また、来世で 《前》
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「お、おはよう……」
目が閉じそうになるのを何とか堪えて教室に滑り込む。今日は何だか体が重い。
何だか……っていうか、数日前黒崎くん達と会った日から体調悪いから普通に風邪な気がする。
「ちょ、え、たまちゃん起きてる?」
「うむ、辛うじて目は開いてる。おはよう」
「お、おはよう……でも今日はさすがに帰った方が良いと思うんだけど……」
「オヤスミ」
最短距離で自分の席に着いて、机に突っ伏す。大丈夫大丈夫寝てれば治るから。
「いや、家で寝なよ……先生には言っとくからさ……」
突っ伏した私に合わせて机の前にしゃがみ込んだ巴と目が合う。……確かに、今日は無理して授業出る必要はなかったかなぁ……。
バン!!
「チャドは!?」
突然大きな音をたてて教室のドアが開く。お互い肩を跳ねさせながら音のした方を振り向くと、黒崎くんが小島くんに詰め寄っていた。
なんか焦ってるらしいのは分かるけど……。
「どうしたんだろうね?」
「……さぁ」
なんか頭痛もしてきた気がして考えるのをやめた。
「よォーし! みんな着席ィ!!」
先生が教室に入ってくるのと入れ替わりに黒崎くんは飛び出していく。ホントなんの為に学校来たんだろうあの人。
「あ、せんせーたまちゃん体調悪いみたいなんで、保健室連れてきまーす」
「おう、お大事になー」
ぺしーと手を挙げた巴と机に突っ伏す私をチラリと見た先生は、軽く手を振る。完全にもう早退の流れになっているけれど、私まだ早退すると決まった訳じゃ――
「んじゃ早退だね。担任には言っとくよ」
気をつけて帰んな。
そう保健室を追い出されたのはもう数分前の話だ。
家への道を体を引きずりながら歩く。体が重い。なんか頭痛もしてきた。なんならさっきから熱も上がってる気がする。
病は気から、だるいしんどいって思っているから余計にしんどいのかもしれないけど、思ってしまうのだから仕方ない。
「オネエチャン!!」
ついに幻聴まで聞こえ始めたようだ。
鳥……インコのような声が誰かを呼ぶような、そんな声が聞こえる。本格的に早く帰らなきゃいけない気がしてきた。
「オネエチャン! ハイイロ ノ セイフク ヲ キテル オネエチャン!!」
嫌に具体的な名指しをして来る。
もしかして、私だったりする? だってこの時間制服を着ててそとを出歩く人、いなくない?
辺りを見回すと、すぐ近くの塀の上に鳥かごが置いてあって、その鳥かごのインコが私を見ていた。
「オジチャン ヲ タスケテ!!」
オジチャン……?
インコの言うことは分からないけれど、とりあえずインコが良く見えないから塀から下ろす。背伸びしてギリギリ届く高さでよかった。
「え、えっと……お、オジチャンって……?」
「アッチ ニ オジチャン ガ イル!! タスケテ!! オジチャン シンジャウ!!」
「た、助けるって言っても、け、警察に電話すればいいの?」
鳥かごを片手で抱えて携帯を取り出そうとしたその時、ガシャンと鳥かごに衝撃を感じる。何事かと目を向ければ、そこには白黒で頭の大きな謎の生物がいた。赤子と同じくらいの大きさのよく分からない生物に鳥肌が立つ。
脳が理解を拒んだ。
「な、なに!? 離して! カゴから離れてよっ!!」
混乱して振り払ったそれは地面に落ち、それが離れている間にと私はさっきインコがオジチャンがいると言った方へ走り出した。
しかしそれもほんの数歩だけで後ろから何かをぶつけられた衝撃に思わず立ち止まる。背後の足元には親指より大きいくらいのナメクジが何匹も落ちていて、さっきまでこんなのいただろうかと記憶を遡る。
そして次の瞬間には――。
「あぐっ」
「オネエチャン!!」
背後で何かが破裂する衝撃に、鳥かごを抱えたまま地面に倒れ込んだ。後頭部から背中一帯が熱い。ついでに頭も体も重い。インコが私を呼ぶ声がする。
どうしよう、視界が霞む。このまま私、死ぬのかな。
「環…… 環!!」
乱暴に体を揺すられてかすかに意識が浮上する。全身が酷く痛んで、そして重い。腕の1本さえも動かせそうにない。
そろりと目だけで見上げれば、佐渡くんと黒崎くんが目に入る。黒崎くんはいつもの制服姿で、死神姿じゃない。あぁ、もしかして私、原作に巻き込まれた?
「よし! 意識はあるな!? チャド、環とソイツは頼んだ!俺はアイツのとこに行く!!」
「あぁ、すぐに追いつく!!」
はて、何の話だろうか。
「オネエチャン! ダイジョウブ?」
抱えたままだった鳥かごの中からインコが顔を覗き込む。大丈夫かって……大丈夫に見えるのだろうか。
大丈夫じゃないって答えようとして、でも声が出なくて、目を閉じた。目を閉じるだけでだいぶ楽になるしあわよくば寝たい。
「環!? くそっ」
だからそんなに私のことを揺らさないで。