転校生
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今日の七時間目は、今度行われる研修旅行の班決め、というのをおこなうことになった。
僕は伊織君達に誘われて、早速机をくっつける。
ふと隣の席を見ると、桜木君はまた一人でポツンと本を読んでいた。
それに伊織君も気付き、声をかける。
「桜木!一緒に班くもーぜ!」
「……え?」
彼はゆっくりとこちらを見て、疑問符を口にした。
「あ、お前小中体調不良で行ってねーんだっけ……今年は大丈夫か?」
「……今年は行けるけど……そっちの四人は、俺がいていいの?」
そう言うと今度は、僕らの方に視線が行く。
「僕は別に大丈夫!有里君は?」
「……いいと思う」
「俺達は、えーっと……まあ、平気だけど……てか、名前覚えられてる?」
そう尋ねたのは、伊織君の連れてきた友人二人だ。確か、えっと……。
「友近君と、宮本君、だろ?そのくらい知ってる」
淡々と、嫌味なく。
彼は言い切って、伊織君が彼の机を動かすのをぼんやりと見守る。
「お、おお……」
彼等は覚えられていた事にビックリしたのか、呆然としつつ席に着く。
伊織君と僕の間に桜木君、向かい側が、友近君、有里君、宮本君と座った。
友近君は気を取り直したように、伊織君に話しかける。
「そ、そういえばさ、今年の修学旅行って京都だっけ?」
「そーそー、三泊四日だから、結構空き時間あるぜー。どこ行くよ?」
「……望月君煩いし、何処でもいい……」
伊織君が隣から問いかけると、桜木君はボソリと呟いた。
「えー何その言い草ーひどいなー」
「だったら俺を巻き込もうとすんな……寝させろ……くああ」
目を細め、小さく口を開きそれを手で覆いながら彼は言う。
猫のようなその仕草がとても彼に馴染んでいて、ジッと見ていると「何?」と首を傾げてきた。
「今の顔可愛い!もっかいやって!撮るから!」
「……変人。連続で欠伸なんて、できるわけがないだろ」
頬杖をつきそっぽを向いた彼の、その頬を隣からふにっとつまむ。
(うわ、凄いもちもちしてる……クセになりそうだなあ)
彼はもう干渉されることに諦めたのか、「取り敢えず、各自行きたいところややりたいことを片っ端から出したらどうだ?」と伊織君に言った。
「おー、桜木、ナイスアイディア!じゃあルーズリーフ破って、それぞれで書く!……って湊?顔がさっきからこえーんだけど、俺っちなんかしちった?」
「……別に」
そう言った彼―有里君は、ジロリとこちらを一瞥してからルーズリーフの切れ端を受け取った。
「桜木、お前はどうするよ?」
「……その観光ガイド見せろ。旅行なんて行ったことないから、参考資料は見ておきたい」
桜木君はガイド冊子を受け取り、ペラペラとめくり始める。
僕はそれを横目で見ながら、んーとペンを握った。
(やっぱり、旅行っていうくらいなら食べ歩きしてみたいし、確か京都って舞妓さんいるんだっけ……会ってみたいなあ)
カリカリ、カリカリ、ペラリ、ペラリ。
時折少しだけペンを止めて彼を見るも、彼は集中しているみたいで捲る音しか立ててない。
やがてハアとため息をつくと、パタンとガイドブックを閉じた。
「いいの見つかった?」
「……まあ、正直、どこ行きたいって言われてもわからないけど」
「そう?」
「ここから出たいって思う事も無かったし、親とどこか遠出する事も結局できなかったからな」
機会がなかったから、考えてなかった。
彼はそう答えて、「望月君は、したい事とかあるのか?」と尋ね返す。
「えーっとね……食べ歩きでしょ、舞妓さんと写真撮るでしょ、あとね、清水寺にも行きたいな!」
「……清水の舞台から飛び降りるのか?さっき見たけど、そのままの意味で死ぬぞ?」
「違うよ!舞台からの景色がすっごい綺麗だっていうからさ!」
「……景色?飛び降りないの?」
「「「「……ぶっ」」」」
桜木君の言葉に、ずっと聞いていたらしい四人が軽く噴き出した。
「っくく……、桜木って、結構面白い奴、なんだな……っ」
「なんで、最初から飛び降りる以外の選択肢がないんだよ……っ」
友近君と宮本君がそう言うと、桜木君はキョトンとして首を傾げる。
すると有里君が少し肩を震わせたまま、「ユキ」と彼に声をかけた。
「何?」
「もし望月が、金閣寺に行きたいって言ったらどう考える?」
「……燃やしたら捕まるぞ?」
「なんで!?」
思わずガタリと立ち上がると、四人はいよいよ堪えきれなくなったのか声を出して笑い始める。
周りの班の子達が不思議そうに見てくるけど、そんな事は関係ない。
「いやだって、其処ら辺行くならそれ以外考えようが」
「あるでしょもうちょっと!観光に行くんだよ僕たち!そんな事故起こそうとか考えないよ!」
「あ、そうなの?ごめん。てっきりそういう歴史を体験するのかと……」
一体彼は、どんな修学旅行を想像してたというのだろうか。
四人は笑いが収まっていないし、彼は未だ何故笑われたのかも分からずキョトンとしているから、思わずため息をつきたくなる。
けれどそのおかげで、友近君達との緊張感もかなり和らいだような気がした。
有里君と伊織君が(まだ笑いながら)修学旅行について説明して、そして漸く何処へ行くかという話になった。
皆行きたいところとかはほぼ一緒だったので、交通機関なんかも調べていく。
「……そこ行くなら、そっちよりこっちの電車使ったほうが安くすむぞ」
トントン。桜木君がメモを取っている伊織君に声を掛けると、彼は目をパチクリして料金表を見比べた。
「え?……あ、マジだ」
「あとそれ。そんなに一度に多く行けないし、行けたとしても時間足りなくなると思う」
そう言うと、彼はシャーペンをポケットから取り出し、少し身を乗り出す。
「だから、ココとココは次の日にして、コレを……」
小さい文字が、伊織君のメモをどんどん埋めていく。
伊織君がそれを見て、感心したように声を上げた。
「おー……もしかして桜木って、計画立てんの得意なやつ?」
「……まあ、そこそこ。詰めすぎるとゆっくりする時間なくなるから、ここに休憩時間入れて……」
「あ、僕そこのソフトアイス食べたい!」
「僕、アイス最中」
「じゃあ俺も、ここで何か食おうかなー……」
「お前らはどんだけ食う気なんだよ……金ピンチになっても、知らねえからな?」
茶々を入れながら、どんどん計画は進んでいく。
チャイムがなれば彼はまた顔を突っ伏し、ホームルームが終わると同時に教室から出て行った。
僕は伊織君達に誘われて、早速机をくっつける。
ふと隣の席を見ると、桜木君はまた一人でポツンと本を読んでいた。
それに伊織君も気付き、声をかける。
「桜木!一緒に班くもーぜ!」
「……え?」
彼はゆっくりとこちらを見て、疑問符を口にした。
「あ、お前小中体調不良で行ってねーんだっけ……今年は大丈夫か?」
「……今年は行けるけど……そっちの四人は、俺がいていいの?」
そう言うと今度は、僕らの方に視線が行く。
「僕は別に大丈夫!有里君は?」
「……いいと思う」
「俺達は、えーっと……まあ、平気だけど……てか、名前覚えられてる?」
そう尋ねたのは、伊織君の連れてきた友人二人だ。確か、えっと……。
「友近君と、宮本君、だろ?そのくらい知ってる」
淡々と、嫌味なく。
彼は言い切って、伊織君が彼の机を動かすのをぼんやりと見守る。
「お、おお……」
彼等は覚えられていた事にビックリしたのか、呆然としつつ席に着く。
伊織君と僕の間に桜木君、向かい側が、友近君、有里君、宮本君と座った。
友近君は気を取り直したように、伊織君に話しかける。
「そ、そういえばさ、今年の修学旅行って京都だっけ?」
「そーそー、三泊四日だから、結構空き時間あるぜー。どこ行くよ?」
「……望月君煩いし、何処でもいい……」
伊織君が隣から問いかけると、桜木君はボソリと呟いた。
「えー何その言い草ーひどいなー」
「だったら俺を巻き込もうとすんな……寝させろ……くああ」
目を細め、小さく口を開きそれを手で覆いながら彼は言う。
猫のようなその仕草がとても彼に馴染んでいて、ジッと見ていると「何?」と首を傾げてきた。
「今の顔可愛い!もっかいやって!撮るから!」
「……変人。連続で欠伸なんて、できるわけがないだろ」
頬杖をつきそっぽを向いた彼の、その頬を隣からふにっとつまむ。
(うわ、凄いもちもちしてる……クセになりそうだなあ)
彼はもう干渉されることに諦めたのか、「取り敢えず、各自行きたいところややりたいことを片っ端から出したらどうだ?」と伊織君に言った。
「おー、桜木、ナイスアイディア!じゃあルーズリーフ破って、それぞれで書く!……って湊?顔がさっきからこえーんだけど、俺っちなんかしちった?」
「……別に」
そう言った彼―有里君は、ジロリとこちらを一瞥してからルーズリーフの切れ端を受け取った。
「桜木、お前はどうするよ?」
「……その観光ガイド見せろ。旅行なんて行ったことないから、参考資料は見ておきたい」
桜木君はガイド冊子を受け取り、ペラペラとめくり始める。
僕はそれを横目で見ながら、んーとペンを握った。
(やっぱり、旅行っていうくらいなら食べ歩きしてみたいし、確か京都って舞妓さんいるんだっけ……会ってみたいなあ)
カリカリ、カリカリ、ペラリ、ペラリ。
時折少しだけペンを止めて彼を見るも、彼は集中しているみたいで捲る音しか立ててない。
やがてハアとため息をつくと、パタンとガイドブックを閉じた。
「いいの見つかった?」
「……まあ、正直、どこ行きたいって言われてもわからないけど」
「そう?」
「ここから出たいって思う事も無かったし、親とどこか遠出する事も結局できなかったからな」
機会がなかったから、考えてなかった。
彼はそう答えて、「望月君は、したい事とかあるのか?」と尋ね返す。
「えーっとね……食べ歩きでしょ、舞妓さんと写真撮るでしょ、あとね、清水寺にも行きたいな!」
「……清水の舞台から飛び降りるのか?さっき見たけど、そのままの意味で死ぬぞ?」
「違うよ!舞台からの景色がすっごい綺麗だっていうからさ!」
「……景色?飛び降りないの?」
「「「「……ぶっ」」」」
桜木君の言葉に、ずっと聞いていたらしい四人が軽く噴き出した。
「っくく……、桜木って、結構面白い奴、なんだな……っ」
「なんで、最初から飛び降りる以外の選択肢がないんだよ……っ」
友近君と宮本君がそう言うと、桜木君はキョトンとして首を傾げる。
すると有里君が少し肩を震わせたまま、「ユキ」と彼に声をかけた。
「何?」
「もし望月が、金閣寺に行きたいって言ったらどう考える?」
「……燃やしたら捕まるぞ?」
「なんで!?」
思わずガタリと立ち上がると、四人はいよいよ堪えきれなくなったのか声を出して笑い始める。
周りの班の子達が不思議そうに見てくるけど、そんな事は関係ない。
「いやだって、其処ら辺行くならそれ以外考えようが」
「あるでしょもうちょっと!観光に行くんだよ僕たち!そんな事故起こそうとか考えないよ!」
「あ、そうなの?ごめん。てっきりそういう歴史を体験するのかと……」
一体彼は、どんな修学旅行を想像してたというのだろうか。
四人は笑いが収まっていないし、彼は未だ何故笑われたのかも分からずキョトンとしているから、思わずため息をつきたくなる。
けれどそのおかげで、友近君達との緊張感もかなり和らいだような気がした。
有里君と伊織君が(まだ笑いながら)修学旅行について説明して、そして漸く何処へ行くかという話になった。
皆行きたいところとかはほぼ一緒だったので、交通機関なんかも調べていく。
「……そこ行くなら、そっちよりこっちの電車使ったほうが安くすむぞ」
トントン。桜木君がメモを取っている伊織君に声を掛けると、彼は目をパチクリして料金表を見比べた。
「え?……あ、マジだ」
「あとそれ。そんなに一度に多く行けないし、行けたとしても時間足りなくなると思う」
そう言うと、彼はシャーペンをポケットから取り出し、少し身を乗り出す。
「だから、ココとココは次の日にして、コレを……」
小さい文字が、伊織君のメモをどんどん埋めていく。
伊織君がそれを見て、感心したように声を上げた。
「おー……もしかして桜木って、計画立てんの得意なやつ?」
「……まあ、そこそこ。詰めすぎるとゆっくりする時間なくなるから、ここに休憩時間入れて……」
「あ、僕そこのソフトアイス食べたい!」
「僕、アイス最中」
「じゃあ俺も、ここで何か食おうかなー……」
「お前らはどんだけ食う気なんだよ……金ピンチになっても、知らねえからな?」
茶々を入れながら、どんどん計画は進んでいく。
チャイムがなれば彼はまた顔を突っ伏し、ホームルームが終わると同時に教室から出て行った。