二度目の満月
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翌日の昼。
「で、湊は何が訊きたい?」
相変わらず殺風景な桜木の家のリビング。此処に来るのは二度目だと思いながら出された麦茶に口を付けると、彼は向かいの椅子に座りながらそう訊ねてきた。
「俺としても君達に訊きたい事はあるけど、それは後からでいい」
「じゃあ、訊くけど。……ウサギ、だよね?」
「うん。学校で下手に話しかけられたくないから、出来たらこれからもそう呼んでほしい」
彼はコクリと頷き、「時計兎だからウサギ。覚えやすいでしょ」と呟く。
「あと、イゴールが僕以外にも客がいるって……」
「ああ、それも多分俺で合ってるよ。あのお爺さんとはかれこれ長い付き合いだし」
桜木は自身の白い髪を少し指でつまんでから、「他にはある?」と首を傾げた。
「……今のところは。ただ、桐条先輩がウサギを助っ人として加えたいって。あと謝罪とか、お礼が言いたいとも言ってた」
今まで、その機会が一切なかったから。
一度依頼を断ってから、タルタロスで遭遇してもウサギは有里達を一瞥してすぐに地下に向かっていたし、日中は会えるわけもない。
「見つけ次第学生寮に呼んでくれないか、って」
「……幾月さんがいない日なら、構わない。俺、あの人苦手だから」
桜木は少しだけ目を細め、そう言って麦茶を飲み干した。
「そういえば、理事長に気をつけろって……」
「幾月さんは、なんか嫌な雰囲気がする。笑い方も胡散臭い」
酷い云われようである。ただのダジャレ好きだと思うけど、と有里は苦笑し「そっちの訊きたいことって?」と口を開いた。
「ああ、この前の戦いの時、ちょっと気になってたんだけど」
彼はコップを置き、フウと息を吐いて首を傾げる。
「ちゃんと傷薬とか、持っていってる?」
「……傷薬?」
「うん。あとパトラジェムとか、地返しの玉とか、ディスポイズンとか。……もしかして、武器防具揃えるせいでお金ない?」
桜木の言葉に、有里は目を丸くする。「回復薬とか、ディア代わりになったりして便利だよ」と付け足すと、頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
盲点だった。スキルで回復するということが当たり前になりすぎていて、消耗品を使うという案がはなからなかったのだ。
「……やっぱりか。まあ、宝箱から入手できるっちゃできるんだけど、それだけじゃ君達の場合ちょっとね」
彼はその様子に立ち上がり、写真の置かれた棚の二段目をゴソゴソと漁る。そして何か出したかと思うと、テーブルにコトと置いた。
湊がそれに反応して、ゆっくりと顔を上げる。其処には白くシンプルな箱が鎮座していて、中を開けると沢山の袋が入っていた。それらには綺麗な字で『傷薬、100』『メディカルパウダー、100』などと書かれており、整然と並べられている。
「『青ひげファーマシー』のところのおじさんが、こういうの沢山売ってくれるんだよ。もしよかったら、こういうのは俺が揃えとこうか?」
「……いいのか?」
「バイトしてるし、君たちが行っている場所より難易度高いところ行ってるせいで一人には多すぎるくらいあるんだよ。全部が全部湊任せっていうのもどうかと思うし」
助っ人するなら、そのくらいの保険はないとね。彼はそう言って湊に箱を押し付け、「今日はそっちに幾月さんはいる?」と尋ねた。
「多分いないと思う」と湊が返すと、「じゃあ、美鶴さんに夕方行きますって言っておいて。夜にはバイトあるから」と猫のように背をそらし伸びをしながら息を吐く。すると彼のTシャツもそれにつられて腹の辺りがチラリと白い肌を覗かせて湊は思わず目をそらした。
ユキは腰が細い。筋肉はついているらしく腕や脚もほどよく引き締まって長いのだが、腰は女子とさほど変わらないのではと思うほど細いのである。そして極めつけはきめ細やかで白い滑らかな肌。これに何も感じるなという方が無茶な話である。
「……わかった」
絞り上げたような声を出すと、ユキは首を傾げ、しかしそれ以上言及もせず「よろしく」と言って廊下に足を向ける。
「俺、これから映画館のバイトだから。湊はどうする?」
バイト、一日に何個入れてるんだ。
そうツッコミを入れたいのを抑えて、「僕は寮に戻るよ。疲れたし寝てる」と返す。すると彼は目を瞬かせ「夕方には起きてよ」と言って廊下に消えた。
「で、湊は何が訊きたい?」
相変わらず殺風景な桜木の家のリビング。此処に来るのは二度目だと思いながら出された麦茶に口を付けると、彼は向かいの椅子に座りながらそう訊ねてきた。
「俺としても君達に訊きたい事はあるけど、それは後からでいい」
「じゃあ、訊くけど。……ウサギ、だよね?」
「うん。学校で下手に話しかけられたくないから、出来たらこれからもそう呼んでほしい」
彼はコクリと頷き、「時計兎だからウサギ。覚えやすいでしょ」と呟く。
「あと、イゴールが僕以外にも客がいるって……」
「ああ、それも多分俺で合ってるよ。あのお爺さんとはかれこれ長い付き合いだし」
桜木は自身の白い髪を少し指でつまんでから、「他にはある?」と首を傾げた。
「……今のところは。ただ、桐条先輩がウサギを助っ人として加えたいって。あと謝罪とか、お礼が言いたいとも言ってた」
今まで、その機会が一切なかったから。
一度依頼を断ってから、タルタロスで遭遇してもウサギは有里達を一瞥してすぐに地下に向かっていたし、日中は会えるわけもない。
「見つけ次第学生寮に呼んでくれないか、って」
「……幾月さんがいない日なら、構わない。俺、あの人苦手だから」
桜木は少しだけ目を細め、そう言って麦茶を飲み干した。
「そういえば、理事長に気をつけろって……」
「幾月さんは、なんか嫌な雰囲気がする。笑い方も胡散臭い」
酷い云われようである。ただのダジャレ好きだと思うけど、と有里は苦笑し「そっちの訊きたいことって?」と口を開いた。
「ああ、この前の戦いの時、ちょっと気になってたんだけど」
彼はコップを置き、フウと息を吐いて首を傾げる。
「ちゃんと傷薬とか、持っていってる?」
「……傷薬?」
「うん。あとパトラジェムとか、地返しの玉とか、ディスポイズンとか。……もしかして、武器防具揃えるせいでお金ない?」
桜木の言葉に、有里は目を丸くする。「回復薬とか、ディア代わりになったりして便利だよ」と付け足すと、頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
盲点だった。スキルで回復するということが当たり前になりすぎていて、消耗品を使うという案がはなからなかったのだ。
「……やっぱりか。まあ、宝箱から入手できるっちゃできるんだけど、それだけじゃ君達の場合ちょっとね」
彼はその様子に立ち上がり、写真の置かれた棚の二段目をゴソゴソと漁る。そして何か出したかと思うと、テーブルにコトと置いた。
湊がそれに反応して、ゆっくりと顔を上げる。其処には白くシンプルな箱が鎮座していて、中を開けると沢山の袋が入っていた。それらには綺麗な字で『傷薬、100』『メディカルパウダー、100』などと書かれており、整然と並べられている。
「『青ひげファーマシー』のところのおじさんが、こういうの沢山売ってくれるんだよ。もしよかったら、こういうのは俺が揃えとこうか?」
「……いいのか?」
「バイトしてるし、君たちが行っている場所より難易度高いところ行ってるせいで一人には多すぎるくらいあるんだよ。全部が全部湊任せっていうのもどうかと思うし」
助っ人するなら、そのくらいの保険はないとね。彼はそう言って湊に箱を押し付け、「今日はそっちに幾月さんはいる?」と尋ねた。
「多分いないと思う」と湊が返すと、「じゃあ、美鶴さんに夕方行きますって言っておいて。夜にはバイトあるから」と猫のように背をそらし伸びをしながら息を吐く。すると彼のTシャツもそれにつられて腹の辺りがチラリと白い肌を覗かせて湊は思わず目をそらした。
ユキは腰が細い。筋肉はついているらしく腕や脚もほどよく引き締まって長いのだが、腰は女子とさほど変わらないのではと思うほど細いのである。そして極めつけはきめ細やかで白い滑らかな肌。これに何も感じるなという方が無茶な話である。
「……わかった」
絞り上げたような声を出すと、ユキは首を傾げ、しかしそれ以上言及もせず「よろしく」と言って廊下に足を向ける。
「俺、これから映画館のバイトだから。湊はどうする?」
バイト、一日に何個入れてるんだ。
そうツッコミを入れたいのを抑えて、「僕は寮に戻るよ。疲れたし寝てる」と返す。すると彼は目を瞬かせ「夕方には起きてよ」と言って廊下に消えた。