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OP



生まれながらに声帯に障害があって声が出なかった私は、両親に欠陥品として森に捨てられた。

馬鹿な私は双子の相方が助けてくれると思っていたけれどそんな事はなくて、森をさ迷い空腹になった私は悪魔に呪われるという気持ち悪い見た目の実を食べた。とても美味しくなかった。
そうして森を抜けた先は空と海で、誰もいないのどかで静かな空間に、妙な物悲しさを覚えて泣き出した。
ただ怖いと思った暗い森の中と違って、柔らかく明るいそこは、両親が私を殺そうとしたという現実を嫌という程叩きつけてきた。

泣いていた私に声をかけてその島から連れ出してくれたのは、知らない海賊の人だった。とても優しくて面白い人達で、私が言葉を紡げなくても悪魔に呪われていても構わず仲間だと言ってくれた。
しかし彼らも海賊団で敵と戦う事はあった。珍しく彼らが苦戦を強いられた時、船にある牢屋に閉じ込められたのだ。
閉じ込めた彼はとても悲しそうに、「もし自分たちが殺されてしまっても、お前を哀れんだ敵がお前を生かしてくれるかもしれない」と言って部屋を出ていった。
そして次に部屋が開かれた時、入ってきたのは私の知らない人だった。

次に会った彼らは賞金稼ぎの団体で、ほとんど海賊に近いものだと言っていた。少し怖い顔の人達だったけれど、何かと気にかけてくれてやっぱり優しい人達だった。
そんな彼らもとある海賊団に喧嘩を売って苦戦する事になった。今度の敵は毒を駆使してくる人達で、船中の人達が苦しむ声が聞こえた。
私のいた部屋に駆け込んできた船員が、毒で血を吐きながらも私を抱えあげて、地獄のような船の中を駆け抜ける。そして私を船尾の淵に座らせて言った。
「本当は君をうちに返してあげられたら良かったのだが、自分たちはきっとここでおしまいだ。敵の使う痛くて苦しい毒に君が苦しむ姿を見たくない。上手く行けば、近くの海賊船の人が君を助けてくれるかもしれない。君を助けたにも関わらず責任を持って逃がしてあげられなくてごめん。君を殺すという選択肢しか選べない自分を許してくれ」と。
苦しそうに何度も咳き込みながら最後に申し訳なさそうに微笑んだ彼は、そう言って私の肩を優しく押した。海へと落ちる数秒、彼が血を吐いて倒れたのが見えた。

悪魔に呪われた私は、海に嫌われている。
海に落ちた私はただ力が抜けて深い青に飲まれるだけだった。
そうして次に目を覚ました時

「良かった!気がついた!」
「気分はどうだ?吐き気があったりは?」
「ふふ、安心して。取って食おうだなんて考えてないから」
「いや、こえーよ」
「よほほ、あちらは先程ルフィさん達が助けに行きましたから安心してください」

不思議な人達だった。
賞金稼ぎの彼らは、3分の1の人数は何とか助かった。それもこれも毒を使う海賊団を倒してくれたこの海賊船の船長と、解毒剤を用意してくれた船医のおかげだった。これから旅を続けるのは不可能だと判断した彼らは、近くの島で生活する事にするという。
そして私は彼らの希望で、この不思議な海賊団と旅をする事になった。

「 」
「あら、独り言?」
「独り言を書くってアンタ本当に面白いわね」

すっかり仲良くなった女クルーの二人にニッコリと微笑んで見せる。




不幸中の幸い

色々不幸なことも多い人生だけれど、それでも私は幸せに愛されている。
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