―月光館学園。
俺がずっと、通っていた場所。
「……っ」
ああ、やっぱり。
身が竦む。息が詰まる。
建物を見ようと顔を上げると、寒気がして仕方ない。

―通いたくない。

―行きたくない。

―触られ、たくない。

ぞわりとした肌の粟立ちが、自らの身体に危険信号を送ってきた。
頭が正常に働かずに、ぐらり、視界が暗転しかける。
せめて邪魔にならないようにと校門の脇にしゃがみこみ、息を整えた。
吐いて。吸って。吐いて。目を閉じてそれを繰り返すと少し寒気が和らぎ、そしてのすっと背中に何かのしかかってきた。
「……犬？」
薄目を開けて振り返ると、白い犬が1匹、心配そうな瞳で自分を見ている。
どこの犬だろうかと少し撫でると、ぱたぱたと走ってくる音が聞こえてきた！
「あ、こら！すみません、大丈夫です、か……」
金髪で、自分と年は同じくらいだろうか。所々機械のような接続部分が見える彼女はしかし、驚いたようにその目を丸くした。
俺も何かが引っかかって、ぁ、と小さく声を出す。
「……ウサギ、さ……」
「ワフッ」
それは、とても見覚えのある、暖かい存在だった。