転校生
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「……イゴール」
路地裏の青い扉を開けたユキは、奥の椅子に腰を下ろす老人の名を呼んだ。
老人は「何か用ですかな、お客人?」と笑う。
ユキはその向かいに座るように椅子に座って口を開いた。
「聞きたい事があるんだけど……あの望月っていう人、”デス”だよね?」
「……ええ。やはり、気づかれましたか」
イゴールが目を細めると、「私からご説明致します」とテオドアが微笑む。
「正しくは、彼は”ニュクス”と呼ばれる存在……その記憶はありませんが、雰囲気などから察することはできます」
「……そう」
「もう、賢い貴方ならご理解いただけると思いますが……いよいよ、”滅び”が近づいてきているのです」
「……」
ユキは、何も言わない。
ただ紅い瞳を伏せて、テオドアの話に耳を傾けていた。
「”滅び”……それを止めると、貴方は約束をした。それは、当時の貴方一人ではとても不可能に近かった」
イゴールの声が、部屋に響く。
「だが、貴方はそれでも努力を、約束を諦めなかった。……例えその約束を果たしたかった理由が、既に叶わないとしても」
「……」
「今の貴方なら、一人でも充分”滅び”と戦い、そして封印させる事が出来るでしょう。
ですが、その代償は……」
「”命のこたえ”」
重ねるように、ユキはイゴールに言い目を細めた。
「分かってる。それを、多くの人間が”命”だと答えることも。……俺がきっと、そうであろうことも」
「……本当に、よろしいのですか?」
「いいんだよ。だって……俺がやらなかったら、きっと湊にその役が回るんだろ?」
その言葉に、イゴールとテオドアは目を見開く。そして「そうでございますね」とテオドアが答えた。
「自分で此処まで選んでおいて約束を果たせない、ましてや他人に任せる、なんてことしたくない。
……例え”滅び”がなくならなくったって、……どっちにしろ両親とは、もう過ごせないんだから」
『”滅び”をなくして、両親とまた、普通の生活を送りたい』
その小さな願いを守る為に、約束をした。
けれど直後に、自らの手でその願いを壊す事になってしまったから。
残ったのは、ただ途方もない”約束”のみ。どうせ命があろうとなかろうと、
その願いだけは、もう二度と叶わない。
決意の程が分かったのか、彼等は小さく頷いた。
「……そうですか。そこまでお決めなのでしたら、私たちはお止めいたしません」
「ありがとう。……無茶ばっかり言ってごめんね、テオ、イゴール」
「いえ。私たちは貴方がたの旅路を見送る者ですので」
テオドアは微笑み、ユキの頬を柔く撫でる。
ユキは礼を口にして、ゆっくりと瞼を閉じた。
路地裏の青い扉を開けたユキは、奥の椅子に腰を下ろす老人の名を呼んだ。
老人は「何か用ですかな、お客人?」と笑う。
ユキはその向かいに座るように椅子に座って口を開いた。
「聞きたい事があるんだけど……あの望月っていう人、”デス”だよね?」
「……ええ。やはり、気づかれましたか」
イゴールが目を細めると、「私からご説明致します」とテオドアが微笑む。
「正しくは、彼は”ニュクス”と呼ばれる存在……その記憶はありませんが、雰囲気などから察することはできます」
「……そう」
「もう、賢い貴方ならご理解いただけると思いますが……いよいよ、”滅び”が近づいてきているのです」
「……」
ユキは、何も言わない。
ただ紅い瞳を伏せて、テオドアの話に耳を傾けていた。
「”滅び”……それを止めると、貴方は約束をした。それは、当時の貴方一人ではとても不可能に近かった」
イゴールの声が、部屋に響く。
「だが、貴方はそれでも努力を、約束を諦めなかった。……例えその約束を果たしたかった理由が、既に叶わないとしても」
「……」
「今の貴方なら、一人でも充分”滅び”と戦い、そして封印させる事が出来るでしょう。
ですが、その代償は……」
「”命のこたえ”」
重ねるように、ユキはイゴールに言い目を細めた。
「分かってる。それを、多くの人間が”命”だと答えることも。……俺がきっと、そうであろうことも」
「……本当に、よろしいのですか?」
「いいんだよ。だって……俺がやらなかったら、きっと湊にその役が回るんだろ?」
その言葉に、イゴールとテオドアは目を見開く。そして「そうでございますね」とテオドアが答えた。
「自分で此処まで選んでおいて約束を果たせない、ましてや他人に任せる、なんてことしたくない。
……例え”滅び”がなくならなくったって、……どっちにしろ両親とは、もう過ごせないんだから」
『”滅び”をなくして、両親とまた、普通の生活を送りたい』
その小さな願いを守る為に、約束をした。
けれど直後に、自らの手でその願いを壊す事になってしまったから。
残ったのは、ただ途方もない”約束”のみ。どうせ命があろうとなかろうと、
その願いだけは、もう二度と叶わない。
決意の程が分かったのか、彼等は小さく頷いた。
「……そうですか。そこまでお決めなのでしたら、私たちはお止めいたしません」
「ありがとう。……無茶ばっかり言ってごめんね、テオ、イゴール」
「いえ。私たちは貴方がたの旅路を見送る者ですので」
テオドアは微笑み、ユキの頬を柔く撫でる。
ユキは礼を口にして、ゆっくりと瞼を閉じた。