電脳少年彰人の話
”akito 0.0.0”が作られる前の話
――懐かしいメモが出てきたので、ここに書き起こそうと思う。
僕が今から話すのはとある”電脳少年”の話だ。しかも、世界にたった一つしかないものだ。
名前はakito.0.0.0.。
依頼人曰く亡くなった友人を模倣した電脳少年を作ってほしいという話だ。
依頼人も、亡くなったという件の友人も著名人だから名前は伏せておく。
彼の特徴といったらなんといっても、口調だろう。
ぶっきらぼうな物言いの中に滲んだ優しさ、とでも言ったらいいのだろうか。
そのようなものを感じた。
それを再現するのはとても苦労した。今までのどんな依頼と比較してもかなりあれには時間をかけたように感じる。
合成音声――かれの音声にも苦労した。
イントネーションからひとつひとつ強調しなくてはならないのだから。
僕は調教にはどうも疎いようで、知り合いの調教師にイントネーションも含めて調教してほしい、と頼んだ。
無理なお願いというのはわかっているし、件の調教師も多忙だというのはわかっていた。
が、快諾してくれた。
納品された音声を聞いたときの衝撃はすごかった。
違和感はある。
けれど、気づけばそれすら懐かしく感じた。そんな経緯を経て、完成したのがakito.0.0.0.だった。
依頼人と初めての顔合わせのとき。
心臓がバクバクと音を立ててうるさかった。
緊張で額だったり手だったりに変な汗が滲んでいた。
T氏が彼の名前を呼んだ。
「彰人」
「あ?どうした?」
T氏は静かに涙を流した。
ぽろぽろと。僕はその表現はどうしても小説チックであまり好きではないのだけれど、まさにその表現がぴったりだと感じた。
依頼人はありがとうございます。まさかこんなに彰人の状態に近いものができるとは予想外でした。と、礼を述べて、akito.0.0.0.を連れて帰っていった。
それが、akito.0.0.0.ができるまでの道のりだ。
***
said: vivid bad squad 青柳冬弥
とあるプログラマーに依頼して亡くなった相棒――彰人を作ってもらった。
かなり値は張ったが、後悔はしていない。
小豆沢も白石もとても喜んでいた。
なにより、彰人とまた生活できるのが、嬉しいのだ。
――違和感は、ある日突然やってきた
「う〜〜ん…」
「そんなに唸ってどうしたんだ?白石」
「ここが分からないんだよね〜」
そう言い、白石が見せてきたのはおそらく大学の課題であろう問題が数問書かれたプリントだった。
そして指先はそのうちの一つを指していた。
俺のスマホ上で、しばらく画面を見つめていた彰人が、ぽつりと呟くように言った――
「18」
「えっ?」
白石はきょとん、とした顔で彰人を見、俺を見た。
そして、ハッとしたようにおそらく模範解答であろうプリントを出した。
顔を上げた白石の顔は真っ青で、それでいて、悲しそうだった。
考えうる最悪の状態――そうだ、彰人はコンピュータだ。
オリジナルとは違う特性もある可能性もあるわけで。
「あっ、てる」
途切れ途切れになりながらも、白石は言った。
彰人は苦手だったものを、ものの数秒で解く彼は矢張りコンピュータなんだな、と思い知り少し寂しかった。
彰人は白石の表情を見てなにかを感じたのか、言った。
「あー…すまねぇ、”オリジナル”の方は苦手だったのか、」
それは、寂しそうで悲しそうで、それでいて綺麗だった。
――それ以来彰人は計算をすることはなかった。
――懐かしいメモが出てきたので、ここに書き起こそうと思う。
僕が今から話すのはとある”電脳少年”の話だ。しかも、世界にたった一つしかないものだ。
名前はakito.0.0.0.。
依頼人曰く亡くなった友人を模倣した電脳少年を作ってほしいという話だ。
依頼人も、亡くなったという件の友人も著名人だから名前は伏せておく。
彼の特徴といったらなんといっても、口調だろう。
ぶっきらぼうな物言いの中に滲んだ優しさ、とでも言ったらいいのだろうか。
そのようなものを感じた。
それを再現するのはとても苦労した。今までのどんな依頼と比較してもかなりあれには時間をかけたように感じる。
合成音声――かれの音声にも苦労した。
イントネーションからひとつひとつ強調しなくてはならないのだから。
僕は調教にはどうも疎いようで、知り合いの調教師にイントネーションも含めて調教してほしい、と頼んだ。
無理なお願いというのはわかっているし、件の調教師も多忙だというのはわかっていた。
が、快諾してくれた。
納品された音声を聞いたときの衝撃はすごかった。
違和感はある。
けれど、気づけばそれすら懐かしく感じた。そんな経緯を経て、完成したのがakito.0.0.0.だった。
依頼人と初めての顔合わせのとき。
心臓がバクバクと音を立ててうるさかった。
緊張で額だったり手だったりに変な汗が滲んでいた。
T氏が彼の名前を呼んだ。
「彰人」
「あ?どうした?」
T氏は静かに涙を流した。
ぽろぽろと。僕はその表現はどうしても小説チックであまり好きではないのだけれど、まさにその表現がぴったりだと感じた。
依頼人はありがとうございます。まさかこんなに彰人の状態に近いものができるとは予想外でした。と、礼を述べて、akito.0.0.0.を連れて帰っていった。
それが、akito.0.0.0.ができるまでの道のりだ。
***
said: vivid bad squad 青柳冬弥
とあるプログラマーに依頼して亡くなった相棒――彰人を作ってもらった。
かなり値は張ったが、後悔はしていない。
小豆沢も白石もとても喜んでいた。
なにより、彰人とまた生活できるのが、嬉しいのだ。
――違和感は、ある日突然やってきた
「う〜〜ん…」
「そんなに唸ってどうしたんだ?白石」
「ここが分からないんだよね〜」
そう言い、白石が見せてきたのはおそらく大学の課題であろう問題が数問書かれたプリントだった。
そして指先はそのうちの一つを指していた。
俺のスマホ上で、しばらく画面を見つめていた彰人が、ぽつりと呟くように言った――
「18」
「えっ?」
白石はきょとん、とした顔で彰人を見、俺を見た。
そして、ハッとしたようにおそらく模範解答であろうプリントを出した。
顔を上げた白石の顔は真っ青で、それでいて、悲しそうだった。
考えうる最悪の状態――そうだ、彰人はコンピュータだ。
オリジナルとは違う特性もある可能性もあるわけで。
「あっ、てる」
途切れ途切れになりながらも、白石は言った。
彰人は苦手だったものを、ものの数秒で解く彼は矢張りコンピュータなんだな、と思い知り少し寂しかった。
彰人は白石の表情を見てなにかを感じたのか、言った。
「あー…すまねぇ、”オリジナル”の方は苦手だったのか、」
それは、寂しそうで悲しそうで、それでいて綺麗だった。
――それ以来彰人は計算をすることはなかった。
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