リクエスト
「小鳥」
また同じ朝が来て、眠っている愛しい小鳥に声を掛ける。でも、いつもなかなか起きない小鳥は少し掠れた声を出して、寝返りを打っただけだった。全く、僕のカナリアは歌姫ではなく、眠り姫だったのかな。その柔らかな頬にそっと触れてもう一度、声を掛けてみる。
「ああ、僕のカナリア。早く起きてその瞳で僕を見つめておくれ。僕の為にその美しい声で歌っておくれ。愛しい人。それとも、唄を忘れてしまったのかい? 頼むから僕に非道いことをさせないでおくれよ」
アルル、とその小さな耳元で囁けば、彼女は観念したように睡魔からその体を僕へ明け渡す。すう、と静かに開けられた目蓋にほんの少しだけ安心する。ああ、良かった。今日も小鳥は目を開けてくれた。
「おはよう、僕の小鳥」
まだ寝ぼけている小鳥の可愛い頬にキスを落とす。その感触がくすぐったかったのか、小鳥はふふ、と笑って寝転がったまま僕の方へ振り向く。
「おはようございます、クジャ様」
「おはよう。今日はどんな気分だい?」
「ん……もうちょっと、寝てたいです」
「仕方のない子だね」
起き上がる気配の無い小鳥の隣に僕も寝転がる。僕の銀髪と小鳥の髪が広がり、その色合いがカーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて、とても美しい光景だと思った。本当は小鳥ともう少し話していたかったけれど、まだ眠そうな顔をしていた彼女を無理矢理起こすことも無い。敵が近付いて来たら、僕が彼女を守れば良いだけの話だ。
またもう一度寝入ろうとして、目を閉じてしまった小鳥の髪に指を通す。その感触で小鳥はくすぐったそうに笑って目を開ける。
「なんですか? クジャ様」
「ねえ、僕の小鳥。少しで良いから、歌っておくれ」
「むぅ……? どうしたんですか? クジャ様。眠れないんですか……?」
半分眠りながら僕を見つめる小鳥があまりにも愛らしくて、思わずぎゅっと抱き締めてしまう。今、自分がどんな顔をしているのか、よく分からない。
「ああ、そうなんだよ。小鳥。僕は朝を告げる雲雀の声では眠れないんだ」
「だから、カナリアの声で寝かしつけておくれ」と頼むと、小鳥はまた薄く微笑んで、起きたばかりの掠れた、辿々しい声で歌い始めた。その歌は確かに普段、彼女が歌うものに比べたら、拙いのかもしれない。けれど、僕には何より甘く、愛しいと思える歌だった。嗚呼、この時間が永遠に続けば良いのに。元の世界に戻れば、僕は……。
そこまで考えて、その思考を打ち切った。いや、今は何も考えたくない。今この時だけは確かに幸せな時なのだから。
「小鳥……起きたら……一緒に、朝食を……」
ああ、僕としたことが。最後まで言えないなんて、情けないところを――。
すうすう、と頭上から静かな寝息が聞こえる。その胸の内から聞こえるとくとくと規則正しい音に、私も安心して目蓋が重くなる。私の愛しい人の音。どうかこの音が止みませんように。ずっと、ずっとおそばにいますから。
寄り添い、抱き合って眠る恋人達を朝日だけが静かに照らしていた。
また同じ朝が来て、眠っている愛しい小鳥に声を掛ける。でも、いつもなかなか起きない小鳥は少し掠れた声を出して、寝返りを打っただけだった。全く、僕のカナリアは歌姫ではなく、眠り姫だったのかな。その柔らかな頬にそっと触れてもう一度、声を掛けてみる。
「ああ、僕のカナリア。早く起きてその瞳で僕を見つめておくれ。僕の為にその美しい声で歌っておくれ。愛しい人。それとも、唄を忘れてしまったのかい? 頼むから僕に非道いことをさせないでおくれよ」
アルル、とその小さな耳元で囁けば、彼女は観念したように睡魔からその体を僕へ明け渡す。すう、と静かに開けられた目蓋にほんの少しだけ安心する。ああ、良かった。今日も小鳥は目を開けてくれた。
「おはよう、僕の小鳥」
まだ寝ぼけている小鳥の可愛い頬にキスを落とす。その感触がくすぐったかったのか、小鳥はふふ、と笑って寝転がったまま僕の方へ振り向く。
「おはようございます、クジャ様」
「おはよう。今日はどんな気分だい?」
「ん……もうちょっと、寝てたいです」
「仕方のない子だね」
起き上がる気配の無い小鳥の隣に僕も寝転がる。僕の銀髪と小鳥の髪が広がり、その色合いがカーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて、とても美しい光景だと思った。本当は小鳥ともう少し話していたかったけれど、まだ眠そうな顔をしていた彼女を無理矢理起こすことも無い。敵が近付いて来たら、僕が彼女を守れば良いだけの話だ。
またもう一度寝入ろうとして、目を閉じてしまった小鳥の髪に指を通す。その感触で小鳥はくすぐったそうに笑って目を開ける。
「なんですか? クジャ様」
「ねえ、僕の小鳥。少しで良いから、歌っておくれ」
「むぅ……? どうしたんですか? クジャ様。眠れないんですか……?」
半分眠りながら僕を見つめる小鳥があまりにも愛らしくて、思わずぎゅっと抱き締めてしまう。今、自分がどんな顔をしているのか、よく分からない。
「ああ、そうなんだよ。小鳥。僕は朝を告げる雲雀の声では眠れないんだ」
「だから、カナリアの声で寝かしつけておくれ」と頼むと、小鳥はまた薄く微笑んで、起きたばかりの掠れた、辿々しい声で歌い始めた。その歌は確かに普段、彼女が歌うものに比べたら、拙いのかもしれない。けれど、僕には何より甘く、愛しいと思える歌だった。嗚呼、この時間が永遠に続けば良いのに。元の世界に戻れば、僕は……。
そこまで考えて、その思考を打ち切った。いや、今は何も考えたくない。今この時だけは確かに幸せな時なのだから。
「小鳥……起きたら……一緒に、朝食を……」
ああ、僕としたことが。最後まで言えないなんて、情けないところを――。
すうすう、と頭上から静かな寝息が聞こえる。その胸の内から聞こえるとくとくと規則正しい音に、私も安心して目蓋が重くなる。私の愛しい人の音。どうかこの音が止みませんように。ずっと、ずっとおそばにいますから。
寄り添い、抱き合って眠る恋人達を朝日だけが静かに照らしていた。
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