしまうのに、真摯に私達にも向き合ってくれるなんて)
ならば、自分達の出来ることは1つだと、コロ丸を抱えて優しく笑い返した。
「ウサギさん。またいつでも、遊びに来てください!」