”終わり”の始まり
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「……リーダーは、驚かないんですね。……やっぱり、知ってたんですか?」
天田の言葉に、有里はただ頷く。
他のメンバーも、それは察していたのだろう。言い様のない何かが彼等を覆って、包んでいた。
(今まで信じてた何かに、裏切られて。
自分たちがその片棒を担がされていて、悔しい筈なのに……)
そう、悔しい筈なのだ。
裏切られて悔しくて、これから先どうなるか不安な筈なのに。
(でも、きっとあの人は、そんな事関係なしに約束を果たしに行くんだ)
そう考える度に、何故だかそれがちっぽけな事に思えた。
―自分たちが手をくださずとも、大型シャドウは彼の手で葬られていただろう。
―それに、シャドウがもしそのままだったら、今より被害は出ていたかもしれない。
アイギスも操られた状態から正常に戻ったのか、何かを決意したようにバッと顔を上げて口を開く。
「……あの、私も、知っていたであります!」
「………なんだと?」
「幾月さんが、ずっと彼の事を探していたであります!私は、彼を見つけ次第捕えるよう、そう命令されていたから!」
白い髪、紅い目。とても綺麗で、強い人。
彼の目を見て確信した。周囲を静かに拒んでいる、冷たく悲しい瞳。あれは、あの人の持っていた写真の子供の時の彼のままだった。
「ウサギさんが言っていた事は本当であります!幾月さんは彼を、”滅び”ではなく”新しい世界”の贄として使おうとしていた!
もし彼の存在がバレたら……彼は、実験で死ぬよりも酷い目に遭っていたはずです!」
アイギスの切羽詰った声に、有里達は目を見開く。
「どうか、お願いします。……ウサギさんを、責めないでください。
あの人は、あんな計画の為に死んでいい人じゃない……!!」
「……大丈夫だよ、アイギス」
有里が彼女に近づいて、ポンと頭を撫でた。
その声は穏やかで、落ち着かせるように響く。
「湊さん、私は……」
「アイギスは、ウサギの事を守ろうとしてくれたんだろ?
それに、誰もウサギを責めてないよ」
「ワフッ!」
コロ丸が同調するように吠えると、アイギスはホッとしたように笑った。
「……取り敢えず、僕らはもう寮に戻ろう。……桐条先輩は、少し残りますか?」
「………ああ、すまないな。それと、ウサギにも謝っておいてくれないか?」
「はい」
肩を震わせ始めた桐条の声に頷き、タルタロスから踵を返す。
多分、気持ちの整理がまだ着き終えていないのだろう。それでも、その父に下ろされた瞳は、後ろを見てはいなかった。
空に輝く十六夜の月は、これから始まる”全ての終わり”に警鐘を鳴らすように、煌々と輝いていた。
天田の言葉に、有里はただ頷く。
他のメンバーも、それは察していたのだろう。言い様のない何かが彼等を覆って、包んでいた。
(今まで信じてた何かに、裏切られて。
自分たちがその片棒を担がされていて、悔しい筈なのに……)
そう、悔しい筈なのだ。
裏切られて悔しくて、これから先どうなるか不安な筈なのに。
(でも、きっとあの人は、そんな事関係なしに約束を果たしに行くんだ)
そう考える度に、何故だかそれがちっぽけな事に思えた。
―自分たちが手をくださずとも、大型シャドウは彼の手で葬られていただろう。
―それに、シャドウがもしそのままだったら、今より被害は出ていたかもしれない。
アイギスも操られた状態から正常に戻ったのか、何かを決意したようにバッと顔を上げて口を開く。
「……あの、私も、知っていたであります!」
「………なんだと?」
「幾月さんが、ずっと彼の事を探していたであります!私は、彼を見つけ次第捕えるよう、そう命令されていたから!」
白い髪、紅い目。とても綺麗で、強い人。
彼の目を見て確信した。周囲を静かに拒んでいる、冷たく悲しい瞳。あれは、あの人の持っていた写真の子供の時の彼のままだった。
「ウサギさんが言っていた事は本当であります!幾月さんは彼を、”滅び”ではなく”新しい世界”の贄として使おうとしていた!
もし彼の存在がバレたら……彼は、実験で死ぬよりも酷い目に遭っていたはずです!」
アイギスの切羽詰った声に、有里達は目を見開く。
「どうか、お願いします。……ウサギさんを、責めないでください。
あの人は、あんな計画の為に死んでいい人じゃない……!!」
「……大丈夫だよ、アイギス」
有里が彼女に近づいて、ポンと頭を撫でた。
その声は穏やかで、落ち着かせるように響く。
「湊さん、私は……」
「アイギスは、ウサギの事を守ろうとしてくれたんだろ?
それに、誰もウサギを責めてないよ」
「ワフッ!」
コロ丸が同調するように吠えると、アイギスはホッとしたように笑った。
「……取り敢えず、僕らはもう寮に戻ろう。……桐条先輩は、少し残りますか?」
「………ああ、すまないな。それと、ウサギにも謝っておいてくれないか?」
「はい」
肩を震わせ始めた桐条の声に頷き、タルタロスから踵を返す。
多分、気持ちの整理がまだ着き終えていないのだろう。それでも、その父に下ろされた瞳は、後ろを見てはいなかった。
空に輝く十六夜の月は、これから始まる”全ての終わり”に警鐘を鳴らすように、煌々と輝いていた。