”終わり”の始まり
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「桐条の実験の生き残り、か……」
深い闇の中、ユキはコンビニへの帰路に着きながらポソリと呟く。
『タカヤ、ジン、チドリ……この名前に、聞き覚えは?』
『……ああ、確か逃げ出した実験体に、そんな名前の者がいた気がするよ』
「タルタロスで見たことあると思ったら、そういう事か。
あれだけタルタロスに肯定的だったから、全然照合が上手くいかなかったけど」
そう言って頭を掻くと、「ね、ジンって人」と後ろを振り向かず声をかけた。
すると電信柱の向こうから、ジンが姿を現す。
「いつから……」
「タルタロスにいた時から。大方、”終わったはずなのに終わってない”のに様子を見に来たとか、そんなところでしょ?」
空をただ見上げる、冷たい声。
ユキが息を吐くと、ジンは「俺らのこと聞いて、どうするつもりや?」と聞いた。
「……別に。ただ、色々と頭の中が整理できただけかな」
「へえ……」
「ついでに聞くけど、アンタは俺を何処まで知ってるの?」
そう言って、ようやく彼はジンの方を振り向いた。
ジンはしばらく黙ったあと、ゆっくりと口を開く。
「……本名、桜木ユキ。誕生日、4月3日。17歳。
月光館学園2年。無所属。両親は他界」
「………」
「『噂』が多く、そのどれも真実味はあるが事実かは曖昧な部分が多い。
故に、避けられてるが多くの生徒は半信半疑っちゅーとこやな。
……それだけや」
「俺の誕生日知ってるだけ、凄いと思うけどね」
ユキは肩を竦め、「そんなに知ってる人はいない筈だけど」と答えた。
「嫌味か?んなもん、俺の手にかかれば朝飯前や。……俺が言いたいんは、なんでお前が街中で”死んでる扱い”になってるのかっちゅーことや」
ピクリ。僅かにユキの肩が動く。
「正確には、”白い髪の方の桜木ユキ”やな。アンタは10年前の事故で、両親と共に死んだってなっとる。
お陰でどの情報も曖昧すぎて、確証を持つ術もあらへん」
「……まあ、あれ以来あんまりこの髪で歩いてなかったからね」
彼は自分の髪を弄りながら言い、「死んでる方が好都合だし、楽だけど」と呟いた。
「……どう言う意味や?」
「一人でいる方が楽だし、俺の約束も達成しやすい。
他人を考えて群れるのは、面倒だからな」
でも、アンタは違うんだろう?
ゴーグルの奥の瞳は、そう言いながら細められる。
「タカヤは、絶望。チドリは、逃避。……アンタは、崇拝。
そんな感じがする」
「……」
「それは、繋がれてるワケでもない絆。でも、湊達みたいに不安定でもない、確かなモノ。
……本当に影時間が続いて欲しいわけでもなく、ただ”終わり”を迎えたいだけなのに」
淡々と、淡々と。
「それを、多分他の人は、『悲しい』とか『悔しい』とか、そんな感情で表現するんだろうな」
そんな事を平気な顔で宣って、ユキは首を傾けた。
ジンは呆然と彼を見つめ、そして「は、」と言葉を出す。
「なんや、それ、アンタ、わかったように、」
「アンタ等の顔、言葉、行動、全て見てれば嫌でも分かる。
……まあ、でもその願いを、俺は阻止するわけだけど」
それが俺の『約束』だから。
重ねるようにそう告げると、ジンの顔が歪んだ。
(……もし約束や無かったら、アンタは願いを叶えてくれたんか?)
集められて、実験台にされて、あの中に友達も、沢山いたのに。
結局逃げてこれたのは、自分たちだけで。それも、永くは生きられない。
俯いていると、いつの間にかユキは彼の目の前に立っていて、ポツリと呟くように言った。
「……まだ大切な人が生きてるなら、その人を守ってやれ」
全てが手遅れになる前に。
凛としたその声は、ひどく重くジンの心に響いた。
深い闇の中、ユキはコンビニへの帰路に着きながらポソリと呟く。
『タカヤ、ジン、チドリ……この名前に、聞き覚えは?』
『……ああ、確か逃げ出した実験体に、そんな名前の者がいた気がするよ』
「タルタロスで見たことあると思ったら、そういう事か。
あれだけタルタロスに肯定的だったから、全然照合が上手くいかなかったけど」
そう言って頭を掻くと、「ね、ジンって人」と後ろを振り向かず声をかけた。
すると電信柱の向こうから、ジンが姿を現す。
「いつから……」
「タルタロスにいた時から。大方、”終わったはずなのに終わってない”のに様子を見に来たとか、そんなところでしょ?」
空をただ見上げる、冷たい声。
ユキが息を吐くと、ジンは「俺らのこと聞いて、どうするつもりや?」と聞いた。
「……別に。ただ、色々と頭の中が整理できただけかな」
「へえ……」
「ついでに聞くけど、アンタは俺を何処まで知ってるの?」
そう言って、ようやく彼はジンの方を振り向いた。
ジンはしばらく黙ったあと、ゆっくりと口を開く。
「……本名、桜木ユキ。誕生日、4月3日。17歳。
月光館学園2年。無所属。両親は他界」
「………」
「『噂』が多く、そのどれも真実味はあるが事実かは曖昧な部分が多い。
故に、避けられてるが多くの生徒は半信半疑っちゅーとこやな。
……それだけや」
「俺の誕生日知ってるだけ、凄いと思うけどね」
ユキは肩を竦め、「そんなに知ってる人はいない筈だけど」と答えた。
「嫌味か?んなもん、俺の手にかかれば朝飯前や。……俺が言いたいんは、なんでお前が街中で”死んでる扱い”になってるのかっちゅーことや」
ピクリ。僅かにユキの肩が動く。
「正確には、”白い髪の方の桜木ユキ”やな。アンタは10年前の事故で、両親と共に死んだってなっとる。
お陰でどの情報も曖昧すぎて、確証を持つ術もあらへん」
「……まあ、あれ以来あんまりこの髪で歩いてなかったからね」
彼は自分の髪を弄りながら言い、「死んでる方が好都合だし、楽だけど」と呟いた。
「……どう言う意味や?」
「一人でいる方が楽だし、俺の約束も達成しやすい。
他人を考えて群れるのは、面倒だからな」
でも、アンタは違うんだろう?
ゴーグルの奥の瞳は、そう言いながら細められる。
「タカヤは、絶望。チドリは、逃避。……アンタは、崇拝。
そんな感じがする」
「……」
「それは、繋がれてるワケでもない絆。でも、湊達みたいに不安定でもない、確かなモノ。
……本当に影時間が続いて欲しいわけでもなく、ただ”終わり”を迎えたいだけなのに」
淡々と、淡々と。
「それを、多分他の人は、『悲しい』とか『悔しい』とか、そんな感情で表現するんだろうな」
そんな事を平気な顔で宣って、ユキは首を傾けた。
ジンは呆然と彼を見つめ、そして「は、」と言葉を出す。
「なんや、それ、アンタ、わかったように、」
「アンタ等の顔、言葉、行動、全て見てれば嫌でも分かる。
……まあ、でもその願いを、俺は阻止するわけだけど」
それが俺の『約束』だから。
重ねるようにそう告げると、ジンの顔が歪んだ。
(……もし約束や無かったら、アンタは願いを叶えてくれたんか?)
集められて、実験台にされて、あの中に友達も、沢山いたのに。
結局逃げてこれたのは、自分たちだけで。それも、永くは生きられない。
俯いていると、いつの間にかユキは彼の目の前に立っていて、ポツリと呟くように言った。
「……まだ大切な人が生きてるなら、その人を守ってやれ」
全てが手遅れになる前に。
凛としたその声は、ひどく重くジンの心に響いた。