転校生
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あらかた買い終わり、桜木も有里もその手に袋を持ちながら商店街を歩いていた。
すると後方から、「ちょっとアンタ!」と呼ぶ声が聞こえ、二人共声の主を見る。
「えっと……たなか社長?」
「そうよ!全く、最近の若者は外だとすぐに無視しようとするんだから……!」
たなか社長と呼ばれた、どう見ても男性の外見のその人物は、有里の後ろに隠れた白髪を目ざとく見つけ「ん?」と首を傾げる。
「アンタ、その子……」
「あ、ええと……」
「ちょっと、顔見せなさい、ほら!」
「うわっ……」
グイと腕を引っ張られ、桜木は有里の横に並ぶように立った。
たなか社長と目を合わせないように下を向いていると、「アンタ、可愛いわね……」とつぶやかれる。
「え……?」
「この髪、地毛かしら?」
「……は、はあ…一応、そうですけど」
何をされるのか予測がつかない桜木は、少し後ずさりながら答えた。
そして有里の裾をくいと引っ張ると、有里はそれを察して口を開く。
「あの、彼女が怖がってるので、そのあたりでどうか……」
「アラ、ごめんなさい。でもアンタ綺麗なんだから、もっと自信持った方がいいわよ?」
「…………」
「じゃあ、アタシはこれで。有里も、デートしてるなら早く言いなさいよ!」
「え……」
何か盛大に誤解を受けた気がする。
有里がそう思うも、たなか社長は既にいなくなっていた。
「……デート?」
「多分、あの人が勘違いしただけだと思う……ここでお昼食べよう」
「うん」
苦笑しつつワイルドダックバーガーに入り、それぞれが注文してテーブルに向かう。
有里はペタワックセット、桜木はハンバーガーにポテトのSのみを頼み、有里の前に運ばれる巨大なハンバーガーとポテト、そして飲み物に目を丸くした。
「………大食漢?」
「ここに来ると、つい頼んじゃうんだよね」
「……まあ、いいんじゃない?」
袋を開けて、一口かじりながら呟く。
有里はしばらくそれを眺めてから、意を決したように口を開いた。
「……あのさ、昨日のメールの最後、……何か、あったの?」
ピタリ。桜木の動きが止まる。
しかしそれも一瞬で、また何事も無かったように顔を上げた。
「……少し、考え事をしてて。自分の行動に、悔いは生まれないか」
「……」
「でも、大丈夫。俺はこの選択を躊躇う必要はないし、悔いが残るのならそれは……俺が俺である事を諦めた時だけだ」
そう言い終われば、またハンバーガーを食べて、ポテトをつまむ。
(……また、一人で決めちゃったのか)
相変わらず、頼って欲しい時に頼ってくれない。
いや、こちらが助けようとする前に、自分で何とかしてしまうのだ。
有里は息を吐いて、ペタワックバーガーを頬張った。
(自分で自分の悩みに気づいて、すぐに解決しちゃうのは相変わらず凄いけど……
でも、少し淋しいな)
彼の決めた事の中に、きっと”自分たち”は入っていないから。
彼一人で解決して、彼一人で背負う。
そんな道しか、……彼の中に用意されていないから。
そう考えながらペタワックを完食すると、桜木は「すごい食べっぷりだった」とポツリ感想を漏らした。
「そういえば、うどんの時も三杯くらい食べてたっけ?」
「う……そうだね」
有里は言葉につまりながら、トレーを片しに行く彼の背を追う。
そして店を出ようとドアを押した時、「あのさ」と声をかけた。
「え?どうし――」
「これ、少し前に見つけて、合いそうだったから」
そう言って桜木の胸元に押し付けたのは、小さな紙袋。
「開けていい?」と聞くと頷いたので、ゴソゴソと紙袋の中身を取り出した。
「………指輪と、ブレスレット?」
指輪はシルバーで、小さなアクアブルーの宝石が一つ、大人しめに主張されていた。
そこを中心にややねじれが入っていて、文字も彫られている。
ブレスレットは黒いチェーンとタグのようなもので作られていて、タグにはやはり文字が彫られていた。
「……”You have been the only one for me.”」
「ユキにとっては邪魔かもしれないけど……どうかな?」
有里は真っ直ぐに桜木を見つめ、桜木はそれらと有里を交互に見やってから「……プロポーズ?」と首を傾げ足を進める。
「ううん、文字は予め彫られてたから。ただこれ、セットで売られててさ」
そう言って隣を歩く彼がポケットから出したのは、同じ色の指輪とブレスレット。
「お揃い、だな」
「そうだね。……指輪のサイズとか、多分大きいと思うけど」
有里がそう言うと、桜木は試しに手にした指輪を右手の親指に嵌めてみる。
するとすこし余裕はあるものの、すっぽりと指にはまったのを見て、「ホントだ」と声をもらした。
「ブレスレットも、その様子だと余りそうだね」
「だな。指輪はいいとして、これは少しチェーンを工夫しておく」
そう言って大事そうに紙袋に戻し、「感謝しとく」と呟くように言えば、有里は少し嬉しそうに目を細める。
(想いを伝えきるのは、もう少し先でもいいから)
今は形だけでも、想いを伝えておこう。
―You have been the only one for me.(私にはずっとあなたしかいない。)
すると後方から、「ちょっとアンタ!」と呼ぶ声が聞こえ、二人共声の主を見る。
「えっと……たなか社長?」
「そうよ!全く、最近の若者は外だとすぐに無視しようとするんだから……!」
たなか社長と呼ばれた、どう見ても男性の外見のその人物は、有里の後ろに隠れた白髪を目ざとく見つけ「ん?」と首を傾げる。
「アンタ、その子……」
「あ、ええと……」
「ちょっと、顔見せなさい、ほら!」
「うわっ……」
グイと腕を引っ張られ、桜木は有里の横に並ぶように立った。
たなか社長と目を合わせないように下を向いていると、「アンタ、可愛いわね……」とつぶやかれる。
「え……?」
「この髪、地毛かしら?」
「……は、はあ…一応、そうですけど」
何をされるのか予測がつかない桜木は、少し後ずさりながら答えた。
そして有里の裾をくいと引っ張ると、有里はそれを察して口を開く。
「あの、彼女が怖がってるので、そのあたりでどうか……」
「アラ、ごめんなさい。でもアンタ綺麗なんだから、もっと自信持った方がいいわよ?」
「…………」
「じゃあ、アタシはこれで。有里も、デートしてるなら早く言いなさいよ!」
「え……」
何か盛大に誤解を受けた気がする。
有里がそう思うも、たなか社長は既にいなくなっていた。
「……デート?」
「多分、あの人が勘違いしただけだと思う……ここでお昼食べよう」
「うん」
苦笑しつつワイルドダックバーガーに入り、それぞれが注文してテーブルに向かう。
有里はペタワックセット、桜木はハンバーガーにポテトのSのみを頼み、有里の前に運ばれる巨大なハンバーガーとポテト、そして飲み物に目を丸くした。
「………大食漢?」
「ここに来ると、つい頼んじゃうんだよね」
「……まあ、いいんじゃない?」
袋を開けて、一口かじりながら呟く。
有里はしばらくそれを眺めてから、意を決したように口を開いた。
「……あのさ、昨日のメールの最後、……何か、あったの?」
ピタリ。桜木の動きが止まる。
しかしそれも一瞬で、また何事も無かったように顔を上げた。
「……少し、考え事をしてて。自分の行動に、悔いは生まれないか」
「……」
「でも、大丈夫。俺はこの選択を躊躇う必要はないし、悔いが残るのならそれは……俺が俺である事を諦めた時だけだ」
そう言い終われば、またハンバーガーを食べて、ポテトをつまむ。
(……また、一人で決めちゃったのか)
相変わらず、頼って欲しい時に頼ってくれない。
いや、こちらが助けようとする前に、自分で何とかしてしまうのだ。
有里は息を吐いて、ペタワックバーガーを頬張った。
(自分で自分の悩みに気づいて、すぐに解決しちゃうのは相変わらず凄いけど……
でも、少し淋しいな)
彼の決めた事の中に、きっと”自分たち”は入っていないから。
彼一人で解決して、彼一人で背負う。
そんな道しか、……彼の中に用意されていないから。
そう考えながらペタワックを完食すると、桜木は「すごい食べっぷりだった」とポツリ感想を漏らした。
「そういえば、うどんの時も三杯くらい食べてたっけ?」
「う……そうだね」
有里は言葉につまりながら、トレーを片しに行く彼の背を追う。
そして店を出ようとドアを押した時、「あのさ」と声をかけた。
「え?どうし――」
「これ、少し前に見つけて、合いそうだったから」
そう言って桜木の胸元に押し付けたのは、小さな紙袋。
「開けていい?」と聞くと頷いたので、ゴソゴソと紙袋の中身を取り出した。
「………指輪と、ブレスレット?」
指輪はシルバーで、小さなアクアブルーの宝石が一つ、大人しめに主張されていた。
そこを中心にややねじれが入っていて、文字も彫られている。
ブレスレットは黒いチェーンとタグのようなもので作られていて、タグにはやはり文字が彫られていた。
「……”You have been the only one for me.”」
「ユキにとっては邪魔かもしれないけど……どうかな?」
有里は真っ直ぐに桜木を見つめ、桜木はそれらと有里を交互に見やってから「……プロポーズ?」と首を傾げ足を進める。
「ううん、文字は予め彫られてたから。ただこれ、セットで売られててさ」
そう言って隣を歩く彼がポケットから出したのは、同じ色の指輪とブレスレット。
「お揃い、だな」
「そうだね。……指輪のサイズとか、多分大きいと思うけど」
有里がそう言うと、桜木は試しに手にした指輪を右手の親指に嵌めてみる。
するとすこし余裕はあるものの、すっぽりと指にはまったのを見て、「ホントだ」と声をもらした。
「ブレスレットも、その様子だと余りそうだね」
「だな。指輪はいいとして、これは少しチェーンを工夫しておく」
そう言って大事そうに紙袋に戻し、「感謝しとく」と呟くように言えば、有里は少し嬉しそうに目を細める。
(想いを伝えきるのは、もう少し先でもいいから)
今は形だけでも、想いを伝えておこう。
―You have been the only one for me.(私にはずっとあなたしかいない。)