また、来世で 《前》
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巴のお家に泊まりに来ている。
「さて、行こうかたまちゃん!」
「…朝からテンション高いな…」
つまりこうなる。
準備万端でベットに腰掛けていた私へ振り向いた巴の笑顔の眩しいこと。そんなに学校に行くのが楽しみなのか。
リビングにいる巴の両親に声をかけて靴を履く。
「あ、おっはよぉー!!」
はやくーなんて私の方を見て口をとがらせていた巴が外を見て大きく手を振った。
「おう、はよ」
「おはよう、青柳さん」
「珍しいな、お前がこんな早く家から出てくるなんて」
「ふっふーん。今日のあたしは一味違うのだ」
「はぁ?」
誰か、なんてもう聞かずとも分かる。もう声とノリを聞いただけで分かる。
「巴は一味も違わないでしょうが」
「あ、たまちゃん遅い!」
後ろから声をかけると、すぐさま顔ごと視線がこちらを向く。直ぐに視線を離される黒崎くんにちょっとだけ優越感。
そんな彼に視線を向けるとパッチリと目が合った。お互いそんなつもりなかったから、驚いて目を見開く。
「環が巴の家にいるの、珍しいな」
「まぁ、巴の家に泊まるのは初めてだからね…」
黒崎くんと小島くんにそれぞれ挨拶しながら学校へ向かって歩き出す。
「あぁ、確かに! あたしは良くたまちゃんちに泊まりに行くけど、たまちゃんは来ないもんね」
なんで? というように顔を覗き込んでくる巴にため息を1つ。
「だって巴の家、学校から遠いじゃん」
ぱちり、予想外の答えに巴と黒崎くんが目を瞬く。小島くんは「へぇー」なんて相槌をしながらニコニコと笑っていた。
そう言えば小島くん、なんで遠回りなのに黒崎くんの家に迎えに来てるんだろう。友達だからなのかな。
「たまちゃんち学校から近いもんね。寝坊しても遅刻しないし、良いなぁ」
「起きるのが遅ければ結局同じだよ。巴はどこにいても遅刻ギリギリだと思うな」
「酷い!!」
「正論は時に人を傷付けるよ、環さん」
「え、それもしかしてたまちゃんの味方してる!?」
「……もしかしなくてもそうだろ」
ワンテンポ遅れて後ろを歩いていた黒崎くんが暖かい目をしていた気がしたけど、次の瞬間には酷く呆れた顔をしていた。なんか、すっごくレアな顔を見た気がするんだけれど……。
「私後ろ乗るから自転車買いなよ」
「えぇ…今更いらない……」
「今更って、高校入ったばっかだけど巴は何回高校生を繰り返してるの」
「1回目ですぅ」
嘘つけ2回目だろ。等とはお互い口が裂けても言えないのでお互い苦笑を零す。
「あ……」
「なに? 忘れ物?」
巴の小さな声に後ろを振り向くと巴は地面にうずくまっており、黒崎くんがそれを覗き込んでいた。転んだか怪我をしたのかと近づくと、巴の手のひらの上には白とピンクと茶色の、結び目じゃない所が切れたミサンガがあった。
「それ、ミサンガか?」
「良かったね、青柳さん。ミサンガが自然に切れたってことは、願いが叶うよ」
「へぇーそうなのか。良かったな」
同じく巴の手元を覗いた小島くんに黒崎くんが反応する。祝福ムードの男性陣の中、巴は口を開かずミサンガを握りしめた。
「……そんなの、迷信だよ。叶うわけないでしょ」
吐き出した言葉は私の願望か巴の願いか。
いずれにしても、2人とも叶って欲しくない願い事である事は確かで、巴は小さく頷いて立ち上がった。
小島くんと黒崎くんも、私たちの間の重い空気で察したのか、それ以上触れずに歩き出す。
「あ、そういえば、2人は期末どうだった?」
「え、もう結果貼りだされてたっけ?」
「ううん、手応え」
小島くんがふと思い出したように問いかけてくる。
そういえば今日はこの間やった期末試験の結果が貼り出される日だった気がする。
「あー駄目駄目、たまちゃんはテストの点数とかそういうの興味ないもん」
「決めつけるのは良くないと思うけど」
「え、でも本当の話でしょ?」
当たり前のように返事をする巴にぐうの音も出ない。
くそぅムカつく。
「環って確か頭良かったよな」
「お? お? たまちゃんの事気になる? ライバル視してる? へへー中間の結果だけど教えてあげよーか?」
ニヤニヤとやらしい笑みを浮かべた巴が黒崎くんに詰め寄る。
ていうかさ……
「なんで私のことなのに巴がそんな偉そうにすんのさ」
「え? たまちゃんのことはあたしのこと、あたしのことはたまちゃんのことだからでしょ? 当たり前じゃん」
それがあまりにも当然のように言い放たれて一瞬惚けてしまった。え、なに? 私巴と一心同体だったの? まぁ似たような秘密共有してるしそんな感じの意識はあるけど。
「お前ホントそうやって環に依存するの良くねぇと思うぞ」
「依存してないよ、6位のたまちゃんよりも順位低い人」
「あ゙あ゙!?」
「喧嘩売らないの」
「一護もいつもの事なんだから買わないでよ」
「いつもとか言うな!!」
そうして呑気に登校していた私たちは忘れていたのだ。今日が期末の結果発表の次の日だと言うことを。
あと浅野くんが何故かいないことも(遅刻ギリギリで教室に滑り込んで小島くんにブチギレていた)。