10月4日。影時間。
今回はチドリの監視もあって、アイギスと伊織は病院に待機することになった。
それを含めても……荒垣と天田がいつまで経っても現れない。
「二人を探してくる。湊達は敵倒しておいて」
ウサギがそう言いながら腕をグッと伸ばすと、湊は「助かる」と頷いた。
「早く終わったら、僕らもすぐ追うから」
「ああ。……ほら、傷薬とか一式」
彼の投げたポーチを受け取り、湊達はシャドウの反応があった方へ走り出す。
ウサギはため息をついてから、心当たりのある場所へ駆け出した。

―丁度二年前の、今日。
タルタロスに行こうとしていた丁度その時に街から聞こえたのは、子供と女性の叫ぶ声だった。
様子を見にいくと、そこには瓦礫に潰された女性と、その女性から出てきたらしきシャドウ。
そして泣き叫ぶ乾君と何とか助けようとする真次郎さんの姿があった。
けれど、真次郎さんのペルソナは暴走し、女性の身体ごとシャドウを蹴散らした。
「……多分、乾君は復讐するつもりだ」
真実は正確に分からずとも、誰が殺したのかは気づいているようだったから。

―俺は、俺自身のペルソナの手で両親のシャドウを殺したけれど。
―自分を恨む事が出来ないほど、約束までの時間が短かっただけ。

（俺は”今の約束”の為に生きる。信じる事は、それだけで充分だ）
手にしたナイフを握り、向かいくるシャドウを蹴散らす。
「真次郎さんも、乾君も、絶対に止める」