復讐の代償
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湊が先に行き、ドンドンともう閉まっているドアを叩く。
しばらくして、若々しい雰囲気を纏った医者が姿を現した。
「なんだい?こんな深夜に……」
「っすみません、急患です!さっき、銃で撃たれて……」
そう言うと、医者はバッと荒垣の抱えている青年を見て目を見開く。
「ユキ君……?……説明は、後でしてもらって構わないかな?」
それに二人が頷き、医者は彼等を中に入れる。
そして近くにいた看護師に「銃弾が当たったらしい。緊急でオペを入れる」と告げた。
「分かりました。スタッフを呼べるだけ呼んでおきますね」
「助かるよ。……ついておいで」
医者は二人の前を歩きながら、てきぱきと指示を下す。
そして何故か精神科の方の手術室にたどり着くと、「此処で待っててもらえる?」とユキを抱えながら訊いた。
「大丈夫です」
「ありがとう」
頭を下げて、手術室の中に入っていく。
しばらく経ってドタドタと看護師や医師が駆け込み、手術ランプが赤く光った。
「……飲み物、買ってくるか?」
荒垣がボソリと言う。湊は頷き、「お願いします」と呟いた。
「ああ。……ついでにアイツ等に、運び込んだから休んどけって連絡してくる」
「そうですね。天田君は特に、気にしているでしょうし」
「……だな」
荒垣はコツコツと靴を響かせて、下のフロアに降りていった。
湊はそれを確認した後、ハアアと大きく息を吐く。
(……大丈夫、ユキは、死なない)
バクバクと、心臓が騒がしい。
あのユキの姿を見たときは、寧ろ心臓が止まったかと思ったのに。
(信じろ、信じろ、信じろ…………信じろ)
何度も心の中で念じて、深呼吸する。
落ち着いてきた頃に荒垣も戻ってきて、ブラックコーヒーを受け取った。
「ありがとうございます」
「いや、……こっちこそ、その、……すまねえ」
荒垣は少し間を挟んで椅子に腰掛け、缶を開ける。
湊はそれに首を振り、「いいんです」と返した。
「リーダーとして、もっと早く気づくべきだったのは僕の責任です。それに……何かあるとすぐにユキに頼ってしまう。悪い癖ですよね」
そう言ってコーヒーを一気に飲み干すと、口の中が苦さで充満した。
「……ユキについて、知ってること全て教えてくんねえか?」
荒垣が、ポツリと口を開く。湊が首を傾げると、言葉を続けた。
「俺は、ずっとペルソナの抑制剤を飲んでた。……多分、もう戦いに参加することはできねえ」
「そう、なんですか?」
「ああ。美鶴に延命治療みてーなの受けられるように頼んだから、死にはしねえと思うけどよ。
……でも、やっぱり俺はまた天田みてえなガキを作りたくねえんだ。……怖いんだよ」
わりいな。
そう告げた荒垣の声は、深く沈んでいた。
湊がなんとか「わかりました」と言うと、彼は顔を上げる。
「……生きてほしいって、言われたんだ」
「へ?」
「ユキに、アイツが、俺らを庇った時に。
『俺達に生きてほしい、それが生きる理由じゃダメか』って……だったら、もうちょいそういう声を出せってもんだ。
それに、今お前死にそうじゃねえかって。死にそうな奴にそんなこと言われんのかってさ」
「……」
「なあ、リーダー。アイツは何を抱えてんだ?
なんで、あれほど自分を蔑ろにできる?」
静かな廊下に響く声。
湊は息を吐き、「僕が言える事は、少ないです」と答えた。
「それに、彼は……ユキは、きっと荒垣先輩にも話してくれると思います。
聞かれたら答えるが彼のパターンですし、結構先輩も信用されてるので」
「ああ?……なんだそりゃ」
「ユキの目、見たことあるんでしょ?」
湊の言葉に、荒垣は「まあな」と頷く。
「彼はあまり自分の目を見せたがらない。だから、信用されてるんですよ、多分」
「ほー……なるほどな」
それから暫く、これからメンバーをどうするか等を話し合った。
ランプが消え今度は入ってきた医師や看護師が出て行くと、最後に先ほどの医者が姿を現す。
「あの、ユキは……」
「大丈夫。呼吸は正常、動作も問題ない。今は眠ってるけど」
そう言うと向かいの椅子に座り、「じゃあ、事情を聞かせてくれるかな」と話を促した。
「……というわけ、なんです」
「そう……ともあれ、早く治療が出来てよかった。
彼はこのまま精神病棟の部屋に少し入院するから、君達は一度寮に戻りなさい」
「あの、……さっきから気になっていたんですが、どうして外科とかじゃないんでしょうか……?」
湊が尋ねると、医者は目を細めて「簡単に説明するよ」と口を開く。
「彼が事故で恐怖症を患っているのは、知っているかな?」
「……はい」
「それの対策とリハビリ目的で、彼専用の病室が予め用意してあるのが一つ。
あと、彼の容姿に邪心的な興味を持つ人間からの隔離というのが、もう一つかな」
邪心的。
(……大方、想像はついてしまうけど)
湊と荒垣がそう考えていると、医者は「彼と、連絡先は?」と尋ねた。
「えっと……僕、知ってます」
「そう。じゃあ、目を覚ましたら連絡を入れるように言っておくよ。でも、彼の事を知ってる人以外は来させないで。
患者のプライバシーは守られるものだから」
「わかりました」
頷き、念のため医者とも連絡先を交換する。
荒垣は湊と交換すると、「これからは、戦う以外で協力してやる」とぶっきらぼうに言った。
「さて、君達はもう帰りなさい。明日も、学校はあるんだろう?」
「そう、ですね……じゃあ、ありがとうございました」
礼をして、病院を去る。
荒垣と共に、静かな夜の街を寮まで歩いていった。
しばらくして、若々しい雰囲気を纏った医者が姿を現した。
「なんだい?こんな深夜に……」
「っすみません、急患です!さっき、銃で撃たれて……」
そう言うと、医者はバッと荒垣の抱えている青年を見て目を見開く。
「ユキ君……?……説明は、後でしてもらって構わないかな?」
それに二人が頷き、医者は彼等を中に入れる。
そして近くにいた看護師に「銃弾が当たったらしい。緊急でオペを入れる」と告げた。
「分かりました。スタッフを呼べるだけ呼んでおきますね」
「助かるよ。……ついておいで」
医者は二人の前を歩きながら、てきぱきと指示を下す。
そして何故か精神科の方の手術室にたどり着くと、「此処で待っててもらえる?」とユキを抱えながら訊いた。
「大丈夫です」
「ありがとう」
頭を下げて、手術室の中に入っていく。
しばらく経ってドタドタと看護師や医師が駆け込み、手術ランプが赤く光った。
「……飲み物、買ってくるか?」
荒垣がボソリと言う。湊は頷き、「お願いします」と呟いた。
「ああ。……ついでにアイツ等に、運び込んだから休んどけって連絡してくる」
「そうですね。天田君は特に、気にしているでしょうし」
「……だな」
荒垣はコツコツと靴を響かせて、下のフロアに降りていった。
湊はそれを確認した後、ハアアと大きく息を吐く。
(……大丈夫、ユキは、死なない)
バクバクと、心臓が騒がしい。
あのユキの姿を見たときは、寧ろ心臓が止まったかと思ったのに。
(信じろ、信じろ、信じろ…………信じろ)
何度も心の中で念じて、深呼吸する。
落ち着いてきた頃に荒垣も戻ってきて、ブラックコーヒーを受け取った。
「ありがとうございます」
「いや、……こっちこそ、その、……すまねえ」
荒垣は少し間を挟んで椅子に腰掛け、缶を開ける。
湊はそれに首を振り、「いいんです」と返した。
「リーダーとして、もっと早く気づくべきだったのは僕の責任です。それに……何かあるとすぐにユキに頼ってしまう。悪い癖ですよね」
そう言ってコーヒーを一気に飲み干すと、口の中が苦さで充満した。
「……ユキについて、知ってること全て教えてくんねえか?」
荒垣が、ポツリと口を開く。湊が首を傾げると、言葉を続けた。
「俺は、ずっとペルソナの抑制剤を飲んでた。……多分、もう戦いに参加することはできねえ」
「そう、なんですか?」
「ああ。美鶴に延命治療みてーなの受けられるように頼んだから、死にはしねえと思うけどよ。
……でも、やっぱり俺はまた天田みてえなガキを作りたくねえんだ。……怖いんだよ」
わりいな。
そう告げた荒垣の声は、深く沈んでいた。
湊がなんとか「わかりました」と言うと、彼は顔を上げる。
「……生きてほしいって、言われたんだ」
「へ?」
「ユキに、アイツが、俺らを庇った時に。
『俺達に生きてほしい、それが生きる理由じゃダメか』って……だったら、もうちょいそういう声を出せってもんだ。
それに、今お前死にそうじゃねえかって。死にそうな奴にそんなこと言われんのかってさ」
「……」
「なあ、リーダー。アイツは何を抱えてんだ?
なんで、あれほど自分を蔑ろにできる?」
静かな廊下に響く声。
湊は息を吐き、「僕が言える事は、少ないです」と答えた。
「それに、彼は……ユキは、きっと荒垣先輩にも話してくれると思います。
聞かれたら答えるが彼のパターンですし、結構先輩も信用されてるので」
「ああ?……なんだそりゃ」
「ユキの目、見たことあるんでしょ?」
湊の言葉に、荒垣は「まあな」と頷く。
「彼はあまり自分の目を見せたがらない。だから、信用されてるんですよ、多分」
「ほー……なるほどな」
それから暫く、これからメンバーをどうするか等を話し合った。
ランプが消え今度は入ってきた医師や看護師が出て行くと、最後に先ほどの医者が姿を現す。
「あの、ユキは……」
「大丈夫。呼吸は正常、動作も問題ない。今は眠ってるけど」
そう言うと向かいの椅子に座り、「じゃあ、事情を聞かせてくれるかな」と話を促した。
「……というわけ、なんです」
「そう……ともあれ、早く治療が出来てよかった。
彼はこのまま精神病棟の部屋に少し入院するから、君達は一度寮に戻りなさい」
「あの、……さっきから気になっていたんですが、どうして外科とかじゃないんでしょうか……?」
湊が尋ねると、医者は目を細めて「簡単に説明するよ」と口を開く。
「彼が事故で恐怖症を患っているのは、知っているかな?」
「……はい」
「それの対策とリハビリ目的で、彼専用の病室が予め用意してあるのが一つ。
あと、彼の容姿に邪心的な興味を持つ人間からの隔離というのが、もう一つかな」
邪心的。
(……大方、想像はついてしまうけど)
湊と荒垣がそう考えていると、医者は「彼と、連絡先は?」と尋ねた。
「えっと……僕、知ってます」
「そう。じゃあ、目を覚ましたら連絡を入れるように言っておくよ。でも、彼の事を知ってる人以外は来させないで。
患者のプライバシーは守られるものだから」
「わかりました」
頷き、念のため医者とも連絡先を交換する。
荒垣は湊と交換すると、「これからは、戦う以外で協力してやる」とぶっきらぼうに言った。
「さて、君達はもう帰りなさい。明日も、学校はあるんだろう?」
「そう、ですね……じゃあ、ありがとうございました」
礼をして、病院を去る。
荒垣と共に、静かな夜の街を寮まで歩いていった。