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傷だらけの幸せ

楓の家の床に倒れ込んだまま、澪はぼんやりと天井を見上げていた。

全身が痛む。

息をするたびに、脇腹がずきずきと疼く。頬も腫れ上がっているのがわかる。

——前は、もっと優しかったのにな。

***

「澪、寒くね?」

冬の帰り道、澪が小さく震えているのに気づいて、楓はそっと自分のマフラーを巻いてくれた。

「いいよ、楓が寒くなっちゃうじゃん」

「バカ、お前が風邪ひいたらめんどーだろ」

めんどー、と言いながら、楓は優しく笑っていた。

「ほら、手貸せ」

そう言って、当たり前のようにポケットの中で手を握ってくれた。

その手は温かくて、大きくて——ずっと離れなければいいのに、と思った。

***

「なぁ澪、こっち来いよ」

楓の部屋に遊びに行ったとき、ベッドの上で澪をぽんぽんと手招きした。

「え、なんで?」

「いいから」

「……やだ」

「は?」

「だって、楓、絶対抱き枕にして離してくれないもん」

「はは、バレた?」

「バレバレ」

澪が笑うと、楓は少しむくれたような顔をしてから、いたずらっぽく笑った。

「別にいいだろ。俺が、お前を離したくねぇんだから」

そんな風に言われると、胸がぎゅっとなった。

——私も、離れたくないよ。

あのころは、ただ幸せだった。

ずっとこうしていたいと、本気で思ってた。

***

だけど。

「……お前が悪いんだよ」

床に転がったままの澪を見下ろしながら、楓は冷たく言い放った。

その表情には、もう昔の面影はなかった。

どこにも優しさなんて、残っていなかった。

澪の目から、涙が一筋流れ落ちる。

「……なんで、こうなっちゃったの……?」

かすれた声が、夜の静けさに溶けていった。
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