第一章
夢小説設定
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劇が始まってから数分、ガーネット姫はルカを呼び、合図の言葉を言う。こんなに早く聞くことになるとは思わなかったが、先程言われたことを忘れずに迅速に行動へ移した。具合の悪そうな演技をするガーネット姫に付き添う形でロイヤルシートを出たルカとガーネット姫は、スタイナーやベアトリクス、他の兵士達の姿が見えなくなると、さっと走り出す。
ここからは時間をかける訳にはいかない。二人でガーネット姫の自室へ飛び込むように入ると、立場も何も構わずに二人はドレスや甲冑からそれぞれの外出着に着替える。ガーネット姫は白いブラウスにオレンジのサロペットに赤いブーツ。その上に顔を隠すよう白魔導士のローブを着る。ルカは以前に買った白いシャツと革製のパンツに深緑色の外套。ルカも同様に顔を隠す為、該当のフードを被った。他に特徴として挙げるとすれば、ガーネット姫は国宝のペンダントを首から下げ、ローブの中に隠し、ルカはクジャからもらったブローチをシャツの首元に付け、リボンも結ぶ。
そうして、逃亡する準備が整うと、二人は部屋を飛び出した。
「うおっとと!」
ガーネット姫と共に部屋を出たルカは、プルート隊の隊員と出くわした。おかしい、とすぐにルカは気付く。ロイヤルシートから王族の部屋へ続くこの通路は、余程のことが無い限り、無暗に兵士が行き来するのは禁じられている場所だ。そこに兜も被っていないプルート隊の隊員が上って来るなど、ルカとガーネット姫にとっては違和感の塊が来たようなものだった。その金髪を後ろで一つに結んでいる男は不思議そうな顔をこちらに向けたと思うと、不躾にもガーネット姫の顔を覗き込んでくる。ますますここの兵士では有り得ない行動に、ルカは思わず彼とガーネット姫の間に入ろうとした。
「あの、道を譲ってくださらないかしら?」
今ここで騒ぎを起こしたくないと思ったのだろうガーネット姫が穏やかに男にそう言うと、彼は上って来た階段から退いてくれた。ルカが軽く会釈をしてガーネット姫と共に階段を降りようとした矢先に、男が姫の肩を掴んでくる。びくり、と反射的に反応した彼女は思わず男の方を見た。
男は尚もガーネット姫の顔を覗き込み、うろうろと邪魔くさく周囲を歩き回る。
「いや、でも、こんな可愛い子、オレが見逃すはず無いんだけどなぁ……」
ふざけているのか、とルカが少し睨みつけた時、男はぽつりと呟いた。
「もしかして、君は……」
まずい、姫の正体を勘付かれたかと思ったその時、階段を半ばまで上って来た別の隊員が声を上げた。
「おい、ジタン! 何やってる!」
一瞬、男の意識がそちらに逸れた。その隙を突いてガーネット姫が「ごめんなさい!」と断りを入れ、先行したルカが男ももう一人の隊員も突き飛ばし、城内を駆け抜けていく。あんなにじっくり顔を見られてしまっては流石に誤魔化せなかったか、背後で「ぼーっとするな! 今のがガーネット姫だ!」という声が聞こえた。その声を聞いた途端、隣で走っているガーネット姫が声を上げた。
「ルカ! この先は二手に分かれましょう!」
「えっ!? で、ですが、姫様は……!」
「このままでは目立ちます! ルカ、劇場艇で会いましょう!」
そう言って、ガーネット姫は返事も待たずにルカと別れ、正面入口へ向かってしまう。どうしよう、と彼女はそこで立ち止まってしまった。おそらく、ガーネット姫は劇場艇へ乗り込む為、高いところを目指すだろう。
「高いところ……」
ルカは傍にある窓から劇場艇の位置を確認する。劇場艇は大きく、ロイヤルシートの真ん前に停まっている。劇場艇より高い場所というと、すぐ近くにある東塔と西塔が近い。よし、と覚悟を決めたルカは何故か兵士達の大部屋へ向かった。自分の考えが間違っていなければ、そこにある物が必要だ。
先程の男のこともあり、慎重に周囲を警戒しながら大部屋の前まで辿り着いたルカは、中に誰もいないことを確認してから静かに入る。向かうのはメリッサのベッドだ。彼女ならあれから改良した製作物を保管しているだろう。ルカが目当てにしているのはその材料だ。
「あった!」
無事に目当ての物を見つけたルカはメリッサに小さく謝りながらそれを外套の内側に入れ、真っ直ぐ西塔へ向かった。
西塔の螺旋階段を上り、一番上へ辿り着くと休む暇も無く、ルカは持ってきた物を取り出した。それはいつもメリッサが製作に使う丈夫なロープだった。以前、彼女にそんな丈夫なロープが必要なのかと問うと、「この工房のが一番丈夫だから、わざわざリンドブルムから取り寄せてるのよ!」と力説してきたことがある。彼女曰く、丈夫さにかけては右に出る物が無いので、これを使っているそうだ。それをルカは本はぎにロープをしっかり結びつけ、弓へつがえた。狙うは劇場艇の上部、できれば窓を刺し貫けば、室内のどこかに矢が引っ掛かってくれるだろう。理想は木製の壁に突き刺されば良いのだが、壁では貫くまで行けるかどうか分からない。仮に貫いたとしても途中で抜けてしまうかもしれない。ここからでは距離もなかなかにある。ただでさえ対象物までの距離が長いと矢の貫通力が落ちてしまうのに、これ以上不確定要素を増やすと失敗する。確実に劇場艇へ飛び移れるようにルカは窓へ狙いを定め、意識を集中させる。しかし、それはすぐに中断させられることになった。
「!? な、なに……?」
驚き、思わず弓矢を下げるルカ。不意に首元のブローチが光り出したのが原因だった。服の上から外套を着ているので、ブローチは外から見えないのだが、今はブローチ本体が緑色の光を纏っているせいでどこにあるか外からでも分かる状態だった。ブローチから発生した緑色の光はルカの腕を伝い、矢尻に光が集まり、オーラのように矢全体を覆った。
「もしかして、これって魔法……?」
そういえば、とルカはこのブローチをクジャからもらった時に聞いた言葉を思い出す。確か彼は特注の物だと言っていた。ルカにはとても扱えない物だとも。
もしかして、これは彼の計らいなのではないかとルカは思った。どうして彼がブローチに自分の魔力を込めたのかはルカには全く分からないが、この場においては助かる。きっとこの先でも力を貸してくれることだろうと思うと、勇気が湧いてきた。
魔法の力があるならもしかしたらとルカはもう一度弓矢を構える。今度は窓ではなく、目的の壁へ。目一杯引き絞り、放たれた矢は風の抵抗を物ともせず、真っ直ぐ飛んで行く。そして、目論見通り木製の壁を刺し貫くと同時に今度はブローチから青白い光が伝い、矢全体を凍らせる。ロープを何度か引っ張って改めて丈夫さを確認してからルカはそのままの勢いでロープを掴み、目を瞑って空中へ飛び出した。ここで迷ったら二度と行けない気がしたからだ。思ったよりロープは安定しており、ルカは真っ直ぐ劇場艇へ飛んで行く。そうして、何とか劇場艇に飛び移ることはできた。が、降り立った場所が丁度、舞台の曲を演奏する楽団がいたフロアだったらしく、ルカが飛び入ってくるとかなり驚かれた。
「し、失礼しました!」
今更になって込み上げてきた恥ずかしさで思わず、そんなことを言って彼女はそそくさと目に付いた扉に入った。そうしてしまってから別にあんなことを言う必要は無かったなと思い至り、また別の恥ずかしさが込み上げてきた彼女は無事侵入できた安堵感もあって、両手で自分の顔を覆って蹲った。
ここからは時間をかける訳にはいかない。二人でガーネット姫の自室へ飛び込むように入ると、立場も何も構わずに二人はドレスや甲冑からそれぞれの外出着に着替える。ガーネット姫は白いブラウスにオレンジのサロペットに赤いブーツ。その上に顔を隠すよう白魔導士のローブを着る。ルカは以前に買った白いシャツと革製のパンツに深緑色の外套。ルカも同様に顔を隠す為、該当のフードを被った。他に特徴として挙げるとすれば、ガーネット姫は国宝のペンダントを首から下げ、ローブの中に隠し、ルカはクジャからもらったブローチをシャツの首元に付け、リボンも結ぶ。
そうして、逃亡する準備が整うと、二人は部屋を飛び出した。
「うおっとと!」
ガーネット姫と共に部屋を出たルカは、プルート隊の隊員と出くわした。おかしい、とすぐにルカは気付く。ロイヤルシートから王族の部屋へ続くこの通路は、余程のことが無い限り、無暗に兵士が行き来するのは禁じられている場所だ。そこに兜も被っていないプルート隊の隊員が上って来るなど、ルカとガーネット姫にとっては違和感の塊が来たようなものだった。その金髪を後ろで一つに結んでいる男は不思議そうな顔をこちらに向けたと思うと、不躾にもガーネット姫の顔を覗き込んでくる。ますますここの兵士では有り得ない行動に、ルカは思わず彼とガーネット姫の間に入ろうとした。
「あの、道を譲ってくださらないかしら?」
今ここで騒ぎを起こしたくないと思ったのだろうガーネット姫が穏やかに男にそう言うと、彼は上って来た階段から退いてくれた。ルカが軽く会釈をしてガーネット姫と共に階段を降りようとした矢先に、男が姫の肩を掴んでくる。びくり、と反射的に反応した彼女は思わず男の方を見た。
男は尚もガーネット姫の顔を覗き込み、うろうろと邪魔くさく周囲を歩き回る。
「いや、でも、こんな可愛い子、オレが見逃すはず無いんだけどなぁ……」
ふざけているのか、とルカが少し睨みつけた時、男はぽつりと呟いた。
「もしかして、君は……」
まずい、姫の正体を勘付かれたかと思ったその時、階段を半ばまで上って来た別の隊員が声を上げた。
「おい、ジタン! 何やってる!」
一瞬、男の意識がそちらに逸れた。その隙を突いてガーネット姫が「ごめんなさい!」と断りを入れ、先行したルカが男ももう一人の隊員も突き飛ばし、城内を駆け抜けていく。あんなにじっくり顔を見られてしまっては流石に誤魔化せなかったか、背後で「ぼーっとするな! 今のがガーネット姫だ!」という声が聞こえた。その声を聞いた途端、隣で走っているガーネット姫が声を上げた。
「ルカ! この先は二手に分かれましょう!」
「えっ!? で、ですが、姫様は……!」
「このままでは目立ちます! ルカ、劇場艇で会いましょう!」
そう言って、ガーネット姫は返事も待たずにルカと別れ、正面入口へ向かってしまう。どうしよう、と彼女はそこで立ち止まってしまった。おそらく、ガーネット姫は劇場艇へ乗り込む為、高いところを目指すだろう。
「高いところ……」
ルカは傍にある窓から劇場艇の位置を確認する。劇場艇は大きく、ロイヤルシートの真ん前に停まっている。劇場艇より高い場所というと、すぐ近くにある東塔と西塔が近い。よし、と覚悟を決めたルカは何故か兵士達の大部屋へ向かった。自分の考えが間違っていなければ、そこにある物が必要だ。
先程の男のこともあり、慎重に周囲を警戒しながら大部屋の前まで辿り着いたルカは、中に誰もいないことを確認してから静かに入る。向かうのはメリッサのベッドだ。彼女ならあれから改良した製作物を保管しているだろう。ルカが目当てにしているのはその材料だ。
「あった!」
無事に目当ての物を見つけたルカはメリッサに小さく謝りながらそれを外套の内側に入れ、真っ直ぐ西塔へ向かった。
西塔の螺旋階段を上り、一番上へ辿り着くと休む暇も無く、ルカは持ってきた物を取り出した。それはいつもメリッサが製作に使う丈夫なロープだった。以前、彼女にそんな丈夫なロープが必要なのかと問うと、「この工房のが一番丈夫だから、わざわざリンドブルムから取り寄せてるのよ!」と力説してきたことがある。彼女曰く、丈夫さにかけては右に出る物が無いので、これを使っているそうだ。それをルカは本はぎにロープをしっかり結びつけ、弓へつがえた。狙うは劇場艇の上部、できれば窓を刺し貫けば、室内のどこかに矢が引っ掛かってくれるだろう。理想は木製の壁に突き刺されば良いのだが、壁では貫くまで行けるかどうか分からない。仮に貫いたとしても途中で抜けてしまうかもしれない。ここからでは距離もなかなかにある。ただでさえ対象物までの距離が長いと矢の貫通力が落ちてしまうのに、これ以上不確定要素を増やすと失敗する。確実に劇場艇へ飛び移れるようにルカは窓へ狙いを定め、意識を集中させる。しかし、それはすぐに中断させられることになった。
「!? な、なに……?」
驚き、思わず弓矢を下げるルカ。不意に首元のブローチが光り出したのが原因だった。服の上から外套を着ているので、ブローチは外から見えないのだが、今はブローチ本体が緑色の光を纏っているせいでどこにあるか外からでも分かる状態だった。ブローチから発生した緑色の光はルカの腕を伝い、矢尻に光が集まり、オーラのように矢全体を覆った。
「もしかして、これって魔法……?」
そういえば、とルカはこのブローチをクジャからもらった時に聞いた言葉を思い出す。確か彼は特注の物だと言っていた。ルカにはとても扱えない物だとも。
もしかして、これは彼の計らいなのではないかとルカは思った。どうして彼がブローチに自分の魔力を込めたのかはルカには全く分からないが、この場においては助かる。きっとこの先でも力を貸してくれることだろうと思うと、勇気が湧いてきた。
魔法の力があるならもしかしたらとルカはもう一度弓矢を構える。今度は窓ではなく、目的の壁へ。目一杯引き絞り、放たれた矢は風の抵抗を物ともせず、真っ直ぐ飛んで行く。そして、目論見通り木製の壁を刺し貫くと同時に今度はブローチから青白い光が伝い、矢全体を凍らせる。ロープを何度か引っ張って改めて丈夫さを確認してからルカはそのままの勢いでロープを掴み、目を瞑って空中へ飛び出した。ここで迷ったら二度と行けない気がしたからだ。思ったよりロープは安定しており、ルカは真っ直ぐ劇場艇へ飛んで行く。そうして、何とか劇場艇に飛び移ることはできた。が、降り立った場所が丁度、舞台の曲を演奏する楽団がいたフロアだったらしく、ルカが飛び入ってくるとかなり驚かれた。
「し、失礼しました!」
今更になって込み上げてきた恥ずかしさで思わず、そんなことを言って彼女はそそくさと目に付いた扉に入った。そうしてしまってから別にあんなことを言う必要は無かったなと思い至り、また別の恥ずかしさが込み上げてきた彼女は無事侵入できた安堵感もあって、両手で自分の顔を覆って蹲った。
