序章
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「お、来たな。待ってたぞ」
「お前…何するにしてもビクビクするこの子を連れて受付するの大変だったんだぞ。受付まで迎えに来いよ」
「いやすまんな。こっちは仕事があるもんで」
「…それは遠回しにウチが暇だって言ってるのか」
「ジョーダン」
目を釣りあげたリックと、昨日会ったおじさんがにこやか()に言葉を交わす。
昨日はレグとユーニスに連れられて彼らの家に行き、夕方リックと挨拶を交わした。リックは多分ユーニスの旦那さんなんだと思う。
その後は普通にご飯を食べさせてもらい、お風呂に入り寝た。
そして起こされて起きて着替えて連れてこられたのがここ、なんかよく分からないヤバい所。
なんか黒いコート? みたいなの着た人達がいっぱいいて、急にパッと現れたり消えたりして、オマケに紙飛行機が空飛んでる。何これ夢? 夢だったわ。この白昼夢いつ覚めるんだ。
『おはよう。昨日も会ったの覚えてる?』
リックとの会話が一区切りついたのかしゃがみこんで覗き込む彼と目が合う。頷いて見せると少し嬉しそうに顔を破顔させて手を差し出す。
『マシュー・ガーティンだ。マシューって呼んでくれ』
『あの、岩鶴 鈴、です』
よろしく、と握手して本題に入る前にリックは職場に向かうらしい。なんでもこの1つ上の階がリックの職場らしい。
『さて、んじゃあ色々聞かせてくれよ?』
手招くマシューについて小部屋の椅子に座る。椅子が高くて抱き上げて座らせられたのは、ちょっと…腹立つかも…。
『とりあえず、名前と年齢、どこに住んでいるか教えてくれるか? あ、ご両親の名前とか分かれば、それも教えて』
『名前は、岩鶴 鈴です。えぇと、年齢は……』
ここまで言って言葉が止まる。みんな子供だと思ってこう過保護にしたんだろうけど、私普通に大人だからね…。
『大丈夫? 歳分からない?』
『あ、そうじゃなくて……えっと、私、19です』
数秒の沈黙、その後気まずそうに逸らされる視線。
それはどっちの感情だろうか、小娘が頭おかしい事言ってると思われてるのか、19にめっちゃ甘々に話してしまったからか。
「あー、これはだいぶ面倒な事になりそうだぞ…」
ガリガリと髪を掻きむしってため息を吐く。やっぱ独り言は英語なんだな。なんて言ったんだろう。
『何年生まれのいつ、ここに飛んだか分かるか?』
『えっと、1998年生まれです。確か昨日は…2017年 8月2日、でした』
『ぶ』
口に何も入れてないのに吹き出して目を見開くマシューに、逆に驚く。
え、なになに? そんな驚く事なの?
『いや、ごめん。ちょっとお茶入れてくる…』
ふらふらと力なく立ち上がり、両手を揺らしながら部屋を出て行った。
ほんの数分と待たずウキウキ顔をしてお盆を持ったマシューが戻ってくる。なに? お昼まだなのにお茶会するの?
『はいこれ紅茶。ミルクと砂糖あるけど、甘々ミルクティーにする?』
イギリス人は紅茶にうるさい。私は甘々ミルクティー大好きだけれど、イギリス人的にどうなんだろう。私の事試しているのだろうか。マシューを下から見上げて小さく頷いて見せる。
『よし来た。日本人にすら『うわ甘』って言われたマシュー特性ミルクティー作ってやんよ』
私の方へ置いたティーカップにミルクと砂糖を入れてグルグル混ぜるマシューは、楽しそうだ。さっきまでのお疲れな雰囲気はどこへ行ったのか。
ちょっと不自然なまでのハイテンションを不思議に思いこそすれど、お疲れなのかな、ごめんね面倒事持ち込んで…と思い直す。
『はい完成。飲んでみて飲んでみて』
マシューに促されるままほんのり温かいミルクティーを口にする。ふんわりとした甘さが子供の舌にはちょうど良い。
『美味しい…』
今まで飲んできたどのミルクティーよりも美味しい気がする。もしかして良い茶葉を使っていたりとかするのだろうか…?
ジッとこちらを伺う彼と目が合って思わず顔がとろける。
『えへ、美味しい…です』
『そ、そっか、なら良かった。このお菓子も食べて良いからね』
お皿に乗った色んな種類のクッキーと焼き菓子を差し出される。
この人、私の言った19歳を信じてないな? 美味しいから食べるけど。
『お茶しながらもう一回聞かせてな。書類作りながら聞くから』
『あ、はい。名前は岩鶴 鈴、です。後は…1998年生まれの19歳で、昨日は2017年8月2日でした』
今まで聞かれたことを順番に思い出しながら答える。ガリガリと羽根ペン? でメモをするマシューは難しそうな顔をしていて、本当に面倒な案件なんだなぁと申し訳なくなる。
そんな私の考えが顔に出ていたのか一瞬こちらを見た彼が、綺麗な2度見をかまして凝視してくる。そして困ったように眉を下げて、クッキーを私の口元に差し出した。口に入れるとホロホロと崩れて美味しい。うん、バターの味強いけど美味しい。
そうしてもぐもぐとクッキーを食べている間に、マシューはどこかへ行き、すぐ戻ってくる。
なんでもこの時代、わたしはまだ生まれていないらしくて事情を探るために両親を探したいらしい。
待って、私時も超えてたの?
両親の名前と住所を伝えると伝えてくる、とどっかへ行ってしまった。
さっきからちょくちょくいなくなるのは、誰かとお話してるからなのか。
と言うか、この世界の事色々教えてください。