「なんか……その、桜木の事誤解してたかも……」
「……誤解？」
帰りの新幹線の中。順平と湊、綾時が既に眠りについた中、そう声をかけてきたのは友近だった。
俺が本から顔を上げて首を傾げれば、「ええっと」と苦笑する。
「ほら、噂の事とか、そういうの理由もなしにやるような奴に見えないし……よく考えたら、先生の反応も違和感ありまくりっつーか……」
「……それで？」
「あのさ、俺らも、休み時間話しかけてもいいか？」
その言葉に俺は目を細め、はあとため息をついた。
「……俺は別に、許可制で人と話してるんじゃない。先生が来るまでの間だったら、今までも普通に会話に応じている」
「そ、そうだっけ？」
「そもそも、コイツ等にも別に味方になってほしいとも頼んでいないしな。ただ鬱陶しいほど絡んでくるのなら勘弁だが、俺はそもそも、お前らと話すのが嫌だと一言でも言ったか？」
首を傾げた俺に、友近と宮本は顔を見合わせる。
―確かに、言ってはいないような気がする。そんな顔だ。
「……先生が来るまでの間、そのくらいなら、別にお前らに害がいくでもないから平気だろうと思っている。放課後はバイトがあるから引き止めるのは止めろ。言いたい事は以上だ」
俺は最低限口を開き終えると、また本へと視線を戻した。
行きとは違う、三人座席。窓側から綾時が、廊下側から湊がもたれかかってきて、その頭を撫でてやると肩に頭を擦りつけてくる。
（……でかい子供が二人、だな）
目を細め読書に戻れば、友近達の呆れたような、安心したようなため息が、微かに聞こえてきた。