Goodbye our earth

注意
姉妹百合っぽいですが恋愛感情はありません
















「……私、お姉様に何か返したいんです」

 きっかけはその一声だった。外はあいも変わらず濃紺の天井、端末の表示する(信じれるかどうかもわからない)時間からしてお昼時。
 彼女達がくつろいでいる多目的室は数分前に貸し切りの手続きをした場所だ。中はそれぞれが持ってきたものでジャンルも統一されていない。だが少なくとも、真っ白で無機質なデザインの壁は外と統一感が取れていた。内容物がごった煮なだけで。ちなみにアナスタシアは別の友人たちと用事があり不在なので、いつものメンバーが4人に減っている。
 その中で退屈を持て余していた少年少女らは各々自分の趣味に打ち込んでいる。そのせいで読んでいた本から顔を上げて、不意にそうエミリアが呟いた声は彼らにはやけに大きく聞こえていた。
 まずほう、と顔を上げたのはファンシー。そろそろ網目が雑になってきているかぎ針編みをサイドテーブルに放りだしてエミリアに視線を向けた。その次に反応を示したのは意外にもUnknownだ。ゲームをしているレイをぼんやりと見つめているだけだった彼女……もしくは彼は退屈そうに欠伸をして、エミリアへと問う。

「面白そうだね。具体的には?」
「いえ、あの……不意にそう思っただけなんですけどね。私、お姉様にもらってばかりだなと思って」
「ああ、だから何か返したいと」

 空間にはUnknownの納得の声音が浮かんでいる。これは何か楽しげなことがありそうだ、とやっと顔を上げたレイも「いいね」と少しだけ遅い肯定を示した。多分半分も聞いていないのでただの生返事になる。

「そういえば」

 暫くどこか虚空を眺めていたファンシーが唐突にそう言った。彼がこうした仕草をするときは、決まって何か名案が浮かんだときだとエミリア達は知っている。過去それは窮地をひっくり返せるほどの一手だったし、疑う余地もないほどの言い訳だったこともある。ちなみに言い訳の方は後から証拠がバレて罰を食らっていた。
 そんなわけで全員がファンシーの方向に顔を向け、何を喋りだすのか少しそわりとしながらそれを待っていた。

「昔地球にはバレンタインっていうイベントがあったんだよね」

 そして、彼はエミリアを見返してそう語り出す。話の内容を要約するとバレンタインというのは所謂好きな異性にチョコレートを中心としたお菓子を贈るイベントだそうだ。つまり、ファンシーはそれを口実にお菓子を贈ればいいのではないかと案を出している。

「どうせアレなんでしょ」
「あなた……案が素敵なことは認めますけどね」

 エミリアがそう呆れ声を出すと何が面白いのかファンシーはけらけらと笑い出す。きっと2人にしか伝わらない何かがあるのだろう。“アレ”が何かはわからないが、レイとUnknownは顔を見合わせてから「それ、いいと思う」と同時に言った。何れにせよ楽しいこと……もしくはこの宇宙船の中で果てしない退屈を少しだけ減らすことのできることは大歓迎だ。
 レイはUnknownの真っ黒な顔と目が合って口元を緩ませる。きっと、これから益々楽しい日になるだろうと予見したから。

「さ! そうと決まれば早速準備開始だよ。勿論仮想空間じゃなくてリアルで作りたいでしょ。ここにはキッチンもあるしちょうどいいじゃん」
「え……ちょっと待ってください、作るんですか!?」
「そりゃそうでしょ。そのほうが気持ちが伝わるもん。ね、レイ」
「私は楽しかったらそれでいいよ」

 膝枕からUnknownを下ろしてレイが立ち上がった。ゲームホログラムをオフにしながらこれまた真っ白なキッチンの方に向かう。
 一方エミリアは本当に作るんですか、とでも言いたげに眉を下げた表情を形作っていた。けれどすぐに目を閉じると、少しだけ微笑んでやる気を見せる。それをわかっていたかのようにファンシーが立ち上がった。
 いつもこうやってファンシーは友人達の気持ちを完璧に汲むのだ。彼が提言したことは大抵受け入れられてしまう。末恐ろしい能力だが、レイ達はそれにそこまでマイナスな印象は抱いていなかった。

「とは言っても、材料はどう調達するんですか?」
「それはオレが持ってくるよ。チョコレートくらいならくすねてこられるでしょ」
「ほんとルール破りだよね。最年長のくせに」
「アン、そういう事言わない」

 いつものようにレイの後を着いていったUnknownは物珍しそうにシンクや冷蔵庫を眺めている。普段はエネルギーや使用頻度の関係で稼働していない冷蔵庫は、レイの端末操作によって電源が入ったばかりのようだ。その証拠に扉の奥はまだ少しだけ生ぬるかった。
 この時代にわざわざアナログで作るなんて、とレイは呆れたように言う。しかしその顔は笑みを湛えていてノリノリであることは明白だった。
 スライド式の自動ドアから滑り出ていったファンシーは、それから数分後に茶色い塊の入った袋、そして中身の見えない袋を手に提げて戻ってきた。ちなみにその間にエミリアはアーカイブファイルでお菓子作りについて調べ、レイとUnknownは馴染みのないキッチンを探索している。

「やー……多分これ糖分補給目的でしかないから甘ったるいと思うけど、その辺は気合でなんとかしよう」
「気合でなんとかなるの?」
「オレがなるっていったらなるの」
「これが美少女パワーですか」

 意味のない駄弁りを交えつつファンシーが袋達をカウンターに置く。エミリアも興味津々といった風にそれを覗き込みつつ、「手を洗ってください」とレイとUnknownに声をかけた。
 それにレイ達は従って順番に流水へと手をつける。備え付けられているボトルを押すと、彼女らの手にきめ細やかな泡が生み出された。

「アナスタシアって甘いもの好きなの?」

 そう問うたのはUnknownだった。レイにしか興味がないであろうUnknownにファンシーとエミリアは苦笑して、そうだよ、と返す。

「うん。好きだよ」
「あと、柑橘系が好みでしょうか」
「じゃあ私ピール持ってるから取ってこようか?」
「手洗った意味とは」

 各々が好きなように動く。エミリアは先程調べていたため、何をすればいいか分かっている動きをしていた。レイはUnknownを引き連れて部屋から出ていく。柑橘系のビールというとレモンピール、もしくはオレンジピールを持ってくるのだろう。そのどちらもファンシーがいつか贈ったものだった。

「湯煎ですよね」
「そうそう。型はチョコと一緒に持ってきた」

 そう言ってファンシーがもう一つの袋を指さした。何も形を変えていない柔らかいそれは、きっと中に紙のカップでも入っているのだろう。そう見当をつけてエミリアは頷いた。
 エミリアが透明で汚れ一つ無いガラス板を二度タップすると、タブレットのようにそこに光が生まれメニューが現れる。カウンターの棚から鍋を取り出して水を入れた。それをガラス板の上に置いたとき、レイとUnknownが戻ってくる。可愛らしいラッピングの施された袋は明らかにそれが贈り物であることを示している。

「それ……開けてなかったの? や、開けてたら開けてたでそのまま使うのも嫌だけど」
「うん。ごめんなさい、食べる機会見失っちゃって」

 少し俯いてそう謝ったレイから「まぁいいけど」とファンシーは視線を外した。彼はレイのことになると途端に甘くなったり、途端に雑になったりする。それにエミリアは苦笑し、コンロの温度設定を上げた。
 ファンシーの助言通りに設定を完了させると、よく聞く電子音が鳴り響き後2、3分でお湯が沸くことを示した。

「あ、忘れてたんだけどチョコ刻んでいてね」
「あんた自分から言い出す割にはいつも雑ですよね? レイ、やって。あともう一回手洗って」
「えー! 私もやりたい」
「じゃあ一緒にしよっか」

 やいのやいのと4人が詰め込まれたキッチンは中々に窮屈だ。そもそも多目的室に備えられているキッチンは付け焼き刃のようなもので、本来大人数で使用されることは想定されていない。それなのに、成長期を迎えた後の少年少女が同時にそこで作業すれば混雑するのは想像に難くない。
 ここにエミリアの姉であるアナスタシアもいれば収拾はつかなくなっていただろう。そもそも、彼女がいないから作り上げられた状況ではあるのだが。

「包丁どこー?」
「そこの戸棚の扉の裏。ホルダーにかけてある」
「これ、お湯沸かすのちょっと延長したほうがいいですか?」
「いや。沸騰より多少冷めたくらいがちょうどいいかな、それでも熱いことに変わりはないけど」
「こっちは2人がかりだしね? サクッとやっちゃうよ」

 相変わらずそれぞれの動きは激しい。レイとUnknownはエミリアの言う通り律儀に手を洗い、そのまま教えてもらった戸棚を開いて包丁を取り出す。前時代的な器具であるそれらはキッチンの設備と同じく殆ど使われたことが無いようで、未だ新品同様の輝きを保っているままだ。昨今の事情を鑑みると、もしかしたら本当に新品なのかもしれない。
 他人に刃を向けないよう2人は切っ先を床に向けて、そのまま刀身を横にするようにして包丁を持った。そのままなるべく誰とも至近距離ですれ違わないようにして、エミリアがいつの間にか用意してくれたまな板の前に立つ。
 エミリアは2人の動向を見届けてから目の前の鍋に視線を落とした。恐らくは彼女らの動向を自動で認識していたのだろう、少しだけ火力は弱まっていた。

「うわっ……これ飛び散らない?」
「そこは阿吽の呼吸でなんとか」
「さっきから何もしてない奴が何かほざいてますね」
「いや、オレは知識を授けるから。こうガーッと」

 ファンシーが自分の頭からエミリア達に向かって何かを手で押しのけるような仕草をした。そんな彼は未だに彼女らの後方でカウンターにもたれかかっているだけだ。いつものことといえばいつものことだが、エミリアは諦めたように溜息をついて「レイ」と呼ぶ。

「え? あー……ファンシーもやって欲しいな」
「ごめん。やるね」

 エミリアは賢かったので、ファンシーにレイがとても効くことを知っていた。そしてレイも賢かったので、エミリアが何を言いたいのかも理解していた。暗に言われた通りにレイがファンシーに“お願い”すると、ファンシーがさっと戸棚からボウルやらヘラやら取り出し始めた。あっという間に揃った器具は未だ刻んでいるレイとUnknownの手元、その側に積み上げられていく。

「袋だかなんだか敷く? 飛び散っても回収簡単なように」
「実はもう遅いんだよね」

 不意にファンシーがそう言ってレイの方を見やると何故かドヤ顔をしてファンシーを見返すUnknownの姿がある。言われてみれば確かに、すでに丸型だったチョコが無残な姿に散り散りにされまな板の外側へと逃げおおせていた。
 横から見ていたエミリアがまるでそれを予知していたかのように散らばった無惨な破片を回収する。白い手に溜まった甘い塊をまたまな板の上に戻して、「次からはこれを敷いてください」とラップを持ち出した。

「ほら、まな板の下に」
「すごい! エミリア天才!」
「ありがとうございます」

 褒められた悪い気のする人間なんてのは一部の変わり者を除いてほとんどいない。彼女も勿論その部類の人間で、エミリアはふふんと得意げに笑った。それからラップを広げて、レイがチョコレートを取りこぼさないよう持ち上げたまな板の上に敷く。まな板より少しだけ大きめに広げられたラップは少し皺がついていた。

「じゃあ、あとはここからはみ出さないように気をつけてくださいね……もう既に終わりかけではありますけど」
「オレ何すればいいの? 正直人数余ってない?」
「え、じゃあボウルあっためてくださいよ」
「ん」

 ファンシーは一音でそう返事した。まな板の側にある山からボウルを抜き取って、シンクで熱めのお湯に曝す。横でレイが「できたよー」と気の抜けた報告をしているのに目ざとく反応して、ファンシーがボウルを元あった山の横に置いた。Unknownがボウルにまな板を傾けその上に乗った破片たちを収める。
 既に丁度いい塩梅の水温を示していたガラス板をエミリアが一度指で叩くと気の抜けた音を発して画面は休止モードを映し出した。この画面は電源は入っているものの鍋を熱していないということを示している。
 鍋に冷たい金属製のボウルを浮かべると、直ぐにボウルは白い水蒸気を宿しだした。そしてチョコレートが段々と固体をやめだし一つになっていくのをエミリアが見つめる。先程見たデータベースに書かれていた通り、ゴムベラで時折混ぜている。

「オレ鍋見とくよ。レイ達はてきとーに型の準備してて」

 そう声をかけられてレイ達は調理器具を洗うのをやめ、エミリアという例外を除いて一目散に袋へと飛びついた。この瞬間を待ってました、と言わんばかりにレイとUnknownが中からカップを取り出していく。レイの手のひらの半分より少し大きいそれは、星形やハート型、シンプルな丸型や三角型など色々な形のものが詰め込まれている。エミリアに「どれがいい?」とテンションを上げつつ聞く姿はただの少女にしか見えなかった。
 一方ファンシーはというと、自分でラッピングした袋を自分で開けるという何とも言えない状況に置かれていた。カウンターに雑に置かれた袋を傷つけないよう丁寧に開封して、中の黄と橙の細長いピールを取り出す。それを適当に千切りながら液体と化した甘いチョコレートに落としていく。疎らで揃っていないピールはその重さに素直に従い、段々と体をチョコレートに沈ませていった。

「……まぁ」

 そうなるとは思っていたけどね。
 そう呟いた声は原因の彼女には届いていなかったらしい。エミリアだけは思わしげにファンシーのことを見てきたが。とは言ってもその方が都合がいいので、特に何もコメントすることなく燥ぐのを少女達の役目にしてチョコレートをかき混ぜだした。

「ねぇこれは!? 超可愛くない?」
「少し彩度が高すぎないでしょうか……お姉様は、ピンク色はあまり好みではないかと」
「そっか。じゃあ青は?」
「いいと思います」

 双子のように交互に質問していく2人にエミリアは微笑み返す。自分の為にあれこれと献身的に考えてくれるのは彼女にとって代えがたい幸せだった。自分のことのようにあれでもない、これでもないと親身になっているレイはやっと満足のいくデザインのものを見つけたのか、「これはどう?」とエミリアに突き出した。
 それは淡い青色の、花形のものだった。外側……つまり縁に行くにつれて段々と色が薄くなっていく様子が本物の花びらの様だ。

「いいんじゃないでしょうか。私より見つけるのが上手ですね」
「もっと私に感謝してもいいんだよ?」
「ふふ。ありがとうございます」
「チョコの方は準備できたよー」
「あんたにしては上出来じゃん?」

 鍋を覗き込んだUnknownがそう言ってファンシーを褒めた。因みにこれは大変珍しい光景だったため、エミリアとレイは揃って珍獣を見たような目になる。別にそれくらいは意に介さないと言わんばかりにUnknownはファンシーの手から鍋を受け取り、それをスプーンでレイが予め見つけていた絞り袋に詰め込みだした。まだ熱いチョコレートがどろりと袋の中を遅く伝っていき、やがて絞り口へと到達する。
 彼女は後はもう押し潰すだけの絞り袋をエミリアに伝達し「エミリアがいれな」とカップを指し示す。

「え、これどれだけいれればいいんですか……?」
「気持ち分だけ」
「意地悪な回答ですね」

 薄ら笑ったファンシー、そして緊張した面持ちで見つめるレイとそわそわした気持ちが抑えられないというようなUnknown。彼らに見守られながら、エミリアはその中身をカップに絞り出した。
────
 他に誰もいないアナスタシアの居住室。誰しもが各々の眠りに向かう為の、消灯されてから少しの時間を使って2人の少女――もしくは一組の姉妹が窓際に立っていた。因みに同室の少女たちはエミリアが一人で、しかもこんな時間にやってきた時点で空気を読んで席を外している。彼女らの影が壁と同じく純白のソファに黒を落としている。人工的な明かりに照らされたエミリアの手にはきらきらとその光を反射する袋が収まっていた。
 可愛らしくラッピングされた、アナスタシアの為の贈り物。濃紺のリボンで封がされていて、若干透けた中身がパステルカラーの袋に影を作り出していた。

「これは……わたくしに?」
「そうです。お気に召すかはわからないんですけど」
「エミリア、畏まったときってすごく他人行儀よね。ちょっと寂しいですわ」

 受け取った袋を光に透かして中身を伺おうとするアナスタシアは、それが何かを悟ったのか小さく笑った。姉の表情にエミリアもまた頰を緩ませ、「チョコレートです」と言葉を添える。アナスタシアは疑念が確信に変わるといよいよ顔を明るくして、エミリアに抱きついた。

「っわ!? ちょっと姉さま、」
「ふふっ……ありがとう! エミリアがくれたってだけで嬉しいわ」

 右手にチョコレートの入った袋を持ったままエミリアの頭をしっかりと抱きしめて、アナスタシアは感謝の念を口にした。一方エミリアはというとどうすればいいのかわからずに、日頃の癖で反射的に両手を姉の背中に回していた。柔らかい感触と自分と同じ香りが五感をくすぐって、エミリアは何だか背徳感を感じてしまう。

「あの、そろそろ戻らないと怒られますので……見られたら困りますよ」
「あら、てっきりちゃんと許可を取っているものだと思っていたわ」
「実はそのチョコレートもくすねてきました」

 体を離してからエミリアがチョコレートの入った袋を指差すと、「そうでなくては」とアナスタシアは満面の笑みで笑った。彼女はきっと、真面目すぎて心配になるほどの妹が型破りなことをしていることが嬉しいのだろう。それが客観的に見て良いことか悪いことかはさておいて、少なくともアナスタシアは良い傾向だと捉えていた。エミリアは幼少期からそれなりに抑圧されてきたのだから今、ルールを破ってもいいだろうと考えているのだ。

「食べるのが待ちきれないわね。帰ってからにしないと」
「あ、同室の方々には分けないでくださいよ? わたくしはお姉様に食べて頂きたくて作ったのですから」
「変なところで頑固なのね。わかっていましてよ」

 見つかることを恐れたのか、それとも何か別のものから逃げたがっているのか。「ではこれで。おやすみなさい」とエミリアがスライドドアから滑り出る。彼女の体が完全に外に出ると、アナスタシアは閉じた扉に向かって「おやすみ」と零した。少し遅れてカチャリというオートロックの閉まる音がして、部屋の中は完全に静まり返った。
 ふと目線を下げると、アナスタシアの手の中にある贈り物がよく見えるようになる。濃紺のリボンで封されたそれを持ったまま彼女は目を閉じた。

「……せっかくなら、」

 アナスタシアは勿体ぶるように独り言を零す。そして徐に袋をサイドテーブルに置くと、自分の荷物が置いてあるスペースに向かった。明日の準備――筆記具やらノートやら――で少し散らかってはいるが、ゆっくりと探し物をするだけのスペースはある。

「わたくしも何か用意しようかしら?」

 そう呟いて、彼女はエミリアのそれとはまた違う色のリボンを手に取った。
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