幻想に負けない
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「ねえ、明彦さん。なぜアンタはあの日、あんなに意気込んでいたの?」
話題提供を求められたウサギがポソリと訊ねてきた言葉に、真田は怪訝そうに眉を寄せる。
「あ?何がだ?」
夜の神社。ベンチに腰掛けた真田とウサギは、特に何をするでもなく月夜を見上げていた。
今日はタルタロスに行かないと有里から聞き、走っていたところでウサギに会ったのだ。
「何故ここに」という質問に淡々と「ただ散歩していただけ」と答えた彼はいつものゴーグルをつけていて、相変わらずその顔を拝むことは出来ない。
その彼からの冒頭の質問の意図を掴めずにいると、付け足すように「この前の、風花さんの時の」と口を開く。
「ああ……あの時のか」
「うん。いつもと様子が変だったから、気になって。
……でも、話したくないのなら別にいい」
さらさら、さらさら。
風に乗せられた髪は彼の顔に影を作り、元に戻ってを繰り返す。
「……妹が、いたんだ」
思わず口からこぼれ落ちた言葉はしかし、勢いをつけ次々と流れ落ちた。
「俺は、孤児院の出でな。妹とシンジ……友人と暮らしてたんだ。
……でもある日、孤児院で火事が起こって、妹を失った。
助けたかったのに、俺に力がないせいで、唯一の家族を守ることさえできなかったんだ」
グッと拳を握り締める。
ウサギは明彦の言葉を黙って聞いていたが、彼の言葉が終わると「成程」と頷いた。
「だから力に固執し、救えるものは救いたい……そういうこと?」
「ああ。……でも、少し焦り過ぎたかもしれん。悪かった」
「いいよ。そうなってしまうのは仕方ない事だから」
仕方ない。そう言って彼はまた空を見る。
そしてしばらく経って「家族、か」と小さな声が風に乗って鼓膜に響いた。
「……そういえば、お前に家族はいるのか?」
「いたけど、死んだ。随分前の、影時間に」
なんてことないような返しに、息を呑む音がする。
「……悪い」
「別に、それを引きずっているわけじゃない。気にする必要はない」
淡々と呟いた言葉に、明彦は下を向く。
失言ではあったかもしれない。
でもそれ以上に、
重い空気もなく、ただ夜が更けていった―――
話題提供を求められたウサギがポソリと訊ねてきた言葉に、真田は怪訝そうに眉を寄せる。
「あ?何がだ?」
夜の神社。ベンチに腰掛けた真田とウサギは、特に何をするでもなく月夜を見上げていた。
今日はタルタロスに行かないと有里から聞き、走っていたところでウサギに会ったのだ。
「何故ここに」という質問に淡々と「ただ散歩していただけ」と答えた彼はいつものゴーグルをつけていて、相変わらずその顔を拝むことは出来ない。
その彼からの冒頭の質問の意図を掴めずにいると、付け足すように「この前の、風花さんの時の」と口を開く。
「ああ……あの時のか」
「うん。いつもと様子が変だったから、気になって。
……でも、話したくないのなら別にいい」
さらさら、さらさら。
風に乗せられた髪は彼の顔に影を作り、元に戻ってを繰り返す。
「……妹が、いたんだ」
思わず口からこぼれ落ちた言葉はしかし、勢いをつけ次々と流れ落ちた。
「俺は、孤児院の出でな。妹とシンジ……友人と暮らしてたんだ。
……でもある日、孤児院で火事が起こって、妹を失った。
助けたかったのに、俺に力がないせいで、唯一の家族を守ることさえできなかったんだ」
グッと拳を握り締める。
ウサギは明彦の言葉を黙って聞いていたが、彼の言葉が終わると「成程」と頷いた。
「だから力に固執し、救えるものは救いたい……そういうこと?」
「ああ。……でも、少し焦り過ぎたかもしれん。悪かった」
「いいよ。そうなってしまうのは仕方ない事だから」
仕方ない。そう言って彼はまた空を見る。
そしてしばらく経って「家族、か」と小さな声が風に乗って鼓膜に響いた。
「……そういえば、お前に家族はいるのか?」
「いたけど、死んだ。随分前の、影時間に」
なんてことないような返しに、息を呑む音がする。
「……悪い」
「別に、それを引きずっているわけじゃない。気にする必要はない」
淡々と呟いた言葉に、明彦は下を向く。
失言ではあったかもしれない。
でもそれ以上に、
重い空気もなく、ただ夜が更けていった―――