修学旅行
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11月17日。
修学旅行当日。
新幹線で、ユキは窓際の席に腰を下ろし早々に本を読み出した。
湊はその隣に座り、欠伸をする。
「……眠いのか?」
「……まあ、少しね。」
「肩貸すから、着くまで寝てろ」
ユキがそう言うと、湊はコクリと頷き彼の肩に身体を預けた。
その様子を前の席からジイっと見ていた綾時は、ふむと顎に手をやり真剣な顔つきになる。
「……二人ってさ、付き合ってるの?」
「「「!?」」」
彼と席を同じくしていた友近、伊織、宮本はギョッとして綾時を見るも、ユキは怪訝そうな顔をして「は?」と彼を見る。
「付き合うって、何?」
「いやだからさあ、恋人同士なのかなーって」
「違うな」
ユキが興味もなさげに言うと、綾時は「えー?」と茶化すように笑う。
「じゃあ、桜木君は、有里君の事どう思ってるのさー」
「人間」
「いやそりゃそうだろうけどよ!聞いてんのはそうじゃねえって!」
伊織が思わずツッコミを入れると、「それ以外にどう思いようがあるんだ?」と逆に首を傾げられた。
「んー……性格的に、ここが好きーみたいな?」
「……考えた事ない」
ページを捲りながらそう答え、「でも」と付け足すように口を開く。
「でも?」
「少なくとも望月君よりは静かだ」
「それ、暗に黙れって言ってない!?そうだよね!?」
「別に」
本に視線を向けたままそう言ったユキは、「修学旅行は楽しいものらしいから、騒いでいたところで驚かない」と観測を述べた。
「もぉー……それじゃあ、桜木君は楽しむ気あるわけ?」
「さあね」
「さあねじゃなくて!」
「楽しいとか、嬉しいとか、……そういうの、随分前から思い出せないから」
ぺらり。
乾いたページが捲られ、周りはほんの少しだけ静寂に包まれる。
「……随分前って、どういうこと?」
言いながら、綾時は失敗したと顔を歪めた。
この手の話は聞くべきではない。言った瞬間にそう分かったからだ。
けれどユキは、それさえもなんでもないことかのように口を開いた。
「親が死んだ時に、一緒に感情まで死んだみたいでな。お陰で今も、恐らく傷つくべきところだったんだろうけど、何も感じない」
平然と、淡々と。ページを捲る指も、文字列を追う瞳も揺らぐ事なく、彼は言う。
「ええっと……」
「だから、気にする必要はない。アンタ等は好きに楽しんでいればいい。俺はそう言っているつもりだが?」
「……そ、そーんなこと言うなよ!桜木も一緒に回んだからさ!」
伊織がヘラリと笑って言うと、ユキは目を細め、「もの好き」と一言呟くように言った。
すると湊が「ん……」と呻き、彼の肩に顔を擦り寄せる。
ユキがその頭を軽く撫でれば、「二人って、すっごく仲良いよねー」と綾時が話題を変えるように朗らかに言った。
「付き合ってないんだとしてもさ、いつから話してるの?」
「……コイツが転校してきた時、迷ってるのを何度か見ただけ」
「桜木君から、今の有里君みたいに甘えたことってある?」
「そんなに」
「有里君から攻められたことは?」
「おい綾時、お前何聞いてんだよ……」
攻め……?と首を傾げたユキをみて、伊織や友近が呆れたような声を上げる。
しかし綾時が気にせずに「ほら、スキンシップが過剰になった時とか?」と言うと、ユキはああと納得したように頷いた。
「唇を合わせられた」
「え」
「あとは……その後舌を入れられたり、身体をまさぐられたり……でもあれは大体湊の意識がない時だから、アイツの本意かは分からないけど」
「……ええっと、それって、もしかしてむぐっ」
「いやー!仲良きことは美しきかな、だよな!」
綾時の口を伊織が塞ぎ言えば、ユキは興味が無いのかまた読書に戻る。
(りょーうーじー!二人がアヤシー関係なのは今に始まった事じゃねーんだから!お願いだから黙れ!)
(え、そうだったの!?有里君が桜木君の事好きそうだなーとは思ってたけど!!)
(あれは立派な一方通行の片思いだよなー……桜木、全然動じてねーもん)
(有里の態度とかで周りはほぼ気づいてるけどな)
前の席の四人はそうコソコソと話し合い、最後にもう一度桜木の方をチラリと見た。
桜木は本を読み終えたのか、目を閉じて有里の方に少しだけもたれかかりお互いに支えるようにして寝ている。
「……あれで付き合ってないんだぜ?」
「えー……桜木君が気づいてないだけで、ほぼほぼ付き合ってると同義だと思うよ?
だって嫌な人間相手にキスとか許さないでしょ、普通」
「その普通っつーのが通用する相手だとは到底思えん!」
「同じく」
四人は苦笑しながら、残り時間をトランプゲームで過ごす事にした。
修学旅行当日。
新幹線で、ユキは窓際の席に腰を下ろし早々に本を読み出した。
湊はその隣に座り、欠伸をする。
「……眠いのか?」
「……まあ、少しね。」
「肩貸すから、着くまで寝てろ」
ユキがそう言うと、湊はコクリと頷き彼の肩に身体を預けた。
その様子を前の席からジイっと見ていた綾時は、ふむと顎に手をやり真剣な顔つきになる。
「……二人ってさ、付き合ってるの?」
「「「!?」」」
彼と席を同じくしていた友近、伊織、宮本はギョッとして綾時を見るも、ユキは怪訝そうな顔をして「は?」と彼を見る。
「付き合うって、何?」
「いやだからさあ、恋人同士なのかなーって」
「違うな」
ユキが興味もなさげに言うと、綾時は「えー?」と茶化すように笑う。
「じゃあ、桜木君は、有里君の事どう思ってるのさー」
「人間」
「いやそりゃそうだろうけどよ!聞いてんのはそうじゃねえって!」
伊織が思わずツッコミを入れると、「それ以外にどう思いようがあるんだ?」と逆に首を傾げられた。
「んー……性格的に、ここが好きーみたいな?」
「……考えた事ない」
ページを捲りながらそう答え、「でも」と付け足すように口を開く。
「でも?」
「少なくとも望月君よりは静かだ」
「それ、暗に黙れって言ってない!?そうだよね!?」
「別に」
本に視線を向けたままそう言ったユキは、「修学旅行は楽しいものらしいから、騒いでいたところで驚かない」と観測を述べた。
「もぉー……それじゃあ、桜木君は楽しむ気あるわけ?」
「さあね」
「さあねじゃなくて!」
「楽しいとか、嬉しいとか、……そういうの、随分前から思い出せないから」
ぺらり。
乾いたページが捲られ、周りはほんの少しだけ静寂に包まれる。
「……随分前って、どういうこと?」
言いながら、綾時は失敗したと顔を歪めた。
この手の話は聞くべきではない。言った瞬間にそう分かったからだ。
けれどユキは、それさえもなんでもないことかのように口を開いた。
「親が死んだ時に、一緒に感情まで死んだみたいでな。お陰で今も、恐らく傷つくべきところだったんだろうけど、何も感じない」
平然と、淡々と。ページを捲る指も、文字列を追う瞳も揺らぐ事なく、彼は言う。
「ええっと……」
「だから、気にする必要はない。アンタ等は好きに楽しんでいればいい。俺はそう言っているつもりだが?」
「……そ、そーんなこと言うなよ!桜木も一緒に回んだからさ!」
伊織がヘラリと笑って言うと、ユキは目を細め、「もの好き」と一言呟くように言った。
すると湊が「ん……」と呻き、彼の肩に顔を擦り寄せる。
ユキがその頭を軽く撫でれば、「二人って、すっごく仲良いよねー」と綾時が話題を変えるように朗らかに言った。
「付き合ってないんだとしてもさ、いつから話してるの?」
「……コイツが転校してきた時、迷ってるのを何度か見ただけ」
「桜木君から、今の有里君みたいに甘えたことってある?」
「そんなに」
「有里君から攻められたことは?」
「おい綾時、お前何聞いてんだよ……」
攻め……?と首を傾げたユキをみて、伊織や友近が呆れたような声を上げる。
しかし綾時が気にせずに「ほら、スキンシップが過剰になった時とか?」と言うと、ユキはああと納得したように頷いた。
「唇を合わせられた」
「え」
「あとは……その後舌を入れられたり、身体をまさぐられたり……でもあれは大体湊の意識がない時だから、アイツの本意かは分からないけど」
「……ええっと、それって、もしかしてむぐっ」
「いやー!仲良きことは美しきかな、だよな!」
綾時の口を伊織が塞ぎ言えば、ユキは興味が無いのかまた読書に戻る。
(りょーうーじー!二人がアヤシー関係なのは今に始まった事じゃねーんだから!お願いだから黙れ!)
(え、そうだったの!?有里君が桜木君の事好きそうだなーとは思ってたけど!!)
(あれは立派な一方通行の片思いだよなー……桜木、全然動じてねーもん)
(有里の態度とかで周りはほぼ気づいてるけどな)
前の席の四人はそうコソコソと話し合い、最後にもう一度桜木の方をチラリと見た。
桜木は本を読み終えたのか、目を閉じて有里の方に少しだけもたれかかりお互いに支えるようにして寝ている。
「……あれで付き合ってないんだぜ?」
「えー……桜木君が気づいてないだけで、ほぼほぼ付き合ってると同義だと思うよ?
だって嫌な人間相手にキスとか許さないでしょ、普通」
「その普通っつーのが通用する相手だとは到底思えん!」
「同じく」
四人は苦笑しながら、残り時間をトランプゲームで過ごす事にした。