夏の終わり
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夏休みも開けて、九月。
「乾君に、真次郎さん。俺はウサギ。よろしく」
恒例のように飛びついてきたコロ丸の頭を撫でながら、ゴーグルの彼はそう言った。
「……天田、乾です。よろしくお願いします」
「………荒垣だ」
天田は呆気に取られながら、荒垣は眉間に皺を寄せながらそう言うと、ユキはコロ丸をヒョイと降ろす。
「一応、湊から簡単に話は聞いてるし、そっちも俺について聞いてると思うけど……俺はあくまで助っ人ってことさえ忘れなければ基本害は加えないから」
「ワンッ!」
「……お前には言ってない」
コロ丸の頭をかいぐり、ウサギは「オッケー?」と尋ねる。すると二人は頷いて、荒垣はゆっくりと湊に近づいた。
「……リーダー、ちょっといいか?」
「…何?」
「アイツの本名、お前は知っているか?」
一瞬、湊の目が丸くなる。しかしすぐに元に戻って、「知ってますよ」と返した。
「でも、知ってるのは僕と荒垣さんだけだって事は、理解してもらえると助かります。
昨日も言いましたけど、彼は危ない立ち位置にいるので」
「……そうか」
荒垣はそう言うと目を細めコロ丸にじゃれられているユキを見つめ、「あんな弱そうな奴が、なあ……」と呟く。
天田と荒垣が彼について教えられたのは、『幾月にバレてしまったら確実に実験対象となり得ること』と『本人自体はそれに応じるように強く、とても頼りになること』、そして、『恐らく誰よりもこの戦いの結末を知り、命を犠牲にする覚悟でいること』だった。
「一応、今日はタルタロスに一緒に行けるようなので、その時にでも理解していただければ」
湊がそう言うと、荒垣は雑に「わぁってるよ」と返す。
すると天田が気まずそうに近づいてきた。
「あの……有里さん」
「何?」
「その……ウサギさんって、いつから戦っているんですか?」
そう言われ、湊がどうしたものかとユキを見ると「言ってもいいよ」と返された。
「……じゃあ、君の口からいいなよ。どうせ皆、知りたがってるだろうし」
「そうなの?でも最初会ったときに、”結構前”だって教えたよね?」
「それよりも詳しく知りたいんじゃないかな、多分」
湊が言うと、ユキは目を細めて、ハアと息を吐く。
「……初めてタルタロスに入ったのは、小学一年の頃。事故があって、その塔が出来てすぐだ」
「……なんだと?」
「刈り取る者を倒したのは……確か小4の時だったんじゃないかな。その時はまだバイトも入れてなくて、無駄に時間があったから。……これでいい?」
天田に向けられた声。それに彼はびくりと体を震わせ、「あ、その」と戸惑いがちに声を出す。
「……僕も、そのくらい強くなれますか?」
「…………それは、君の意思によるんじゃないかな」
ユキはゆっくりと天田に近づいて、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
ゴーグルの奥に微かに見える目が、真っ直ぐに天田を射抜く。
「俺は約束の為に戦ってる。約束を果たすために、強くなる必要があるから。
乾君は、何の為に戦う?」
「そ、れは……」
「今は見つからなくても構わない。だけど、目的もなくただがむしゃらに戦っても強くはなれないと思う。
……それだけだよ」
俯いてしまった天田にそれだけ言って、「じゃあ、俺バイトあるから」と立ち上がり寮から出て行った。
「……まあ、焦りすぎても強くなれない、って言ってるのかな、あれは」
湊がボソリと呟くと、「そう、ですよね……」と天田が小さく返す。
「もしそれが復讐の為でも、僕は強くなれるんでしょうか……」
声は、誰にも届かずに消えていった。
「乾君に、真次郎さん。俺はウサギ。よろしく」
恒例のように飛びついてきたコロ丸の頭を撫でながら、ゴーグルの彼はそう言った。
「……天田、乾です。よろしくお願いします」
「………荒垣だ」
天田は呆気に取られながら、荒垣は眉間に皺を寄せながらそう言うと、ユキはコロ丸をヒョイと降ろす。
「一応、湊から簡単に話は聞いてるし、そっちも俺について聞いてると思うけど……俺はあくまで助っ人ってことさえ忘れなければ基本害は加えないから」
「ワンッ!」
「……お前には言ってない」
コロ丸の頭をかいぐり、ウサギは「オッケー?」と尋ねる。すると二人は頷いて、荒垣はゆっくりと湊に近づいた。
「……リーダー、ちょっといいか?」
「…何?」
「アイツの本名、お前は知っているか?」
一瞬、湊の目が丸くなる。しかしすぐに元に戻って、「知ってますよ」と返した。
「でも、知ってるのは僕と荒垣さんだけだって事は、理解してもらえると助かります。
昨日も言いましたけど、彼は危ない立ち位置にいるので」
「……そうか」
荒垣はそう言うと目を細めコロ丸にじゃれられているユキを見つめ、「あんな弱そうな奴が、なあ……」と呟く。
天田と荒垣が彼について教えられたのは、『幾月にバレてしまったら確実に実験対象となり得ること』と『本人自体はそれに応じるように強く、とても頼りになること』、そして、『恐らく誰よりもこの戦いの結末を知り、命を犠牲にする覚悟でいること』だった。
「一応、今日はタルタロスに一緒に行けるようなので、その時にでも理解していただければ」
湊がそう言うと、荒垣は雑に「わぁってるよ」と返す。
すると天田が気まずそうに近づいてきた。
「あの……有里さん」
「何?」
「その……ウサギさんって、いつから戦っているんですか?」
そう言われ、湊がどうしたものかとユキを見ると「言ってもいいよ」と返された。
「……じゃあ、君の口からいいなよ。どうせ皆、知りたがってるだろうし」
「そうなの?でも最初会ったときに、”結構前”だって教えたよね?」
「それよりも詳しく知りたいんじゃないかな、多分」
湊が言うと、ユキは目を細めて、ハアと息を吐く。
「……初めてタルタロスに入ったのは、小学一年の頃。事故があって、その塔が出来てすぐだ」
「……なんだと?」
「刈り取る者を倒したのは……確か小4の時だったんじゃないかな。その時はまだバイトも入れてなくて、無駄に時間があったから。……これでいい?」
天田に向けられた声。それに彼はびくりと体を震わせ、「あ、その」と戸惑いがちに声を出す。
「……僕も、そのくらい強くなれますか?」
「…………それは、君の意思によるんじゃないかな」
ユキはゆっくりと天田に近づいて、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
ゴーグルの奥に微かに見える目が、真っ直ぐに天田を射抜く。
「俺は約束の為に戦ってる。約束を果たすために、強くなる必要があるから。
乾君は、何の為に戦う?」
「そ、れは……」
「今は見つからなくても構わない。だけど、目的もなくただがむしゃらに戦っても強くはなれないと思う。
……それだけだよ」
俯いてしまった天田にそれだけ言って、「じゃあ、俺バイトあるから」と立ち上がり寮から出て行った。
「……まあ、焦りすぎても強くなれない、って言ってるのかな、あれは」
湊がボソリと呟くと、「そう、ですよね……」と天田が小さく返す。
「もしそれが復讐の為でも、僕は強くなれるんでしょうか……」
声は、誰にも届かずに消えていった。