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「というわけで、新入り」
「やっほー湊君!」
「……なんで綾時まで、バイト来てんの?」
有里はそう言いながら、バイトの制服に着替える。
既に制服に着替えていた望月は「一度体験してみたくって!」と笑い、同じく厨房の制服を纏った桜木の方をちらりとみた。
「桜木君が紹介してくれたんだけど……目、青だったっけ?」
「カラコンだから、度入りの」
サラリと嘘をついて、桜木は彼にメニュー表と伝票を押し付ける。
「これ、メニュー表。最初は水とメニューだけ運んで。
何かあったら湊に訊く。他に質問は?」
「桜木君はフロア仕事じゃないの?」
「俺は裏手。まあ、人足りなければ手伝うから」
「はーい!」
望月はニコニコと手を振り、先に去る桜木を見送る。
そして有里の方に向き直ると、「じゃ、よろしくね、有里君」と手を差し出した。
「……よろしく」
有里はその手を握り、簡単にバイト内容を説明し自分の作業に移る。
望月は持ち前の明るさと笑顔ですぐに店に溶け込み、店が今日繁盛日という事もあってか注文取りに奔走していた。
「コーヒーのブラックがお二つですね、しばらくお待ちください!」
昼の時間も過ぎ、客足もひと段落したところで、望月はふと、店に置かれているピアノに誰か座っているのに気づいた。
黒い髪を後ろで結び、ふうと息を吐く青年。彼はピアノの上に置かれていた楽譜を開き、鍵盤に指を滑らせた。
♪~~~♪~~~……
決して複雑でない、ゆったりとした音が店内を包み込む。
「え……」
望月は目をパチクリと瞬かせ、慣れたように目を閉じて聞き入っている有里に声をかけた。
「……有里君、桜木君て、ピアノもできるの?」
「……バイトここで始めてから、空いてる時間に暇つぶしもかねて弾いてるんだってさ。
ちなみに、あの曲弾いたの今日が初めてだし、楽器を習ってた事もないっぽい」
「え」
確かに、そこまで難しい曲ではなさそうだし、左手は小節の始めや三拍目にコードを弾いているだけだ。
それでも、楽譜を初見であれだけ理解出来るのは流石だと、望月は素直に感動を覚えた。
やがて音は止み、まばらな拍手が送られるより前に桜木は奥の方へと戻っていく。
「……あのー、すみません、注文いいですか?」
「あ、すみませーん!」
怪訝そうな声を上げた客に望月はハッと我に返りメニューを取りに行くも、心の奥にわだかまりが生まれ首を傾げた。
(……今の曲、どこかで……)
「やっほー湊君!」
「……なんで綾時まで、バイト来てんの?」
有里はそう言いながら、バイトの制服に着替える。
既に制服に着替えていた望月は「一度体験してみたくって!」と笑い、同じく厨房の制服を纏った桜木の方をちらりとみた。
「桜木君が紹介してくれたんだけど……目、青だったっけ?」
「カラコンだから、度入りの」
サラリと嘘をついて、桜木は彼にメニュー表と伝票を押し付ける。
「これ、メニュー表。最初は水とメニューだけ運んで。
何かあったら湊に訊く。他に質問は?」
「桜木君はフロア仕事じゃないの?」
「俺は裏手。まあ、人足りなければ手伝うから」
「はーい!」
望月はニコニコと手を振り、先に去る桜木を見送る。
そして有里の方に向き直ると、「じゃ、よろしくね、有里君」と手を差し出した。
「……よろしく」
有里はその手を握り、簡単にバイト内容を説明し自分の作業に移る。
望月は持ち前の明るさと笑顔ですぐに店に溶け込み、店が今日繁盛日という事もあってか注文取りに奔走していた。
「コーヒーのブラックがお二つですね、しばらくお待ちください!」
昼の時間も過ぎ、客足もひと段落したところで、望月はふと、店に置かれているピアノに誰か座っているのに気づいた。
黒い髪を後ろで結び、ふうと息を吐く青年。彼はピアノの上に置かれていた楽譜を開き、鍵盤に指を滑らせた。
♪~~~♪~~~……
決して複雑でない、ゆったりとした音が店内を包み込む。
「え……」
望月は目をパチクリと瞬かせ、慣れたように目を閉じて聞き入っている有里に声をかけた。
「……有里君、桜木君て、ピアノもできるの?」
「……バイトここで始めてから、空いてる時間に暇つぶしもかねて弾いてるんだってさ。
ちなみに、あの曲弾いたの今日が初めてだし、楽器を習ってた事もないっぽい」
「え」
確かに、そこまで難しい曲ではなさそうだし、左手は小節の始めや三拍目にコードを弾いているだけだ。
それでも、楽譜を初見であれだけ理解出来るのは流石だと、望月は素直に感動を覚えた。
やがて音は止み、まばらな拍手が送られるより前に桜木は奥の方へと戻っていく。
「……あのー、すみません、注文いいですか?」
「あ、すみませーん!」
怪訝そうな声を上げた客に望月はハッと我に返りメニューを取りに行くも、心の奥にわだかまりが生まれ首を傾げた。
(……今の曲、どこかで……)