序章
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例えば、例えばの話だけれど、もし瞬きをした瞬間に別の場所にいたら、どうするのが正しい反応なのだろうか。
『ここ、どこだ…?』
友達とお祭りに行った帰り道、家に向かって歩いている途中。瞬きをした途端に暗かった世界が明るくなった。
なんだなんだ、白昼夢か? いや夜だから白昼夢とは違うのだろうけれど。
それはともかく、と周りを見渡すとどうやら住宅地のようでその一角にある公園に私は立ち尽くしていた。目線は低く、手足を覗けば小さく、ふにふに柔らかい。それに、眼鏡がなくても遠くまで見える!!!!
感動して「おぉ」と言葉を漏らしつつ公園の中をふらふらと散歩する。
滑り台にシーソーにジャングルジム…置いてある遊具は普通にその辺の公園にあるもので、場所を特定できそうなものは無い。ない、のだけれど、そこはかとなく感じるこの違和感はなんだろう。
日本の公園ってこんな感じだったっけ?
よく分からない胸のざわめく感じに蓋をして公園の外に出てみる。そして立ち並ぶ建物に目を向けて一言。
『さてはここ日本じゃねぇな?』
立ち並ぶ一軒家、それぞれの家の前に広がる芝生の庭、停めてある車は一昔前っぽそうな形で、道路の広さがもう違う。
えぇ…私海外とか行ったことないから分かんないけど、この作りは西欧のどこかなのでは…? 分からんが。
とりあえず公園に戻ってベンチに腰を落とした。
今の服装は、お祭りに行ってきた帰りだから着ていた浴衣…が体に合わせて小さくなったものなのだけれど、これ、もしここがイギリスなら相当目立たない?
いやでも夢だしな、と思い返して顔を上げた時。公園の入口に立ってこっちを見ていた親子と目が合った。立ち止まってチラチラとこちらを見ながら何かを話しているようだが、こちらまで声は聞こえない。
視線から逃れるように俯く。何だか急に物悲しくなってきた。あんな帰り道で白昼夢って、ぶっ倒れでもしたのかな。 だとしたら病院? え、お金どれくらいかかるだろう。親にも連絡行くだろうなぁ…。うーん、体調悪いような気はしなかったのだけれど。
俯いて早く目覚めろ、と心の中で強く念じていると、近づいてくる足音がする。
「ねぇ、大丈夫? お母さんは?」
聞こえてきた綺麗な英語に顔を上げる。綺麗な金髪に緑色の瞳、白い肌で鼻が高く彫りが深い。さっきの親子の親の方だ、多分。驚きで頭に入ってこない英語に目を瞬かせる。
「えっと…帰るところは?」
え、なんて?? リターン? リターンて聞こえた気がする。戻るてどこに? ……あ、もしかして帰るとこ聞いてるの?
「……分かんナイ…?」
とりあえず首を傾げて置くけれど、回答が正しいのかどうかさえ分からない。何もかも全てが分からない。白昼夢って夢でしょ? なんで私の知らない場所が出てきて、私の分からない言語が出てくるわけ?? いや言語は英語だから分かるけど、聞き取れないから。
「あぁどうしよう、レグ。この子イギリス人じゃないわ。親とはぐれたのかしら」
女の人は困った顔をして後ろを向く。その視線の先にはさっきの子供…と言っても今の私より歳上っぽそうな感じだけれど。
少年は女の人からのパスに呆れたような顔をして、それから私と目を合わせる。
「ママは?」
mam? マムってそのまんまママで良いんだっけ?お母さんが今ここにいるかどうか聞いてるのなら、答えは否だ。ふるふると首を横に振る。
「…パパは?」
首を横に振る。
「家は? イギリスにありますか?」
ない! 横に振る。
うーん、と少し考えたあと彼は根本的な質問をして来る。
「英語、分かりますか?」
「……チョット?」
今更かい。
ここまで聞いといて今更か。
「多分旅行に来たんだと思うんですけど、それ以上は分かりませんね」
「うーん…あ、マシューに通訳して貰えば良いんじゃないかしら。ほら、あの人今日家にいたし」
「でも家族が探しに来たら行き違いになってしまいますよ」
「じゃあ私今から呼んでくるから、レグはその子の近くにいてあげて」
ニコニコと笑顔でこちらに手を振って彼女は公園から出て行った。
え、何急に…ていうか息子さん置いてってますよ。
恐る恐る立ち尽くす少年に目を向けると、さっきよりも呆れた顔を濃くして深いため息を吐いていた。
なんか……お疲れ様です。
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