失踪と噂
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ポートアイランド、裏路地。
相変わらず不気味な棺を見、異色となった空を見上げていると、何処からか足音が聞こえてきて顔を下ろす。
「こんばんは、真次郎さん」
白い、驚く程白い髪に、月に照らされ輝く紅い血のような瞳。
黒いフードマントを被ってゴーグルを首に提げたソイツは、飄々とそこに立っていた。
「てめえ、何処でオレの名前を……」
「何処で、と言われても、学校でとしか答えようがないんだけど」
ガンを飛ばすも怯える様子もなく、「風花さんの噂、教えてくれたお礼にと思って」とポケットから何か取り出す。
それは、シンプルな包装紙に包まれた複数の小さな直方体で。訝しく思いながら受け取ると、包装紙からは甘い匂いが漂ってきた。
「……なんだ、これは?」
「キャラメル。ミルクの」
「……作ったのか?」
「うん。昔、教えてもらったから」
やっぱり、お金の方が良かったかな。
ソイツはそう言って首を傾げ、そして前会った時のように唇に指を当てて目を細める。
コイツに会ったのは、ちょうど一昨日。今のような影時間だった。
「山岸風花について、噂で知っていることはない?」
唐突に訊ねてきたその青年に、オレは「ああ?」と睨みつけた。
しかしこれに怖気づく事もなく「知らない?」と目を細め唇に触れながら再度聞いてくる。
「……知ってることにゃ知ってるが……聞いてどうする?」
「聞いた後考える」
即答。さっぱりとした返事にオレは思わず苦笑し、ヤツはただ目を丸くさせてこちらを見ていた。
「……まあ、ありがたく受け取っておく」
コートのポケットに詰め込んで言うと、「そう」と淡白な答えが返ってきた。
「学校でオレのことを聞いたってことは……おめえ、月光館の生徒か?」
「うん。一応初等部からいるけど」
「の割には、見たことねえ髪だな……」
「この髪やこの目で言って、何人の子供が俺とまともに会話出来ると思う?」
そう返されて妙に納得してしまう。確かに今でも、悪目立ちしそうな色合いは彼の異質さを際立たせているし。
「そうだな。……そういや、おめえだけがオレの名前を知ってんのはフェアじゃねえだろ。てめえのも教えろ」
「……」
丸い目が、じいっと俺を映す。品定めするように見たあとに、「他の人に、教えないなら」と小さく口を動かした。
「別に、教えるヤツぁいねえよ」
「なら、いいけど」
ソイツはハアとため息を吐いて、そしてまたこちらを見た。
「……ユキ。桜木、ユキ」
ぶわっと風が吹いて、彼の髪がフワフワと舞う。
ユキ、と確認するように呟くとコクリと頷いて、「じゃあね、真次郎さん」と何事もなかったように去っていった。
相変わらず不気味な棺を見、異色となった空を見上げていると、何処からか足音が聞こえてきて顔を下ろす。
「こんばんは、真次郎さん」
白い、驚く程白い髪に、月に照らされ輝く紅い血のような瞳。
黒いフードマントを被ってゴーグルを首に提げたソイツは、飄々とそこに立っていた。
「てめえ、何処でオレの名前を……」
「何処で、と言われても、学校でとしか答えようがないんだけど」
ガンを飛ばすも怯える様子もなく、「風花さんの噂、教えてくれたお礼にと思って」とポケットから何か取り出す。
それは、シンプルな包装紙に包まれた複数の小さな直方体で。訝しく思いながら受け取ると、包装紙からは甘い匂いが漂ってきた。
「……なんだ、これは?」
「キャラメル。ミルクの」
「……作ったのか?」
「うん。昔、教えてもらったから」
やっぱり、お金の方が良かったかな。
ソイツはそう言って首を傾げ、そして前会った時のように唇に指を当てて目を細める。
コイツに会ったのは、ちょうど一昨日。今のような影時間だった。
「山岸風花について、噂で知っていることはない?」
唐突に訊ねてきたその青年に、オレは「ああ?」と睨みつけた。
しかしこれに怖気づく事もなく「知らない?」と目を細め唇に触れながら再度聞いてくる。
「……知ってることにゃ知ってるが……聞いてどうする?」
「聞いた後考える」
即答。さっぱりとした返事にオレは思わず苦笑し、ヤツはただ目を丸くさせてこちらを見ていた。
「……まあ、ありがたく受け取っておく」
コートのポケットに詰め込んで言うと、「そう」と淡白な答えが返ってきた。
「学校でオレのことを聞いたってことは……おめえ、月光館の生徒か?」
「うん。一応初等部からいるけど」
「の割には、見たことねえ髪だな……」
「この髪やこの目で言って、何人の子供が俺とまともに会話出来ると思う?」
そう返されて妙に納得してしまう。確かに今でも、悪目立ちしそうな色合いは彼の異質さを際立たせているし。
「そうだな。……そういや、おめえだけがオレの名前を知ってんのはフェアじゃねえだろ。てめえのも教えろ」
「……」
丸い目が、じいっと俺を映す。品定めするように見たあとに、「他の人に、教えないなら」と小さく口を動かした。
「別に、教えるヤツぁいねえよ」
「なら、いいけど」
ソイツはハアとため息を吐いて、そしてまたこちらを見た。
「……ユキ。桜木、ユキ」
ぶわっと風が吹いて、彼の髪がフワフワと舞う。
ユキ、と確認するように呟くとコクリと頷いて、「じゃあね、真次郎さん」と何事もなかったように去っていった。