テストと病院
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「……あの、美鶴さん。いい加減顔あげてほしいんだけど」
桜木は寮の扉を開けてすぐ起きたこの状況に、ハアとため息を吐く。
彼は昼の時とは違う、黒い半袖のカッターシャツに迷彩柄のズボンを履いていて、ガシガシとゴーグルの紐部分を掻いては頭を下げたまま動かない桐条に声をかけた。だが彼女が動く気配はなく、仕方ないと近くに突っ立っている伊織に顔を向ける。
「えっと、順平君。どうしてこうなってるのか説明してくれるか?」
「俺!?えーっと……ゆかりっち、頼んだ!」
「はあ!?なんで私が!」
「……この前のシャドウ討伐を援助してくれた感謝と、今まで疑ってた事に対する謝罪だってさ」
伊織達に聞いていては埒があかない事を察したのか、寝起き眼の有里が口を開いた。
それに桜木は眉を少し寄せて、「だったら尚更、顔をあげてほしい」と呟く。
「……俺は助けたつもりはない。自ら飛び込んでしまった事態に対処しただけだ」
「だが……」
「あと、この前の助っ人断ったのは虫の居所が悪かっただけ。ただの八つ当たりだったから、謝るのはこっちの方」
淡々、淡々。
その声に感情が乗ることはなく、「ごめん」と呟かれた声も、何を考えているか理解できなかった。
「……あのー、ちょっと聞いていいっすか?」
そろりと手を挙げたのは、伊織だった。「いいよ。何?」と桜木が促すと、「噂で聞いたことあるんすけど……」とボソボソ付け足して言う。
「駅前でよく騒がれてる『白い髪の青年と目を合わせると、殺される』って噂……もしかしてウサギさんのことっすか?」
その瞬間。
空気が凍った。気がした。
有里は身震いして、その空気の元を探す。
それは、桜木から発せられていた。冷たい空気を纏った彼は、ゆっくりと口を開く。
「ああ、それは……シャドウと戦って、自分の血で染まってたのを見られたんだ。別にあの時はゴーグルしてたし、目を合わせたわけじゃなかったんだけど、翌日そいつシャドウ化しちゃったみたいで」
この答えで、伊織も何か間違った事に気づいたんだろう。「あ、その……」と何かフォローしようとするも、中々言葉に出来ないようだ。
「俺が殺したのは、シャドウだけだよ」
彼は続ける。まるでその後、目が合った人物のシャドウを『殺した』かのように。
「ただ、俺の髪とかが異形だったから……シャドウを倒している姿も、俺が人間を殺したように見えたのかもね」
『異形』。そう自身を語る彼の声はやはり変わることなく、考えこむように俯いたその顔は周囲が息を飲んだことにも気づけないようで。冷たい空気が頬を撫でては、ぞわりと悪寒を漂わせた。
「それに……噂は尾ひれがドンドンついていく。突拍子もないものは多かったと思うけど、人殺しか……」
ねえ。不意にこちら側を向いた言葉に、無意識に身構える。
「本当に人を殺した事があるって言ったら、アンタらは笑える?」
桜木はそう言い、「ま、冗談だけどね」と呟いて頭を掻いた。
桜木は寮の扉を開けてすぐ起きたこの状況に、ハアとため息を吐く。
彼は昼の時とは違う、黒い半袖のカッターシャツに迷彩柄のズボンを履いていて、ガシガシとゴーグルの紐部分を掻いては頭を下げたまま動かない桐条に声をかけた。だが彼女が動く気配はなく、仕方ないと近くに突っ立っている伊織に顔を向ける。
「えっと、順平君。どうしてこうなってるのか説明してくれるか?」
「俺!?えーっと……ゆかりっち、頼んだ!」
「はあ!?なんで私が!」
「……この前のシャドウ討伐を援助してくれた感謝と、今まで疑ってた事に対する謝罪だってさ」
伊織達に聞いていては埒があかない事を察したのか、寝起き眼の有里が口を開いた。
それに桜木は眉を少し寄せて、「だったら尚更、顔をあげてほしい」と呟く。
「……俺は助けたつもりはない。自ら飛び込んでしまった事態に対処しただけだ」
「だが……」
「あと、この前の助っ人断ったのは虫の居所が悪かっただけ。ただの八つ当たりだったから、謝るのはこっちの方」
淡々、淡々。
その声に感情が乗ることはなく、「ごめん」と呟かれた声も、何を考えているか理解できなかった。
「……あのー、ちょっと聞いていいっすか?」
そろりと手を挙げたのは、伊織だった。「いいよ。何?」と桜木が促すと、「噂で聞いたことあるんすけど……」とボソボソ付け足して言う。
「駅前でよく騒がれてる『白い髪の青年と目を合わせると、殺される』って噂……もしかしてウサギさんのことっすか?」
その瞬間。
空気が凍った。気がした。
有里は身震いして、その空気の元を探す。
それは、桜木から発せられていた。冷たい空気を纏った彼は、ゆっくりと口を開く。
「ああ、それは……シャドウと戦って、自分の血で染まってたのを見られたんだ。別にあの時はゴーグルしてたし、目を合わせたわけじゃなかったんだけど、翌日そいつシャドウ化しちゃったみたいで」
この答えで、伊織も何か間違った事に気づいたんだろう。「あ、その……」と何かフォローしようとするも、中々言葉に出来ないようだ。
「俺が殺したのは、シャドウだけだよ」
彼は続ける。まるでその後、目が合った人物のシャドウを『殺した』かのように。
「ただ、俺の髪とかが異形だったから……シャドウを倒している姿も、俺が人間を殺したように見えたのかもね」
『異形』。そう自身を語る彼の声はやはり変わることなく、考えこむように俯いたその顔は周囲が息を飲んだことにも気づけないようで。冷たい空気が頬を撫でては、ぞわりと悪寒を漂わせた。
「それに……噂は尾ひれがドンドンついていく。突拍子もないものは多かったと思うけど、人殺しか……」
ねえ。不意にこちら側を向いた言葉に、無意識に身構える。
「本当に人を殺した事があるって言ったら、アンタらは笑える?」
桜木はそう言い、「ま、冗談だけどね」と呟いて頭を掻いた。