失踪と噂
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順平が「変な噂」を入手したのは、それから暫く後のことだった。
どうやら、行方不明になっていた女子生徒が今朝学校前で発見されたらしい。
それが、『怨霊の仕業』やらと騒がれているのだ。
「変な噂ねえ……一応外で調べてみる、湊たちは学校内を頼んだ」
タルタロスでの戦闘終了後、ユキはナイフを脚のベルトに戻しながらそう言い、そしてその数日後には本当にその女子生徒に関する事や噂の根源など全てを調べ報告してきた。
「その女子生徒は風花さんを苛めていたグループの一人。風花さんは現在行方不明なんだけど、担任がそれを隠しているみたいだね。それで生徒の間ではその人が「死んだ」ことになってて「怨霊」扱い。あああと、女子生徒の他にもグループ内で何人か、同じようなことになっていることもその噂の一因らしい。現在その被害に遭っていないのは一人だけ」
何処でそんなに、と尋ねると、「駅の裏路地とか、バイト先での学生同士の会話とかでね」と彼はざっぱり言う。
噂だけでいいならと彼が集めてきた情報に流石の桐条先輩も舌を巻き、何も言わなくなった僕たちにユキはただ首を傾げていた。
「で、此処からが本題なんだけど」
ツイ。彼は指をタルタロスの上階目指して伸ばし、口を開く。
「最近、ずっと上に誰かいる気配がする。一般人ではなさそうだけど、けど惑ってる気配」
「誰か……?」
「そう。ちゃんと入ってきたというより、そこにいきなり来てしまったみたいな……」
彼がそこまで言ったところで、順平以外がハッと顔を見合わせた。
いや、まさか、もしかして。
「……あのー、ワタクシにも分かるよう説明してくださりますか……?」
順平がキョロキョロと僕たちを見回し、気まずそうに訊く。
するとウサギはゴーグルの紐を少し掻いて、小さく息を吐いた。
「お前らが言っていた、『風花が行方不明になる前日、体育館倉庫に入れられていた』という話から、風花さんは影時間に巻き込まれ帰れていない可能性がある。もしこの気配が風花さんなら、彼女はタルタロスの中ってわけ」
「マジで!?え、じゃあ、早く助けに行ったほうが……」
「それは少し難しい」
順平の提案に、彼は首を振る。上に向けていた指を二本立てて、「二つ、問題点」と順平に突き出す。
「一つ。彼女だとしてもそうでないにしても、正確にどの階にいるか分からない。これに関しては方法が一つあるけど、少し時間が必要だ。
二つ。彼女を救い出すとして、そのまだ被害に遭っていない人を保護した状態でないと危険だ。もしかしたら前例と同じく、迷い込んで来るかもしれない。そうなったとき、二人も無力な人間をシャドウから守るのはいささか辛い」
「えっと……つまり、準備万端にしてから助けるってことか?」
「そう。初めての事態だから、少し慎重にいきたい。……だから、別に見殺しにするわけじゃない」
ユキは真田先輩の方を見、小さく息を吐く。「見殺しにするつもりだったら、真偽も定かじゃない噂なんて集めないから」と付け足すと、先輩はようやく落ち着いたようだった。
「……じゃあ、被害に遭ってない人の保護と、準備する期間を入れて……」
「明後日。延び過ぎると風花さんの身が危ない。」
「分かった。その女子生徒の保護は私に任せておいてくれ。他の作戦立てはお前に委任する」
桐条先輩がそう言うと、ユキは少し眉をしかめ「……作戦とは言えないだろうけど、善処はする」と呟いた。
「湊たちは夜、影時間前に学校に侵入する手段考えといてね。……じゃ、俺バイト行くから」
深くフードを被り、スタスタと去っていく。それを真田先輩が見て、呆れた声を出した。
「アイツ、この前もバイトあったよな?一体いつ寝ているんだ?」
「ガッコ行ってるのかもアヤシーっすけどね……今度聞いてみます?」
「いや、やめておけ。どうせはぐらかされるのがオチだ」
順平に桐条先輩が返し、「私たちも戻るぞ」と踵を返す。
僕たちもそれに続いて、巨大で異形の塔から姿を消した。
どうやら、行方不明になっていた女子生徒が今朝学校前で発見されたらしい。
それが、『怨霊の仕業』やらと騒がれているのだ。
「変な噂ねえ……一応外で調べてみる、湊たちは学校内を頼んだ」
タルタロスでの戦闘終了後、ユキはナイフを脚のベルトに戻しながらそう言い、そしてその数日後には本当にその女子生徒に関する事や噂の根源など全てを調べ報告してきた。
「その女子生徒は風花さんを苛めていたグループの一人。風花さんは現在行方不明なんだけど、担任がそれを隠しているみたいだね。それで生徒の間ではその人が「死んだ」ことになってて「怨霊」扱い。あああと、女子生徒の他にもグループ内で何人か、同じようなことになっていることもその噂の一因らしい。現在その被害に遭っていないのは一人だけ」
何処でそんなに、と尋ねると、「駅の裏路地とか、バイト先での学生同士の会話とかでね」と彼はざっぱり言う。
噂だけでいいならと彼が集めてきた情報に流石の桐条先輩も舌を巻き、何も言わなくなった僕たちにユキはただ首を傾げていた。
「で、此処からが本題なんだけど」
ツイ。彼は指をタルタロスの上階目指して伸ばし、口を開く。
「最近、ずっと上に誰かいる気配がする。一般人ではなさそうだけど、けど惑ってる気配」
「誰か……?」
「そう。ちゃんと入ってきたというより、そこにいきなり来てしまったみたいな……」
彼がそこまで言ったところで、順平以外がハッと顔を見合わせた。
いや、まさか、もしかして。
「……あのー、ワタクシにも分かるよう説明してくださりますか……?」
順平がキョロキョロと僕たちを見回し、気まずそうに訊く。
するとウサギはゴーグルの紐を少し掻いて、小さく息を吐いた。
「お前らが言っていた、『風花が行方不明になる前日、体育館倉庫に入れられていた』という話から、風花さんは影時間に巻き込まれ帰れていない可能性がある。もしこの気配が風花さんなら、彼女はタルタロスの中ってわけ」
「マジで!?え、じゃあ、早く助けに行ったほうが……」
「それは少し難しい」
順平の提案に、彼は首を振る。上に向けていた指を二本立てて、「二つ、問題点」と順平に突き出す。
「一つ。彼女だとしてもそうでないにしても、正確にどの階にいるか分からない。これに関しては方法が一つあるけど、少し時間が必要だ。
二つ。彼女を救い出すとして、そのまだ被害に遭っていない人を保護した状態でないと危険だ。もしかしたら前例と同じく、迷い込んで来るかもしれない。そうなったとき、二人も無力な人間をシャドウから守るのはいささか辛い」
「えっと……つまり、準備万端にしてから助けるってことか?」
「そう。初めての事態だから、少し慎重にいきたい。……だから、別に見殺しにするわけじゃない」
ユキは真田先輩の方を見、小さく息を吐く。「見殺しにするつもりだったら、真偽も定かじゃない噂なんて集めないから」と付け足すと、先輩はようやく落ち着いたようだった。
「……じゃあ、被害に遭ってない人の保護と、準備する期間を入れて……」
「明後日。延び過ぎると風花さんの身が危ない。」
「分かった。その女子生徒の保護は私に任せておいてくれ。他の作戦立てはお前に委任する」
桐条先輩がそう言うと、ユキは少し眉をしかめ「……作戦とは言えないだろうけど、善処はする」と呟いた。
「湊たちは夜、影時間前に学校に侵入する手段考えといてね。……じゃ、俺バイト行くから」
深くフードを被り、スタスタと去っていく。それを真田先輩が見て、呆れた声を出した。
「アイツ、この前もバイトあったよな?一体いつ寝ているんだ?」
「ガッコ行ってるのかもアヤシーっすけどね……今度聞いてみます?」
「いや、やめておけ。どうせはぐらかされるのがオチだ」
順平に桐条先輩が返し、「私たちも戻るぞ」と踵を返す。
僕たちもそれに続いて、巨大で異形の塔から姿を消した。