「……何故、ウサギさんは目や自身の事を隠すのでしょうか？」
アイギスの問いに、湊は少し悲しげに笑って返す。
「……彼の事について知りたいって気持ちは分かるよ。
　でもね、それを知ってしまった時に、僕らはそれを幾月さんからひた隠ししなきゃいけない」
「それは……彼が、異形のペルソナ使いだから、ですか？」
「そう。見つかったら、絶対に研究対象になる。……それは彼にとって、”約束を果たせなくなる確率”が増えるだけだから」
彼は、何てことないように『選べ』と言ってきたけれど。
彼にとっての”約束”は、何よりも優先すべきもの。
「最初から最低限の事しか知らなければ、隠すべき事も少なくて済むだろ？」
「……そう、ですね。私も、今のウサギさんの情報量だけなら隠す事が可能であります」
アイギスは頷き、「ウサギさんの正体は無闇に聞かない。理解しました」とまた敬礼した。
コロ丸も同調するように「ワンッ」と吠える。
「そうして。……話せるようになったら、きっと彼から話してくれるからさ」
湊はそう言って、「じゃあ僕も、バイトに行ってくる」と言って出て行った。



「……私、知っています」
「ワフ？」
「…………彼が、幾月さんがずっと探し続けていた『異形の子』であること」
「……」
「でも、私は隠したい。……何故だか分からないけど、そうしたいんです」
「…クゥーン……」
「……そうですね。それが、”心”というものなのかもしれません」
「ワンワンッ」
「はい。では、ボール遊びというものをしましょう。ボールを投げたら、咥えて戻る。いいですか？」
「ワン！」
「よし。とってこい、であります！」