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寮まで戻れば、ラウンジにいた全員が僕等を見て「おかえり」と口を開く。
「ん?……湊、その子供はどうした?」
「ええと……ちょっと、親御さんとはぐれちゃってるみたいで」
「わあ…この髪、真っ白ですね」
天田が湊の後ろに回って声を上げると、少年はビクッと体を震わせて湊の背中から降りた。
すると真田がずいと近づき、少年を見下ろすように尋ねる。
「お前、名前は?年は言えるか?」
「っ……!!」
「うおっ……」
少年はことさらにビクリと震え、遠くで見ていた荒垣先輩の後ろに逃げ隠れる。
「……ユキ、です。5さい、です」
それだけ言うと、フードを被り直し、ギュッと荒垣先輩の服を掴んだ。
「たくさんの人に話しかけられるの、こわい……っ」
「そっか。ごめんね」
湊がユキと名乗った少年に合わせて屈み、優しい声で謝る。
するとユキはふるふると首を横に振り、「…いいの」と小さく答えた。
「もー、真田センパイが高圧的に訊くから、ユキ君ガチビビリしちゃったじゃないっすかー!」
「高圧的に聞いたつもりは無かったが?」
「小さい子に屈まないで聞いたら、どんな子だって怯えちゃいますよ」
「うっ……」
「ユキ君、そのお兄ちゃん、荒垣真次郎って言うんだよー」
ゆかりがからかうように言うと、ユキは荒垣とゆかりを交互に見て、恐る恐る口を開いた。
「……しんじろ、おにぃちゃ?」
「あ?」
ぴぎゃっ。
彼は驚いたのか、あたふたと荒垣先輩から離れようとする。
「…怒ってねえよ」
荒垣先輩はため息をついて、落ち着かせるように優しく彼の頭を撫でた。
彼はそれに目を細めて、スリスリと頭を擦りつけるように動かしふにゃりと笑う。
「ユキ君は、どうして、あそこにいたの?」
風花がそう尋ねると、ユキは「んっとね」と口を開いた。
「あのね、お父さんと、お母さんさがしてるの。おうちかえってもいなくて、お父さんの車もなかったから、おかしいなって」
「車?」
「お父さんが車つかうのはね、ユキのことで、とおくに出かけるときだけなの。それいがいのごようじも、行くまえにちゃんとつたえてくれるんだよ?でも、なにもきいてなくて……」
だんだん、声が涙声になり、大きな瞳から雫がこぼれ落ちる。
「……お父さん、お母さん、どこぉ……?ぐすっ……」
「風花さんが、ユキ君を泣かせたであります」
「え、私!?ご、ごめんねユキ君……」
「っ、んーん、だいじょぶ、……ふーか、おねぇちゃ」
ユキはゴシゴシと目元を擦り、風花に向けて笑顔を向けた。
僕は彼の背負っているリュックを見て、何か身元を証明するものが入っているのではと口を開く。
「そのリュックに入ってるの、何かな?」
「…………ぬいぐるみさん」
彼はリュックを置いて、チャックを開ける。
すると中から、白と黒の、二対の兎のぬいぐるみが出てきた。
「ユキのかみの色とね、目の色が、ほかの子とちがうんだって。だから、おともだちもいなくて、ご本よんだり、ぬいぐるみさんとあそんでたの」
兎のぬいぐるみを動かしながらそう説明する彼に、アイギスは「色が違うだけで、友人というのはできないのですか?」と尋ねる。
「……きもちわるい、って、いわれたから」
黒い方の兎がヒョコヒョコと揺れ、白い兎を攻撃するような仕草をした。
「お外で、ひとりであそんでたときにいわれたの。きもちわるい、こわい、おはなししたくない、って。……ユキ、なにもしてないのに」
少し拗ねたような口調で、むうと頬を膨らませる彼は、ただ仲間はずれにされていじけているだけのような、そんな感じが漂っていた。
傷ついたとか、そんな事は一切ないように、当たり前のように。
「ワンッ!」
すると唐突に、コロ丸が彼に飛びついた。
彼は驚き、コロ丸に押し倒された状況でパチパチと瞬きする。
「わわっ……」
「コロ丸ったら……いきなり飛びつかないの。ビックリしちゃうでしょ?」
ゆかりが呆れたように言う。
ユキは悲しそうにうなだれるコロ丸を見て、首を傾げながら口を開いた。
「こりょ……こりょまる?」
「ワフッ」
うまく呂律が回っていなかったが、コロ丸は嬉しそうに吠え彼の頬を舐める。
「こりょまる、くすぐったい!」
ユキはキャッキャと笑い、コロ丸の体を小さな手で撫でた。
「おー、癒されますなー」
「てゆーか、どーするわけ?ご両親の場所とか、そうそうわかるものじゃないでしょ?」
そう言われると、僕は「実は……」と口を開こうとして、彼の幼い声に遮られた。
「乾おにぃちゃ、じゅんぺーおにぃちゃ、ゆかりおねぇちゃ、ふーかおねぇちゃ、アイギスおねぇちゃ、湊おにぃちゃ、明彦おにぃちゃ、美鶴おねぇちゃ、しんじろーおにぃちゃ!」
「お、せいかーい!」
順平が、どうやら彼にメンバー紹介をしていたらしい。彼は一人一人目で見て確認しながら言ったあと、順平とハイタッチをした。
「えへへ……おぼえるのは、とくいなの!じゅげむも言えるよ!」
「お、じゃあ数の単位は?」
「んっと……一、十、百、千、万、おく、ちょう、けい、がい、じょじょう、こうがん、せいさいごく、ごうがしゃ、あそうぎ、なゆた、ふかしぎ、むりょうたいすう!」
「……すげえな」
荒垣先輩が素直に賞賛すると、ユキは照れくさそうに笑う。
するときゅるきゅると彼から腹の鳴る音が聞こえて、彼は眉間に皺を寄せた。
「ぅー……おなかすいた……」
「そっか。そろそろお昼の時間だもんね」
「……何か作るか…」
「!ユキも、お手つだいする!」
バッと手を挙げた彼に、荒垣先輩は「出来んのか?」と尋ねる。
「えとね、火はまだつかっちゃだめだけど、お野菜洗ったり切ったりするの、できるよ!」
「そーかそーか。じゃ、一緒に来い」
「うん!」
とてとてと後ろをついて行くその姿は親子のようだと美鶴先輩が言うと、荒垣先輩はうるせえと頭をかきながら返した。
「ん?……湊、その子供はどうした?」
「ええと……ちょっと、親御さんとはぐれちゃってるみたいで」
「わあ…この髪、真っ白ですね」
天田が湊の後ろに回って声を上げると、少年はビクッと体を震わせて湊の背中から降りた。
すると真田がずいと近づき、少年を見下ろすように尋ねる。
「お前、名前は?年は言えるか?」
「っ……!!」
「うおっ……」
少年はことさらにビクリと震え、遠くで見ていた荒垣先輩の後ろに逃げ隠れる。
「……ユキ、です。5さい、です」
それだけ言うと、フードを被り直し、ギュッと荒垣先輩の服を掴んだ。
「たくさんの人に話しかけられるの、こわい……っ」
「そっか。ごめんね」
湊がユキと名乗った少年に合わせて屈み、優しい声で謝る。
するとユキはふるふると首を横に振り、「…いいの」と小さく答えた。
「もー、真田センパイが高圧的に訊くから、ユキ君ガチビビリしちゃったじゃないっすかー!」
「高圧的に聞いたつもりは無かったが?」
「小さい子に屈まないで聞いたら、どんな子だって怯えちゃいますよ」
「うっ……」
「ユキ君、そのお兄ちゃん、荒垣真次郎って言うんだよー」
ゆかりがからかうように言うと、ユキは荒垣とゆかりを交互に見て、恐る恐る口を開いた。
「……しんじろ、おにぃちゃ?」
「あ?」
ぴぎゃっ。
彼は驚いたのか、あたふたと荒垣先輩から離れようとする。
「…怒ってねえよ」
荒垣先輩はため息をついて、落ち着かせるように優しく彼の頭を撫でた。
彼はそれに目を細めて、スリスリと頭を擦りつけるように動かしふにゃりと笑う。
「ユキ君は、どうして、あそこにいたの?」
風花がそう尋ねると、ユキは「んっとね」と口を開いた。
「あのね、お父さんと、お母さんさがしてるの。おうちかえってもいなくて、お父さんの車もなかったから、おかしいなって」
「車?」
「お父さんが車つかうのはね、ユキのことで、とおくに出かけるときだけなの。それいがいのごようじも、行くまえにちゃんとつたえてくれるんだよ?でも、なにもきいてなくて……」
だんだん、声が涙声になり、大きな瞳から雫がこぼれ落ちる。
「……お父さん、お母さん、どこぉ……?ぐすっ……」
「風花さんが、ユキ君を泣かせたであります」
「え、私!?ご、ごめんねユキ君……」
「っ、んーん、だいじょぶ、……ふーか、おねぇちゃ」
ユキはゴシゴシと目元を擦り、風花に向けて笑顔を向けた。
僕は彼の背負っているリュックを見て、何か身元を証明するものが入っているのではと口を開く。
「そのリュックに入ってるの、何かな?」
「…………ぬいぐるみさん」
彼はリュックを置いて、チャックを開ける。
すると中から、白と黒の、二対の兎のぬいぐるみが出てきた。
「ユキのかみの色とね、目の色が、ほかの子とちがうんだって。だから、おともだちもいなくて、ご本よんだり、ぬいぐるみさんとあそんでたの」
兎のぬいぐるみを動かしながらそう説明する彼に、アイギスは「色が違うだけで、友人というのはできないのですか?」と尋ねる。
「……きもちわるい、って、いわれたから」
黒い方の兎がヒョコヒョコと揺れ、白い兎を攻撃するような仕草をした。
「お外で、ひとりであそんでたときにいわれたの。きもちわるい、こわい、おはなししたくない、って。……ユキ、なにもしてないのに」
少し拗ねたような口調で、むうと頬を膨らませる彼は、ただ仲間はずれにされていじけているだけのような、そんな感じが漂っていた。
傷ついたとか、そんな事は一切ないように、当たり前のように。
「ワンッ!」
すると唐突に、コロ丸が彼に飛びついた。
彼は驚き、コロ丸に押し倒された状況でパチパチと瞬きする。
「わわっ……」
「コロ丸ったら……いきなり飛びつかないの。ビックリしちゃうでしょ?」
ゆかりが呆れたように言う。
ユキは悲しそうにうなだれるコロ丸を見て、首を傾げながら口を開いた。
「こりょ……こりょまる?」
「ワフッ」
うまく呂律が回っていなかったが、コロ丸は嬉しそうに吠え彼の頬を舐める。
「こりょまる、くすぐったい!」
ユキはキャッキャと笑い、コロ丸の体を小さな手で撫でた。
「おー、癒されますなー」
「てゆーか、どーするわけ?ご両親の場所とか、そうそうわかるものじゃないでしょ?」
そう言われると、僕は「実は……」と口を開こうとして、彼の幼い声に遮られた。
「乾おにぃちゃ、じゅんぺーおにぃちゃ、ゆかりおねぇちゃ、ふーかおねぇちゃ、アイギスおねぇちゃ、湊おにぃちゃ、明彦おにぃちゃ、美鶴おねぇちゃ、しんじろーおにぃちゃ!」
「お、せいかーい!」
順平が、どうやら彼にメンバー紹介をしていたらしい。彼は一人一人目で見て確認しながら言ったあと、順平とハイタッチをした。
「えへへ……おぼえるのは、とくいなの!じゅげむも言えるよ!」
「お、じゃあ数の単位は?」
「んっと……一、十、百、千、万、おく、ちょう、けい、がい、じょじょう、こうがん、せいさいごく、ごうがしゃ、あそうぎ、なゆた、ふかしぎ、むりょうたいすう!」
「……すげえな」
荒垣先輩が素直に賞賛すると、ユキは照れくさそうに笑う。
するときゅるきゅると彼から腹の鳴る音が聞こえて、彼は眉間に皺を寄せた。
「ぅー……おなかすいた……」
「そっか。そろそろお昼の時間だもんね」
「……何か作るか…」
「!ユキも、お手つだいする!」
バッと手を挙げた彼に、荒垣先輩は「出来んのか?」と尋ねる。
「えとね、火はまだつかっちゃだめだけど、お野菜洗ったり切ったりするの、できるよ!」
「そーかそーか。じゃ、一緒に来い」
「うん!」
とてとてと後ろをついて行くその姿は親子のようだと美鶴先輩が言うと、荒垣先輩はうるせえと頭をかきながら返した。