Goodbye our earth

注意
百合要素あり














「……何これ?」
 自分でも驚くほど素っ頓狂な声が出てしまった。Unknownが私に手渡してきたのは飴の詰まった瓶。別に形容しがたいものでも知らないものでもなかったが、それをもらえた理由がわからない。
「何って、飴」
「それはわかるよ。私そこまで馬鹿じゃない」
 なんて軽く返事をしながら瓶を揺らしてみる。“早朝”のベッドの上は涼やかで、照明に照らすと中の飴がよりクリアに見えた。
 私がそうやって遊んでいると、脈絡もなしにUnknownが語りだす。曰く、これはファンシーさんから教えてもらった話だと。
「昔……あ、昔っていうのはまだ人類が地球に住んでた頃ね。その頃、中国では大切な人に飴を贈ったりする風習があったんだってさ」
 瓶の中には白いうさぎ形のもの、ピンク色の普通の形のものも様々な飴が入っている。Unknownから聞くに、中身は干し梅の飴や普通の甘いキャンディ、牛乳飴だという。
「でね、レイに贈ろうと思って」
「ふーん……ありがとう。大好き」
「言葉が軽いね」
 そんな辛辣なこと言わないでよ、と抗議すると分かってる分かってる、と軽く流されてしまった。誠に不服である。
「レイは私のこと大好きだもんね」
「そうだよ」
 Unknownが私の二の腕を優しく掴んで、ほんの少し頬を擦り合わせる。私もお返しと言わんばかりに擦り替えしておいた。
 それにUnknownはえへへ、なんて笑って私の胸に飛び込んでくる。その笑い方、自分の声で聞くと結構気持ち悪いからやめてくれないかな。そんな気持ちも込めてUnknownの頭を軽く叩くと、言わんとすることを理解したのか彼女はごめんって、と全く悪びれず私の膝に頭を乗せる。
 全く……Unknownのことは全部好きだけど。
「おはよー! あんたら朝からいちゃついてるんじゃないよ」
「変わりないねぇ」
 連鎖的に起床した同室の少女たちにおはよう、と声をかける。私たちの距離の近さに2人は楽しげに笑って幸せそうで何より、と手を振ってくれた。
「まぁこちらとしては薄い本が厚くなりますし?」
「レイが最高に可愛いんだよね。後で見せて」
「Unknownは欲に忠実ですこと」
 少女たちと仲よさげに会話するUnknownを見ていると、本当に恵まれているな、と思う。本来イレギュラーで忌み嫌われても仕方がないUnknownを、これほど温かく受け入れてくれる存在は貴重だ。
『起床放送です。全船員は直ちに用意を済ませメインルームに集合すること』
 そしてお決まりの無機質な放送が鳴って各々私たちは動き出した。
 今日は良い一日になりそうだ。
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