また、来世で 《前》
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風邪をひいていた。
この間、早退して自転車に跳ねられた日から数日、もう熱はないけれど、医者からのGoサインが出ないから家で缶詰である。
しかもそのあまりに過保護な医者の態度は、その息子である黒崎くんからの進言であるらしくて、なんというか本当に巴のこと大事に思ってるんだなぁなんて思ってしまう。
ベットに寝転んだまま窓の外を見上げた。
先程まで巴からのメールを知らせる着信音が鳴っていた携帯も、授業が始まっているからか静かだ。あの子は意外と真面目だから、授業中に携帯を弄ったりしないのだろう。
まぁ落書き位はしているのかもしれないけれど。
それにしても、この学校のある時間に休んでいる背徳感……良い……。罪悪感で押しつぶされそうだけど……。
はぁぁ、とため息を吐いて流石に寝ないと、と窓から目を逸らそうとした時だった。
「あ」
「……え」
窓のすぐ外を随分と見知った顔が通り過ぎて行ったように見える。しかも目が合って「あ」と言われた。何だアイツ。
そもそもここは2階なんだぞ。八尺様でなければ部屋の中を覗くことはできないはずだ。
いや待てもしかして黒崎くんは八尺様だった可能性が?
「……いや、寝よう」
駄目だ。きっと退屈で頭がおかしくなってるんだ。そう思い目を瞑ればすぐさま体は闇の中に落ちていく。
「って事があってさ、いやぁ夢で良かったよ」
「夢じゃないよそれ」
「そうそう、夢…え…」
数日後、やっとこさGoサインが出て久しぶりに巴と学校でお昼ご飯を食べていた。
そんな時に退屈すぎて幻覚を見た時のことを話したら、巴がなんでもないような調子でそう告げた。あまりにも自然すぎて思わず聞き流す所だった。
「え…何、黒崎くん本当は八尺様だったの…?」
「いやそっちじゃなくて。あれ、もしかして頭まで打ってたの?」
本気で心配している顔で頬に手を当ててくる巴にムッとする。その手を叩き落として睨みつけた。
「馬鹿にしてる?」
「いや純粋に心配してるんじゃん」
いつものような声色で、でももっと心配そうに告げる彼女にこちらの方が困惑する。
いやいや、どうした…。
「やっぱり大病院でちゃんと見てもらった方が良いんじゃないの? だって一護が2階の高さまでジャンプするってコンに決まってるでしょ」
目を細め眉を寄せた顔に思わずキョトンとした顔を向けてしまった。
そうだ。完全に忘れていたがそんな事もあった。
その事件があって、何やかんやあってあのぬいぐるみに入れたのがコンの始まりだった。そしてその次の日が黒崎母のお墓参り、だったはずだ。
つまり私がすっかり寝込んでいる間にメインストーリーは流れて行ったという事で、お墓参りの日は2人も私もいなくて巴は1人だったという事か…。
「そっか、ごめん忘れてた」
「ホントだよ、一護もいないしルキアちゃんもいないし…ま、織姫達と一緒にいたから良いけどね」
ぶす、と頬を膨らませた彼女は続けて美術の「将来の私」という課題の話をしてくれた。
井上さんはロボットになるらしいとか言ってて、そんな事もあったなぁなんて目を細める。きっと私に予備知識がなかったら「何言ってんだコイツ」くらい思ったんだろうな。
「…いよいよ、議題を先送りにしている場合では無くなってきたのかな…」
「…へ?」
ボソリと呟いた言葉に巴は、有沢さんの将来を描いた絵の話の途中で片腕を掲げたポーズのまま固まった。
間抜け面。
そう呆れて巴の方に身を乗り出して声を押し殺す。
「もうすぐ、黒崎くんと石田くんの勝負が始まる」
「…そっか、じゃあ死神代行編ももう終わりに近づいてるんだね?」
「そういう事になるね」
私に合わせて声を押し殺しながら身を乗り出した巴は目を伏せる。朽木さんが現世を離れるのが近いから、そういう顔をするのだろう。
「それよりも先に、ブラ霊と疑似餌がある。私達が話し合わなきゃいけないのは疑似餌の時の対応だよ」
「と言っても、具体的にいつか、なんて覚えてないでしょ」
まぁ、それはそうだけど…と口の中で転がした言葉は吐き出さない。石田くんがすぐ横を通り過ぎて2人で口を噤む。
「明日、1時にうち集合ね」
「…分かった」
手早く約束を交わしその話はそこで打ち切った。
ちなみにその日帰ったら新作のゲームが届いており、ほぼ徹夜みたいな形でやっていた私が寝坊して、その話を聞いた巴がやりたいと言い出した為、疑似餌を撒かれた時の対応の話は全く出来なかった事を報告しておこうと思う。