第一章
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しかし、それも束の間だった。すぐに扉が開けられ、ガーネット姫も飛び込んで来た。
「姫様!」
「ルカ! 良かった。あなたも無事に乗り込めたのですね! さ、もっと奥へ行きましょう!」
「はい!」
そう言ってルカが彼女の前を走ろうとしたが、それより早くガーネット姫に手を引かれて、彼女が前を行く形になった。ルカが止める間も無く、ガーネット姫は階下へ続く階段を駆け下りようとしたが、その際、劇団員であろう少し派手な見た目の女性を突き飛ばしてしまう。
「きゃあ~! 何すんねんなあ~!」
そのまま女性を無視して行く訳にもいかず、二人は立ち止まる。女性はすぐに立ち上がったかと思うと、二人に詰め寄った。
「ちょっと!! あんたらなぁ、ウチにぶつかっといて、謝りもせえへんのっ!?」
この辺りでは聞いたことのない口調に二人は少々困惑したが、彼女が言っていることが理解できない訳ではない。「す、すみません」と謝るルカにガーネット姫も付け加えた。
「も、申し訳ありません。事情があり、急いでいたものですから……」
「もお~! ウチ、これから舞台に出る準備せなあかんのに~!」
ぷりぷりと怒る女性にどうしたものかと困っていると、ガーネット姫を追ってきたらしい男――確かジタンと呼ばれていた――が追いついた。その姿を認めると女性は怒りの矛先を彼に向ける。
「ちょっと、ジタン、聞いてえなぁ。このコら、ムチャクチャやねん!」
「そんなことより、その子達と話をさせてくれ!」
「ちょっと! そんなことってどういう意味やのんっ!?」
自分にとって最も重要なことを蔑ろにされたせいか、女性は納得していない様子でジタンに詰め寄る。ジタンはそれに気圧されているうちにガーネット姫はルカの手を引いて階段を駆け下りた。その姿を女性越しに見たジタンは思わず「あっ」と声を上げる。
「ルビィ、細かい話は後だ!」
「あのコ達、誰やのん?」
「悪ぃ! また後で話すからさ!」
「あ、ちょっと、ジタン!」
変わった口調の女性ルビィに謝りつつも、ジタンも階下へ降りると、そこにはどこへ行けばいいのか分からない様子のルカとガーネット姫がいた。薄暗い居間の真ん中には火が灯された蝋燭があり、周囲をぼうっと照らしている。二人は蝋燭の傍に立ち尽くしていた。
「ふぅ……やっと観念してくれたようだな?」
背後から聞こえるジタンの声にルカはガーネット姫の前に出て彼女を守ろうとする。が、ガーネット姫はルカに「大丈夫です」と言って、一歩彼に近付いた。
「あなた、この劇場艇の方かしら?」
その言葉を聞いたジタンは参ったなと言いたげに後頭部を掻く。少しバツが悪そうな彼に構わず、ガーネット姫は言葉を続ける。
「ご存知なのかもしれないのですけれど、実は……わたくしは――」
「あ、姫様っ」
姫は深々と被っているフードを顔が見えるように上げ、ジタンへ自己紹介をする。その流れで姫は正式にジタンへ依頼することにしたらしく、誘拐して欲しいと告げた。
「何だって!? それじゃ、あべこべ……」
その反応からどうやら彼も始めからガーネット姫を誘拐するつもりだったようだが、そこで遠くから聞こえてきたスタイナーの声に慌てて姫はフードを元に戻す。
「はっ、追っ手が来たようです!」
「何だか訳ありのようだな? よしっ! ここは一つ、オレに任せなっ!」
「ありがとう。恩に着ます」
「それでは、王女様」
そこでジタンは恭しくガーネット姫の前で跪き、まるで舞台の騎士のように丁寧な礼をする。その礼をしている間、二人の間だけ時がゆっくりと流れているようにルカには思えた。
「今からわたくしめがあなた様を誘拐させていただきます!」
そう言って顔を上げたジタンは悪戯っぽく微笑む。そんな彼につられて、ガーネット姫もふふ、と微かに笑った。と、その時、背後から誰かの声がかかり、それに驚いたガーネット姫とルカは思わず、ジタンの後ろに隠れてしまう。現れたのは、トンカチを持ったひげ面の男だった。
「ガーネット姫、と……」
「あ、私はルカです」
「そっか。じゃあ、ルカ、心配しなくていいよ。こいつは仲間のシナってやつだ!」
「そ、そうなのですか? それは驚いたりして大変申し訳ありませんでした」
「私も、すみません」
「でもまあ、そのツラじゃ二人が驚くのも無理ないぜ」
「何だとっ! これでも毎朝手入れしてるずらっ!」
悠長に話していたジタン達だったが、スタイナーの姫を呼ぶ声が近くなってきたことに気付き、そこで世間話は打ち切られ、シナの案内の下、姫を隠そうと隠し通路へ向かった。
そこからは怒濤の展開だった。ガーネット姫を追っ手のスタイナーから離す為、隠し通路を塞ぐも、スタイナーはそれでも食らいついてきた。仕方なく舞台に躍り出てアドリブ演技で乗り切っていると、途中で乱入した黒魔導師の少年の魔法により、ガーネット姫のローブに火が燃え移ってしまい、舞台上でその顔を晒すことになってしまった。そのせいでブラネ女王がガーネット姫の存在に気付き、主砲まで使って劇場艇を留めようとしたが、船長であり、タンタラス団のボスであるバクーの強行突破により、劇場艇プリマビスタはアレクサンドリアを辛くも離れ、魔の森へ不時着するに至ったのだ。
ルカは劇場艇が墜ちる寸前、ガーネット姫を庇おうと彼女の背後から覆い被さるようにして艇を穿った鉄杭に掴まっていたが、森へ劇場艇が墜ちた衝撃でルカの握力では耐えきれず、森の中へ投げ出されてしまった。
「ガーネット姫! ルカ!」
咄嗟に近くにいたジタンが後を追うように劇場艇から飛び降りるも、落ちていった彼女達を見付けることはできなかった。
「あの小娘が……」
劇場艇プリマビスタを取り逃がしてしまったブラネ女王は、憎々しげに劇場艇が去った方角を睨み、落ち着きを取り戻そうと手にしている新しい扇子で風を送る。観劇前に使っていた物は彼らを逃がしてしまった怒りで折ってしまっていたからだ。
「まだ子供と思っていたのに、まさかあんな大胆なことを考えていたとは……ゾーン、ソーン」
女王の巨体の陰から現れたのは、それぞれ赤と青の道化衣装を身に纏った双子の道化師・ゾーンとソーンだ。道化の化粧が施された顔から年齢を測るのは難しいが、二人共老人と言っても差し支えのない年齢だ。悪意のある顔つきのせいか、その姿は小さいながらも不気味な趣がある。
「例のものは使えるようになったのか?」
女王の問いに双子は不気味な笑みを浮かべて答える。
「もう実戦で使えるレベルでおじゃるよ」
「ガーネット姫なんてイチコロでごじゃるよ」
「誰が殺せと言った!?」
不気味な双子を遥かに上回る迫力の女王に、双子は「おじゃっ」「ごじゃっ」と奇妙な口癖で驚き、謝る。そんな二人に女王は念を押すように命じた。
「ガーネットは必ず生かして連れ戻せ!! ……それと、クジャにもこのことを報せておくのだ。近々、あやつの力を使う時も来るであろう」
「畏まりましたでおじゃる」
「分かったでごじゃる」
翌日になってからガーネット姫と共にルカがいなくなったと聞いたクジャが女王の命令の下、新たな刺客を放つまで後、数日。
ルカは意識が覚醒すると共に、じんじんと背中に痛みが広がっていくのを感じていた。痛い、と思うとその感覚が明瞭に手足の裏側にまでも広がっていき、痺れすら伴ってくる。ルカが倒れている場所は厭に暗かった。洞窟の中だろうか、本来星が見えるはずの空は真っ暗で何も見えない。一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった彼女はぼうっとその暗闇を見つめていたが、近くで聞こえた誰かの悲鳴に、守らなければいけない者がいないことに気付いた彼女は、はっと覚醒し切り、よろよろと立ち上がった。
「姫様……!」
未だ全身に痛みと痺れはあるものの、ルカは自身の体を引きずるようにして明るい方を目指して歩き出した。
「姫様!」
「ルカ! 良かった。あなたも無事に乗り込めたのですね! さ、もっと奥へ行きましょう!」
「はい!」
そう言ってルカが彼女の前を走ろうとしたが、それより早くガーネット姫に手を引かれて、彼女が前を行く形になった。ルカが止める間も無く、ガーネット姫は階下へ続く階段を駆け下りようとしたが、その際、劇団員であろう少し派手な見た目の女性を突き飛ばしてしまう。
「きゃあ~! 何すんねんなあ~!」
そのまま女性を無視して行く訳にもいかず、二人は立ち止まる。女性はすぐに立ち上がったかと思うと、二人に詰め寄った。
「ちょっと!! あんたらなぁ、ウチにぶつかっといて、謝りもせえへんのっ!?」
この辺りでは聞いたことのない口調に二人は少々困惑したが、彼女が言っていることが理解できない訳ではない。「す、すみません」と謝るルカにガーネット姫も付け加えた。
「も、申し訳ありません。事情があり、急いでいたものですから……」
「もお~! ウチ、これから舞台に出る準備せなあかんのに~!」
ぷりぷりと怒る女性にどうしたものかと困っていると、ガーネット姫を追ってきたらしい男――確かジタンと呼ばれていた――が追いついた。その姿を認めると女性は怒りの矛先を彼に向ける。
「ちょっと、ジタン、聞いてえなぁ。このコら、ムチャクチャやねん!」
「そんなことより、その子達と話をさせてくれ!」
「ちょっと! そんなことってどういう意味やのんっ!?」
自分にとって最も重要なことを蔑ろにされたせいか、女性は納得していない様子でジタンに詰め寄る。ジタンはそれに気圧されているうちにガーネット姫はルカの手を引いて階段を駆け下りた。その姿を女性越しに見たジタンは思わず「あっ」と声を上げる。
「ルビィ、細かい話は後だ!」
「あのコ達、誰やのん?」
「悪ぃ! また後で話すからさ!」
「あ、ちょっと、ジタン!」
変わった口調の女性ルビィに謝りつつも、ジタンも階下へ降りると、そこにはどこへ行けばいいのか分からない様子のルカとガーネット姫がいた。薄暗い居間の真ん中には火が灯された蝋燭があり、周囲をぼうっと照らしている。二人は蝋燭の傍に立ち尽くしていた。
「ふぅ……やっと観念してくれたようだな?」
背後から聞こえるジタンの声にルカはガーネット姫の前に出て彼女を守ろうとする。が、ガーネット姫はルカに「大丈夫です」と言って、一歩彼に近付いた。
「あなた、この劇場艇の方かしら?」
その言葉を聞いたジタンは参ったなと言いたげに後頭部を掻く。少しバツが悪そうな彼に構わず、ガーネット姫は言葉を続ける。
「ご存知なのかもしれないのですけれど、実は……わたくしは――」
「あ、姫様っ」
姫は深々と被っているフードを顔が見えるように上げ、ジタンへ自己紹介をする。その流れで姫は正式にジタンへ依頼することにしたらしく、誘拐して欲しいと告げた。
「何だって!? それじゃ、あべこべ……」
その反応からどうやら彼も始めからガーネット姫を誘拐するつもりだったようだが、そこで遠くから聞こえてきたスタイナーの声に慌てて姫はフードを元に戻す。
「はっ、追っ手が来たようです!」
「何だか訳ありのようだな? よしっ! ここは一つ、オレに任せなっ!」
「ありがとう。恩に着ます」
「それでは、王女様」
そこでジタンは恭しくガーネット姫の前で跪き、まるで舞台の騎士のように丁寧な礼をする。その礼をしている間、二人の間だけ時がゆっくりと流れているようにルカには思えた。
「今からわたくしめがあなた様を誘拐させていただきます!」
そう言って顔を上げたジタンは悪戯っぽく微笑む。そんな彼につられて、ガーネット姫もふふ、と微かに笑った。と、その時、背後から誰かの声がかかり、それに驚いたガーネット姫とルカは思わず、ジタンの後ろに隠れてしまう。現れたのは、トンカチを持ったひげ面の男だった。
「ガーネット姫、と……」
「あ、私はルカです」
「そっか。じゃあ、ルカ、心配しなくていいよ。こいつは仲間のシナってやつだ!」
「そ、そうなのですか? それは驚いたりして大変申し訳ありませんでした」
「私も、すみません」
「でもまあ、そのツラじゃ二人が驚くのも無理ないぜ」
「何だとっ! これでも毎朝手入れしてるずらっ!」
悠長に話していたジタン達だったが、スタイナーの姫を呼ぶ声が近くなってきたことに気付き、そこで世間話は打ち切られ、シナの案内の下、姫を隠そうと隠し通路へ向かった。
そこからは怒濤の展開だった。ガーネット姫を追っ手のスタイナーから離す為、隠し通路を塞ぐも、スタイナーはそれでも食らいついてきた。仕方なく舞台に躍り出てアドリブ演技で乗り切っていると、途中で乱入した黒魔導師の少年の魔法により、ガーネット姫のローブに火が燃え移ってしまい、舞台上でその顔を晒すことになってしまった。そのせいでブラネ女王がガーネット姫の存在に気付き、主砲まで使って劇場艇を留めようとしたが、船長であり、タンタラス団のボスであるバクーの強行突破により、劇場艇プリマビスタはアレクサンドリアを辛くも離れ、魔の森へ不時着するに至ったのだ。
ルカは劇場艇が墜ちる寸前、ガーネット姫を庇おうと彼女の背後から覆い被さるようにして艇を穿った鉄杭に掴まっていたが、森へ劇場艇が墜ちた衝撃でルカの握力では耐えきれず、森の中へ投げ出されてしまった。
「ガーネット姫! ルカ!」
咄嗟に近くにいたジタンが後を追うように劇場艇から飛び降りるも、落ちていった彼女達を見付けることはできなかった。
「あの小娘が……」
劇場艇プリマビスタを取り逃がしてしまったブラネ女王は、憎々しげに劇場艇が去った方角を睨み、落ち着きを取り戻そうと手にしている新しい扇子で風を送る。観劇前に使っていた物は彼らを逃がしてしまった怒りで折ってしまっていたからだ。
「まだ子供と思っていたのに、まさかあんな大胆なことを考えていたとは……ゾーン、ソーン」
女王の巨体の陰から現れたのは、それぞれ赤と青の道化衣装を身に纏った双子の道化師・ゾーンとソーンだ。道化の化粧が施された顔から年齢を測るのは難しいが、二人共老人と言っても差し支えのない年齢だ。悪意のある顔つきのせいか、その姿は小さいながらも不気味な趣がある。
「例のものは使えるようになったのか?」
女王の問いに双子は不気味な笑みを浮かべて答える。
「もう実戦で使えるレベルでおじゃるよ」
「ガーネット姫なんてイチコロでごじゃるよ」
「誰が殺せと言った!?」
不気味な双子を遥かに上回る迫力の女王に、双子は「おじゃっ」「ごじゃっ」と奇妙な口癖で驚き、謝る。そんな二人に女王は念を押すように命じた。
「ガーネットは必ず生かして連れ戻せ!! ……それと、クジャにもこのことを報せておくのだ。近々、あやつの力を使う時も来るであろう」
「畏まりましたでおじゃる」
「分かったでごじゃる」
翌日になってからガーネット姫と共にルカがいなくなったと聞いたクジャが女王の命令の下、新たな刺客を放つまで後、数日。
ルカは意識が覚醒すると共に、じんじんと背中に痛みが広がっていくのを感じていた。痛い、と思うとその感覚が明瞭に手足の裏側にまでも広がっていき、痺れすら伴ってくる。ルカが倒れている場所は厭に暗かった。洞窟の中だろうか、本来星が見えるはずの空は真っ暗で何も見えない。一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった彼女はぼうっとその暗闇を見つめていたが、近くで聞こえた誰かの悲鳴に、守らなければいけない者がいないことに気付いた彼女は、はっと覚醒し切り、よろよろと立ち上がった。
「姫様……!」
未だ全身に痛みと痺れはあるものの、ルカは自身の体を引きずるようにして明るい方を目指して歩き出した。
