二度目の満月
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白い髪の青年が去って暫くして、三人がエントランスに戻ってきた。
伊織は「まだ行けるのによー」と不貞腐れていたが、その脚はガクガクと震えていて、相当疲れたのだということが伺える。
「どうだった?タルタロスは」
桐条がそう尋ねると、有里は暫くした後「疲れました」と正直にため息をついた。
「そうか。……ところでお前たち、白い髪の青年に会わなかったか?」
「「?」」
「……見てません、けど」
岳羽と伊織は首を傾げ、有里は少し目を開いて「どうしてですか」と聞く。
「いや……先ほど此処で会ってな、何処かへ消えていったからてっきりそちらにいるかと思ったんだが」
「!もしかして、ペルソナ使い……ですか?」
岳羽が驚くと、真田も桐条も頷いた。
「それも、色々とイレギュラーというかなんというか……」
「俺がどうかした?」
その場にいた人間以外の声が聞こえ、桐条達はバッと声のした方を振り向く。
その、転送装置の奥に立っていた青年は、茶色のゴーグルをしたまま「こんばんは」と岳羽たちに挨拶をした。
黒いマントのようなコートに全身を包んだ青年はフードをとっており、白い髪が照明によってキラキラ光る。
「…え、…こんばんは?」
「ばんはー…っス」
「………」
有里は言葉を失い、青年をジッと凝視した。
何処からどう見ても、というか声からして、彼しかいない。
(……ユキ?)
つい名を呼びそうになったが思いとどまる。
勘違いだとしても、此処で名前を言ってしまったら桐条達に彼と最初に会ったことなども話さねばならない。それはしない約束だ。
「ああ、俺はウサギって呼んで」
助け舟を出したのか、彼はしかし全く変わらない口調で言った。
「どうせ、この時間以外にアンタらと会う気はないし、ただ呼ぶだけの記号だから」
「は、はあ……」
「……ウサギ、今まで何処に行っていた」
桐条が冷たい声でそう言うと、ウサギは彼女の方を見て「地下」と答える。
「心配しなくても、アンタらの邪魔をする気はない。何処へ行こうと俺の勝手だとも思うけどな」
「……そうか。ところで、お前に訊きたい事が山ほどある」
「だろうな。答えられる範囲だけ、幾月さんに俺の事を言わない、って約束してくれるなら」
それに桐条は頷き、ウサギは「で、何を訊きたい?」と質問を促した。
「お前は、月光館の生徒か?」
「教えない」
「何故召喚器無しで召喚が出来る?」
「教えない」
「……アルカナが無い理由は?」
「教えない。……そんな顔されても、答えられる範囲だけといっただろ」
肩を竦めるウサギに、桐条は息を吐いて「そうだったな」と呟いた。
「……質問を変える。何時からタルタロスに来ているんだ?」
「結構前」
「私達の仲間になる気は?」
「別に、アンタらから要請があれば応じる」
「お前は、どれだけ強い?」
「いきなり抽象的だね。そうだな………そこの二人ならわかるんじゃない?」
不意に指をさされた岳羽と有里は首を傾げ、クエスチョンマークを頭の上に浮かべた。
「この前は災難だったね、あんな大きなシャドウ相手に」
指をさしたまま彼はそう言い、「クロッカー」と小さく呟く。すると彼の後ろに大きな時計兎が現れ、二人はあっと声を上げた。
「あなた、あの時の!?」
「うん」
「あの時……?岳羽、何か知っているのか?」
「知っているっていうか……有里君がペルソナ使い切っちゃってシャドウに襲われかけた時に助けてもらったっていうか……」
岳羽はボソボソと口篭りながら、「あの時は、ありがとうございました」と頭を下げた。
「別に。感謝される事はしてない」
「でも……」
「というか感謝される為にこの話をしたんじゃない。アンタらから見て、俺はどのくらい強い?」
ウサギがそう尋ねると、岳羽は「あ、そうでしたね…」と頭を上げる。
「えっと……かなり?」
「うん、かなり」
「……ゆかりっち、それはざっくりすぎじゃね……有里もさあ」
伊織が冷静にツッこむも、ウサギは首に手を当て、「かなり強いらしいぞ」とそのまま桐条に答えた。
「………」
「……じゃあ、シャドウで例えるか」
眉間に皺を寄せた桐条を見て、流石に答えが雑だったかと彼は暫く考え込み、「刈り取る者に会ったことは?」と彼女に聞く。
「刈り取る者……あの死神か」
それを聞いて、桐条は更に苦虫を噛み潰したような顔をした。
刈り取る者。
フロアに長く滞在しすぎると、何処からか鈴の音がし現れる。
アルカナが「死神」ということもあり、またかなり強いため、彼女たちは遭遇すればすぐにエントランスに戻るか次のフロアに移るようにしていた。
その反応に知っていると判断したのか、彼は口を開く。
「それを倒せるくらい」
「……は?」
「だから、刈り取る者を倒せるくらいには俺は強いよ。これで答えにはなったか?」
言葉を失った桐条と真田にウサギは首を傾げ、刈り取る者に会ったことがなく話についていけない三人の方を向く。
「俺、そろそろ帰るから。アンタらも幾月さんに俺の話はするなよ。俺の解剖死体が見たいなら止めないが」
「かいぼっ……!?」
「あと、敬語は無くていい。めんどいし……じゃあな」
彼のペルソナはいつの間にかいなくなっており、彼はスタスタとエントランスから出て行く。
そしてあっという間に夜の闇に消え、見えなくなっていった。
伊織は「まだ行けるのによー」と不貞腐れていたが、その脚はガクガクと震えていて、相当疲れたのだということが伺える。
「どうだった?タルタロスは」
桐条がそう尋ねると、有里は暫くした後「疲れました」と正直にため息をついた。
「そうか。……ところでお前たち、白い髪の青年に会わなかったか?」
「「?」」
「……見てません、けど」
岳羽と伊織は首を傾げ、有里は少し目を開いて「どうしてですか」と聞く。
「いや……先ほど此処で会ってな、何処かへ消えていったからてっきりそちらにいるかと思ったんだが」
「!もしかして、ペルソナ使い……ですか?」
岳羽が驚くと、真田も桐条も頷いた。
「それも、色々とイレギュラーというかなんというか……」
「俺がどうかした?」
その場にいた人間以外の声が聞こえ、桐条達はバッと声のした方を振り向く。
その、転送装置の奥に立っていた青年は、茶色のゴーグルをしたまま「こんばんは」と岳羽たちに挨拶をした。
黒いマントのようなコートに全身を包んだ青年はフードをとっており、白い髪が照明によってキラキラ光る。
「…え、…こんばんは?」
「ばんはー…っス」
「………」
有里は言葉を失い、青年をジッと凝視した。
何処からどう見ても、というか声からして、彼しかいない。
(……ユキ?)
つい名を呼びそうになったが思いとどまる。
勘違いだとしても、此処で名前を言ってしまったら桐条達に彼と最初に会ったことなども話さねばならない。それはしない約束だ。
「ああ、俺はウサギって呼んで」
助け舟を出したのか、彼はしかし全く変わらない口調で言った。
「どうせ、この時間以外にアンタらと会う気はないし、ただ呼ぶだけの記号だから」
「は、はあ……」
「……ウサギ、今まで何処に行っていた」
桐条が冷たい声でそう言うと、ウサギは彼女の方を見て「地下」と答える。
「心配しなくても、アンタらの邪魔をする気はない。何処へ行こうと俺の勝手だとも思うけどな」
「……そうか。ところで、お前に訊きたい事が山ほどある」
「だろうな。答えられる範囲だけ、幾月さんに俺の事を言わない、って約束してくれるなら」
それに桐条は頷き、ウサギは「で、何を訊きたい?」と質問を促した。
「お前は、月光館の生徒か?」
「教えない」
「何故召喚器無しで召喚が出来る?」
「教えない」
「……アルカナが無い理由は?」
「教えない。……そんな顔されても、答えられる範囲だけといっただろ」
肩を竦めるウサギに、桐条は息を吐いて「そうだったな」と呟いた。
「……質問を変える。何時からタルタロスに来ているんだ?」
「結構前」
「私達の仲間になる気は?」
「別に、アンタらから要請があれば応じる」
「お前は、どれだけ強い?」
「いきなり抽象的だね。そうだな………そこの二人ならわかるんじゃない?」
不意に指をさされた岳羽と有里は首を傾げ、クエスチョンマークを頭の上に浮かべた。
「この前は災難だったね、あんな大きなシャドウ相手に」
指をさしたまま彼はそう言い、「クロッカー」と小さく呟く。すると彼の後ろに大きな時計兎が現れ、二人はあっと声を上げた。
「あなた、あの時の!?」
「うん」
「あの時……?岳羽、何か知っているのか?」
「知っているっていうか……有里君がペルソナ使い切っちゃってシャドウに襲われかけた時に助けてもらったっていうか……」
岳羽はボソボソと口篭りながら、「あの時は、ありがとうございました」と頭を下げた。
「別に。感謝される事はしてない」
「でも……」
「というか感謝される為にこの話をしたんじゃない。アンタらから見て、俺はどのくらい強い?」
ウサギがそう尋ねると、岳羽は「あ、そうでしたね…」と頭を上げる。
「えっと……かなり?」
「うん、かなり」
「……ゆかりっち、それはざっくりすぎじゃね……有里もさあ」
伊織が冷静にツッこむも、ウサギは首に手を当て、「かなり強いらしいぞ」とそのまま桐条に答えた。
「………」
「……じゃあ、シャドウで例えるか」
眉間に皺を寄せた桐条を見て、流石に答えが雑だったかと彼は暫く考え込み、「刈り取る者に会ったことは?」と彼女に聞く。
「刈り取る者……あの死神か」
それを聞いて、桐条は更に苦虫を噛み潰したような顔をした。
刈り取る者。
フロアに長く滞在しすぎると、何処からか鈴の音がし現れる。
アルカナが「死神」ということもあり、またかなり強いため、彼女たちは遭遇すればすぐにエントランスに戻るか次のフロアに移るようにしていた。
その反応に知っていると判断したのか、彼は口を開く。
「それを倒せるくらい」
「……は?」
「だから、刈り取る者を倒せるくらいには俺は強いよ。これで答えにはなったか?」
言葉を失った桐条と真田にウサギは首を傾げ、刈り取る者に会ったことがなく話についていけない三人の方を向く。
「俺、そろそろ帰るから。アンタらも幾月さんに俺の話はするなよ。俺の解剖死体が見たいなら止めないが」
「かいぼっ……!?」
「あと、敬語は無くていい。めんどいし……じゃあな」
彼のペルソナはいつの間にかいなくなっており、彼はスタスタとエントランスから出て行く。
そしてあっという間に夜の闇に消え、見えなくなっていった。