出会いと大型シャドウ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何時も通り、少しだけ遅くに学校につく。
別に遅刻というわけじゃない。ただ、部活も入ってないし早く来る用もないだけだ。
(……そういえば、クラス替えが掲示板に貼ってあるんだっけ)
ザワザワとしている群れを少しかき分け、自分の名前を探す。
少し顔を動かせば、それは案外すぐ見つかった。
(2-F……昨日会った奴も同じクラスか)
目を凝らして確認し、すぐその場から離れる。
そして教室に行こうと階段を上がっていると、キョロキョロしている有里を見つけた。
正直関わりたくはないが、周りに誰もいない。どうせ上がったところで気づかれるだろう。
「……どうした?」
声だけかけると、彼はゆっくりと桜木の方を向いて、「職員室を探しているんだけど……」とそこまで言って驚いたように二度見する。
「……なんだよ」
桜木は『黒い』髪を指先でいじりながら、黒で下側だけ縁どられた眼鏡の奥の『金色』の瞳で有里を見る。
制服も昨日とは違いカッチリと着こなしていて、見た目だけでは誰だか分からない筈だ。
しかし有里は目を開いたまま「……ユキ?」と訊ねてきたので、桜木は少し瞬きをしてコクリと頷いた。
「今はウィッグとカラコン付けてるからな。それで、職員室?」
桜木がそう話を戻すと、有里は気を取り戻したように「ああ」と言う。
「職員室は二階にはないぞ。一階の、掲示板のところの廊下を右」
「……さっき行ったけど、実習室があっただけだった」
「そっちは逆だ。……ついてきて」
桜木は有里の手を昨日のように掴んで、階段を下りる。
掲示板の周りにはまだ人がいて、二人はそれを素通りし右に曲がった。
少し歩けば、職員室と書かれたプレートが姿を現し、二人は立ち止まる。
「転入生だから、担任か。鳥海先生だっけ」
「……多分そうだと思う」
有里がそう返事すると、桜木は職員室のドアを数回ノックし「失礼します」と中に入った。
「二年F組の桜木です。鳥海先生に用があってきました」
手を引かれて有里も職員室に入ると、職員の空気がおかしくなったことに気がついた。
何か、息苦しい。その息苦しさは自分に向けられたものでは無いことに気づき、有里は目の前の青年に目を向ける。
彼は平然としていて、スタスタと一人の女性教師の元まで行くと有里の手を離した。
「鳥海先生。転入生が迷っていたんで連れてきました」
鳥海先生、と呼ばれたその教師は他の教師とは違いフッと顔をあげては「あ、そう?ありがとね」と返す。
だがしかし周りの目はキツく、有里は小さく礼するだけで精一杯だった。
「……湊、こうなりたくなかったら、教室で絶対俺に話しかけないようにな」
桜木は有里にだけ聞こえるような小声でそう言い、「では、失礼します」と教師の視線を無視して去っていく。それに鳥海はため息をつき、「相変わらずねえ」と苦笑した。
「有里湊君、だっけ。顔色悪いけど、大丈夫?」
「……これで大丈夫でいられる勇気は、まだないです……」
有里はようやく和らいできた雰囲気に息を吐きだし、この空気の原因を尋ねる。
「んー、まあ彼全然表情変わんないし、普段授業態度悪いのに良い点バカスカ取っちゃうから。妬みとか恐怖とかあるんじゃない?」
鳥海は有里に関する書類をまとめながら、「ま、学校には来るし性格が悪い訳でもないから、私は気にしないけどね」とさっぱり切り捨てる。そして有里の方を向いて、「教室行くわよ」と声をかけた。
廊下を歩き、教室へ向かいながら鳥海は続ける。
「よかったら、彼とも仲良くしてやってね」
その言葉に有里は頷いて、2-Fの教室の扉をカラカラと開いた。
別に遅刻というわけじゃない。ただ、部活も入ってないし早く来る用もないだけだ。
(……そういえば、クラス替えが掲示板に貼ってあるんだっけ)
ザワザワとしている群れを少しかき分け、自分の名前を探す。
少し顔を動かせば、それは案外すぐ見つかった。
(2-F……昨日会った奴も同じクラスか)
目を凝らして確認し、すぐその場から離れる。
そして教室に行こうと階段を上がっていると、キョロキョロしている有里を見つけた。
正直関わりたくはないが、周りに誰もいない。どうせ上がったところで気づかれるだろう。
「……どうした?」
声だけかけると、彼はゆっくりと桜木の方を向いて、「職員室を探しているんだけど……」とそこまで言って驚いたように二度見する。
「……なんだよ」
桜木は『黒い』髪を指先でいじりながら、黒で下側だけ縁どられた眼鏡の奥の『金色』の瞳で有里を見る。
制服も昨日とは違いカッチリと着こなしていて、見た目だけでは誰だか分からない筈だ。
しかし有里は目を開いたまま「……ユキ?」と訊ねてきたので、桜木は少し瞬きをしてコクリと頷いた。
「今はウィッグとカラコン付けてるからな。それで、職員室?」
桜木がそう話を戻すと、有里は気を取り戻したように「ああ」と言う。
「職員室は二階にはないぞ。一階の、掲示板のところの廊下を右」
「……さっき行ったけど、実習室があっただけだった」
「そっちは逆だ。……ついてきて」
桜木は有里の手を昨日のように掴んで、階段を下りる。
掲示板の周りにはまだ人がいて、二人はそれを素通りし右に曲がった。
少し歩けば、職員室と書かれたプレートが姿を現し、二人は立ち止まる。
「転入生だから、担任か。鳥海先生だっけ」
「……多分そうだと思う」
有里がそう返事すると、桜木は職員室のドアを数回ノックし「失礼します」と中に入った。
「二年F組の桜木です。鳥海先生に用があってきました」
手を引かれて有里も職員室に入ると、職員の空気がおかしくなったことに気がついた。
何か、息苦しい。その息苦しさは自分に向けられたものでは無いことに気づき、有里は目の前の青年に目を向ける。
彼は平然としていて、スタスタと一人の女性教師の元まで行くと有里の手を離した。
「鳥海先生。転入生が迷っていたんで連れてきました」
鳥海先生、と呼ばれたその教師は他の教師とは違いフッと顔をあげては「あ、そう?ありがとね」と返す。
だがしかし周りの目はキツく、有里は小さく礼するだけで精一杯だった。
「……湊、こうなりたくなかったら、教室で絶対俺に話しかけないようにな」
桜木は有里にだけ聞こえるような小声でそう言い、「では、失礼します」と教師の視線を無視して去っていく。それに鳥海はため息をつき、「相変わらずねえ」と苦笑した。
「有里湊君、だっけ。顔色悪いけど、大丈夫?」
「……これで大丈夫でいられる勇気は、まだないです……」
有里はようやく和らいできた雰囲気に息を吐きだし、この空気の原因を尋ねる。
「んー、まあ彼全然表情変わんないし、普段授業態度悪いのに良い点バカスカ取っちゃうから。妬みとか恐怖とかあるんじゃない?」
鳥海は有里に関する書類をまとめながら、「ま、学校には来るし性格が悪い訳でもないから、私は気にしないけどね」とさっぱり切り捨てる。そして有里の方を向いて、「教室行くわよ」と声をかけた。
廊下を歩き、教室へ向かいながら鳥海は続ける。
「よかったら、彼とも仲良くしてやってね」
その言葉に有里は頷いて、2-Fの教室の扉をカラカラと開いた。