小さな白
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「あー……苦手なモンとか、あるか?」
材料を冷蔵庫から出しながら尋ねる。するとユキはふるふると首を横に振った。
「苦手なもの、たくさんあるけど、ぜんぶ食べる!おっきくなりたいもん!」
「ほうほう。例えば?」
「……ピーマンとか、ちょっと苦い……トマトも、ぶちゅってなるの、苦手……
で、でも、ちゃんとぜんぶ食べれるようにならないといけないの!」
気を取り直したように言う彼に、荒垣は「そうか」と苦笑する。
「じゃあ、ピーマンの肉詰めと、ポテトサラダ作るか。後は出来合いでいいだろ。
お前は、まずピーマンの種を取り除く事からやってくれ」
「が、がんばる……!」
真剣にピーマンと向き合う小さな少年の姿は、とても面白くて。
デザートに甘いものでも作っておくかと考えながら、荒垣は自分の持ち場をやり始めた。
「ぎゅにゅ、ぎゅにゅちょーだい!」
ラウンジのテーブルに、全員分の料理が載せられる。
ユキの分の丁度いいサイズの椅子はなく、彼は湊の膝に座って手を伸ばした。
「ごめんね、今牛乳切らしてて……ジュース飲む?」
「じゅーす?それ、おいしいの?」
「うん」
尋ねられた湊は頷いて、そして自分のコップにオレンジジュースを注いだ。
「んん……じゃあ、じゅーすにする……」
「はい、どうぞ」
こぽこぽと自身のコップを満たしていく橙色に目を丸くして、そして全員が席に座ったのを確認すると、ユキは他のメンバーに倣って手を合わせた。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
彼は恐る恐る、コップを両手で持ち、一口飲む。
するとパアアと顔を輝かせて、湊を見た。
「!!じゅーす、おいしいね!」
「そうだね」
「ピーマンのにくづめ、おいしそう……食べられる気がする……」
ブツブツと呟いて、フォークを刺しては口に入れる。
そして暫く経つと不意に、湊が「君のご両親はね」と口を開いた。
「旅行に行ってるんだ。遠いとこに」
「お父さんたち、ごりょこうにいってるの?」
「そう。お母さんたちがね、ユキ君のことお願いねって、言ってたから」
「そうなの?」
パチパチと目を瞬かせたユキに、湊は頷く。
そして彼が食事を再開させると、唖然としたメンバーだけに聞こえる声で言った。
「……先輩達は、覚えてないと思うんですけど……彼は、かつての仲間です。
彼は、既に事故で両親を失ってます。それに、もうここにはいない……だから、彼の言う両親もここに存在してない」
それをこの子に告げるのは、酷だろうと。
それを聞いて、美鶴達は少しだけ目を伏せ、「そうか……」と呟いた。
「……ないで」
ボソリ。
ユキがフォークを置いて、口を開く。
「ユキを、そんな目で、見ないで!」
ギッと開かれた赤の瞳。それは強い意志がこもっていて、真っ直ぐにその視線の先―ゆかりの方を睨んでいた。
「ユキはユキなの!かみのけ白くて、目がまっかなのがユキなの!お母さんとお父さんが、だいすきってゆってくれたユキなのぉ!
かわいそ、とか、そんなの、ユキがユキじゃなかったら、いいみたい、ちがうの、ユキは、ユキでいいのぉ……!」
「ユキを、ユキをひていしないでぇ……!」
ボロボロと涙を零し、彼はそれを必死に拭う。
「ご、ごめんね、ユキ君」
ゆかりがしどろもどろになりながら謝ると、ユキはコクンと頷いた。
そして湊がティッシュを渡すと、鼻をかんでゴミ箱に丁寧に捨てる。
「……ユキ君、午後になったら、僕と一緒に学校に行かない?」
そう声をかけると、「がっこう?」と首を傾げた。
「がっこう、いいの?」
「ああ、見学だと言えば通してもらえるだろう」
美鶴がそう言うと、少し暗かった彼の表情がパアアとまた輝く。
「行きたい!」
「そっか。じゃあ、食べ終わろうね」
「うん!」
ユキは湊の膝に座り直し、また黙々と料理を食べていく。
ゆかりが湊にすまなさそうな顔をすると、湊は「大丈夫」と口パクで伝えた。
材料を冷蔵庫から出しながら尋ねる。するとユキはふるふると首を横に振った。
「苦手なもの、たくさんあるけど、ぜんぶ食べる!おっきくなりたいもん!」
「ほうほう。例えば?」
「……ピーマンとか、ちょっと苦い……トマトも、ぶちゅってなるの、苦手……
で、でも、ちゃんとぜんぶ食べれるようにならないといけないの!」
気を取り直したように言う彼に、荒垣は「そうか」と苦笑する。
「じゃあ、ピーマンの肉詰めと、ポテトサラダ作るか。後は出来合いでいいだろ。
お前は、まずピーマンの種を取り除く事からやってくれ」
「が、がんばる……!」
真剣にピーマンと向き合う小さな少年の姿は、とても面白くて。
デザートに甘いものでも作っておくかと考えながら、荒垣は自分の持ち場をやり始めた。
「ぎゅにゅ、ぎゅにゅちょーだい!」
ラウンジのテーブルに、全員分の料理が載せられる。
ユキの分の丁度いいサイズの椅子はなく、彼は湊の膝に座って手を伸ばした。
「ごめんね、今牛乳切らしてて……ジュース飲む?」
「じゅーす?それ、おいしいの?」
「うん」
尋ねられた湊は頷いて、そして自分のコップにオレンジジュースを注いだ。
「んん……じゃあ、じゅーすにする……」
「はい、どうぞ」
こぽこぽと自身のコップを満たしていく橙色に目を丸くして、そして全員が席に座ったのを確認すると、ユキは他のメンバーに倣って手を合わせた。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
彼は恐る恐る、コップを両手で持ち、一口飲む。
するとパアアと顔を輝かせて、湊を見た。
「!!じゅーす、おいしいね!」
「そうだね」
「ピーマンのにくづめ、おいしそう……食べられる気がする……」
ブツブツと呟いて、フォークを刺しては口に入れる。
そして暫く経つと不意に、湊が「君のご両親はね」と口を開いた。
「旅行に行ってるんだ。遠いとこに」
「お父さんたち、ごりょこうにいってるの?」
「そう。お母さんたちがね、ユキ君のことお願いねって、言ってたから」
「そうなの?」
パチパチと目を瞬かせたユキに、湊は頷く。
そして彼が食事を再開させると、唖然としたメンバーだけに聞こえる声で言った。
「……先輩達は、覚えてないと思うんですけど……彼は、かつての仲間です。
彼は、既に事故で両親を失ってます。それに、もうここにはいない……だから、彼の言う両親もここに存在してない」
それをこの子に告げるのは、酷だろうと。
それを聞いて、美鶴達は少しだけ目を伏せ、「そうか……」と呟いた。
「……ないで」
ボソリ。
ユキがフォークを置いて、口を開く。
「ユキを、そんな目で、見ないで!」
ギッと開かれた赤の瞳。それは強い意志がこもっていて、真っ直ぐにその視線の先―ゆかりの方を睨んでいた。
「ユキはユキなの!かみのけ白くて、目がまっかなのがユキなの!お母さんとお父さんが、だいすきってゆってくれたユキなのぉ!
かわいそ、とか、そんなの、ユキがユキじゃなかったら、いいみたい、ちがうの、ユキは、ユキでいいのぉ……!」
「ユキを、ユキをひていしないでぇ……!」
ボロボロと涙を零し、彼はそれを必死に拭う。
「ご、ごめんね、ユキ君」
ゆかりがしどろもどろになりながら謝ると、ユキはコクンと頷いた。
そして湊がティッシュを渡すと、鼻をかんでゴミ箱に丁寧に捨てる。
「……ユキ君、午後になったら、僕と一緒に学校に行かない?」
そう声をかけると、「がっこう?」と首を傾げた。
「がっこう、いいの?」
「ああ、見学だと言えば通してもらえるだろう」
美鶴がそう言うと、少し暗かった彼の表情がパアアとまた輝く。
「行きたい!」
「そっか。じゃあ、食べ終わろうね」
「うん!」
ユキは湊の膝に座り直し、また黙々と料理を食べていく。
ゆかりが湊にすまなさそうな顔をすると、湊は「大丈夫」と口パクで伝えた。