”終わり”の始まり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
月光館学園、否、タルタロス前。
「……幾月、さん」
そこに”落ちてきた”のは、この学園の理事長でありS.E.E.Sの顧問である幾月だった。
コロ丸は彼がここに着く前に既に先に行っており、ユキは彼をジッと見つめる。
するとカッと目が見開き、ニタリと口が歪んだ。
「……やあ、これはこれは、あの”異形”の少年じゃあないか!やっぱり君には力が……!」
「煩い」
全く、何処からそんな言葉を吐く元気があるのだろう。ユキは考えながら、また幾月を見た。
脇腹に撃たれた跡。それと、恐らく上から落ちたことによる頭部の出血。放っておいても、じき死に至るだろう。
「……幾月さん、一つ訊く」
ユキは冷たい瞳で、口を開く。
「――――?」
すると幾月は目を見開いた後、スッと目を細めて答えた。
「それは……――――」
暫くして、彼は息を引き取った。
ゆっくりと階段を登り彼等のもとへ行くと、彼等は一人の人間の元に集まっていた。
「…ごめん、美鶴さんのお父さん、助けられなかった」
ポツリ。何が起こったのか悟ったユキがそう言うと、その一人の人間―美鶴の父―の側にいた美鶴は掠れた声で、「知って、いたのか」と尋ねる。
「知ってた。幾月さんが怪しい事も、何時かはこうなることも、影時間があれだけじゃ終わらないことも。…殴っても、別にいい」
そう告げた瞬間、美鶴は勢いよく立ち上がりガッと彼の胸ぐらを掴んだ。
彼よりほんの少しだけ小さい彼女は、下から殺気立ったように睨めつける。
しかし振り上げた拳は弱々しく、「なんで……」と言う声と共に彼の胸元を叩くだけで収まった。
「……なんで、伝えてくれなかった……?」
「………アンタ等にあの時言ったとして、アンタ等は信じれないし混乱する。
そうすれば俺の事も幾月さんにバレる危険性があった。そう判断した」
淡々とした声。それは冷たく響いて、けれど正論だった。
「いつから、理事長が怪しいと……?」
「俺が事故で入院してた頃。よく病室に見に来てたけど、先生に怒鳴られてた。”異形の子”とか、”おどろおどろしい眼”とか色々言ってたかな。
それで、少しあとに”新世界がどうの”って言ってたし、あれは自分の欲望を叶えたい目だなって思っただけ」
それに、美鶴がバッと顔を上げ、また何故、と聞こうとする。
しかしそれは、彼の言葉でかき消された。
「10年前の子供の記憶を、信じる人なんていない。それに、俺は事実ほかの人から見れば異形だ。
……そんな人間の証言なんか、なんの信用性も持たないだろ?」
「………ウサギは、異形じゃないよ」
そう答えたのは、湊だった。彼は悲しそうな顔でユキを見て、そして首を振る。
すると順平やゆかりも、恐る恐るといった様子で頷いた。
彼はハアと息を吐き、頭を掻きながら目を細める。
「この目を見ても、そう言えるの?」
そう言って彼は、ゆっくりと自らのゴーグルを外す。
月に照らされ輝くのは、燃え上がる炎のような紅い瞳。
白く光り続ける髪にそれはよく映えて、タルタロス塔と月を背に立つ彼に、どこか別世界に巻き込まれた感覚に陥った。
「それ、は……」
「生まれつきだよ」
一言。そして彼は一度俯き、またゆっくり顔を上げて彼らに問う。
「……それで、これからアンタ等はどうするんだ?」
その淡々とした言葉に、湊達の顔が下を向く。
(……目的が一度達成されてしまったのだから、仕方ないか)
ユキはそう考えながら、肩を竦める。
そして美鶴の手を離させると、スウと息を吸って告げた。
「……これから、”デス”が……”滅び”が訪れる。俺の約束は、その封印。
アンタ等がどうするかは知らないが……俺は俺で、変わらず活動させてもらう」
返事も聞かず、スタスタとその場を立ち去る。
冷たい風が、タルタロスを包み込んでいた。
「……幾月、さん」
そこに”落ちてきた”のは、この学園の理事長でありS.E.E.Sの顧問である幾月だった。
コロ丸は彼がここに着く前に既に先に行っており、ユキは彼をジッと見つめる。
するとカッと目が見開き、ニタリと口が歪んだ。
「……やあ、これはこれは、あの”異形”の少年じゃあないか!やっぱり君には力が……!」
「煩い」
全く、何処からそんな言葉を吐く元気があるのだろう。ユキは考えながら、また幾月を見た。
脇腹に撃たれた跡。それと、恐らく上から落ちたことによる頭部の出血。放っておいても、じき死に至るだろう。
「……幾月さん、一つ訊く」
ユキは冷たい瞳で、口を開く。
「――――?」
すると幾月は目を見開いた後、スッと目を細めて答えた。
「それは……――――」
暫くして、彼は息を引き取った。
ゆっくりと階段を登り彼等のもとへ行くと、彼等は一人の人間の元に集まっていた。
「…ごめん、美鶴さんのお父さん、助けられなかった」
ポツリ。何が起こったのか悟ったユキがそう言うと、その一人の人間―美鶴の父―の側にいた美鶴は掠れた声で、「知って、いたのか」と尋ねる。
「知ってた。幾月さんが怪しい事も、何時かはこうなることも、影時間があれだけじゃ終わらないことも。…殴っても、別にいい」
そう告げた瞬間、美鶴は勢いよく立ち上がりガッと彼の胸ぐらを掴んだ。
彼よりほんの少しだけ小さい彼女は、下から殺気立ったように睨めつける。
しかし振り上げた拳は弱々しく、「なんで……」と言う声と共に彼の胸元を叩くだけで収まった。
「……なんで、伝えてくれなかった……?」
「………アンタ等にあの時言ったとして、アンタ等は信じれないし混乱する。
そうすれば俺の事も幾月さんにバレる危険性があった。そう判断した」
淡々とした声。それは冷たく響いて、けれど正論だった。
「いつから、理事長が怪しいと……?」
「俺が事故で入院してた頃。よく病室に見に来てたけど、先生に怒鳴られてた。”異形の子”とか、”おどろおどろしい眼”とか色々言ってたかな。
それで、少しあとに”新世界がどうの”って言ってたし、あれは自分の欲望を叶えたい目だなって思っただけ」
それに、美鶴がバッと顔を上げ、また何故、と聞こうとする。
しかしそれは、彼の言葉でかき消された。
「10年前の子供の記憶を、信じる人なんていない。それに、俺は事実ほかの人から見れば異形だ。
……そんな人間の証言なんか、なんの信用性も持たないだろ?」
「………ウサギは、異形じゃないよ」
そう答えたのは、湊だった。彼は悲しそうな顔でユキを見て、そして首を振る。
すると順平やゆかりも、恐る恐るといった様子で頷いた。
彼はハアと息を吐き、頭を掻きながら目を細める。
「この目を見ても、そう言えるの?」
そう言って彼は、ゆっくりと自らのゴーグルを外す。
月に照らされ輝くのは、燃え上がる炎のような紅い瞳。
白く光り続ける髪にそれはよく映えて、タルタロス塔と月を背に立つ彼に、どこか別世界に巻き込まれた感覚に陥った。
「それ、は……」
「生まれつきだよ」
一言。そして彼は一度俯き、またゆっくり顔を上げて彼らに問う。
「……それで、これからアンタ等はどうするんだ?」
その淡々とした言葉に、湊達の顔が下を向く。
(……目的が一度達成されてしまったのだから、仕方ないか)
ユキはそう考えながら、肩を竦める。
そして美鶴の手を離させると、スウと息を吸って告げた。
「……これから、”デス”が……”滅び”が訪れる。俺の約束は、その封印。
アンタ等がどうするかは知らないが……俺は俺で、変わらず活動させてもらう」
返事も聞かず、スタスタとその場を立ち去る。
冷たい風が、タルタロスを包み込んでいた。