序章
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私の疑問は直ぐに戻っきたマシューによって、その日1日かけて解消されることになる。
戻っきたマシューは、『日本のお役所はもう終わりだと。かァー時差ってのは厄介だねェ』とボヤいていた。日本のお役所とお話していたらしい。電話でもしてたのかな。
お茶会やお昼を挟みながら様々な事を教えて貰った。
この世界には魔法界と呼ばれるものがあるらしい。魔法族と非魔法族…マグルと言うらしい…で分けられ、魔法族はマグルに存在を知られてはいけないという。
私は今その話を聞いている訳だけれど、事態が収束したら記憶を消すから良いんだって。全部分からなくなっちゃうのは、ちょっと嫌だなぁ。
そして、その魔法界というのはイギリスだけでなく世界各国にあって、もちろん日本にもある。
日本でも魔法族は魔法族の教育を受けている為、そんな教育を受けていない私はマグルであるという事だ。そんな私が、産まれる前まで遡り、しかも国まで越えて、身体的にも退化しているのは、間違いなく何か魔法族の事件に巻き込まれたのだろうとマシューは考えているらしい。
ただ、身体が退化したのは大体10年くらいだというのに、遡った時代は27年。それぞれの時間が別々に遡るような事例は世界的に見ても、聞いたことすらないような珍しい案件で、原因を探るのに時間がかかりそうだと言われた。
それに、生まれていない時代まで飛んでしまった以上、何があったのか調べるにはどんなに早くても私が産まれるまで待たなきゃいけないらしくて、少なくともあと8年はイギリスで暮らさなきゃいけなくなるんだと。
どうやってイギリスに入国したのかも分からず、今現在日本に国籍のない私の身柄を日本に引き渡すことは難しいからだとか。
幸い、昨日出会った親子…ローレン家が私を引き取って育てると申告してくれたみたいで、生活には困らないけれど、目下の問題としては言葉が分からない事だ。
正直何故日常魔法があるのに、言語系の魔法がないのか不思議で仕方ないのだけれど、ないものは仕方ない。こればかりは地道に言葉を覚えてそれを使う、を繰り返していかねば上手くはならないだろう。
幸い私は大学で英語学を学んでいたから、最低限の土壌は出来ているし、ローレン家のお隣にはマシューがいる。マシューはイギリス人だが日本文化に聡明だ。もちろん彼が仕事の時は自力で何とかするしかないが、暇があれば練習に付き合ってくれるらしい。ありがたい事だ。
一応魔法省…マシューやリックの働いている場所だ…での客人()という扱いで、魔法省からお金の援助は出るものの、生活の全てをローレン家に任せる事になってしまうのだし、日用品は俺が買ってやるよ。
とマシューに促されて、午後からは買い物に出かけた。
マシューが連れてきてくれたのは、ダイアゴン横丁と呼ばれる魔法族の日用品や魔法道具を売っている所だった。
急にパブに入っていった時は正気かと2度見したけれど、中に入ってみればなるほど、魔法界と非魔法界との境界であった。
マシューは途中誰かに声をかけられたり、かけたりしながら店の奥のレンガ塀の奥へ案内してくれる。
『う、わぁ…』
なんだろう、この華やかな雰囲気は。
石畳のアーチの向こうは、沢山の人が行き交っていた。多くの人が薄暗い色のローブを着ており、暗い色のとんがり帽子を被っている。
なのに、こうも明るくて、幻想的で、ふわふわした雰囲気が漂っているのは、何故だのだろうか。それこそ、魔法なのか。
『今日は人が少ないほうだな。良かった、レイとはぐれなさそうで』
口ではそう言うマシューの手にはしっかりと私の手が握られており、言いながらも繋ぎ直していた。恐らくピーク時よりはいないという意味なのだろうが、私から見たら結構人はいる。
ついでに言うと、私は今小さいから人に紛れやすい。
結論を言うと、多分間違ってはぐれたら合流出来なさそうだ。
『レイ、もしはぐれたらここに戻って来い。場所が分からなければ、近くの人か、近くのお店の店員に聞くんだ』
真剣に見下ろしてくるマシューにこくこくと何度も頷く。
「繰り返して、漏れ鍋は何処ですか?」
「も、漏れ鍋…は……?」
「漏れ鍋は何処ですか?」
「漏れなべ…は、どこ、です、か…?」
『そう、もしはぐれたらそう言って教えて貰うんだぞ』
『分かりました!』
大きく頷くものの、マシューの表情は晴れない。結果から言うとこの日マシューとはぐれることはなかったのに。
私は良い子なので。