海を仰いで
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あれから月日が経つのは本当に、本当に…
…長かった、そう、途轍もなく長かったのだ。
普段赤ちゃんは寝るのが仕事、とはよく言ったが私は何の因果か人生二度目の赤ちゃんを体験していて意識までハッキリとしている。その為にこれほどまでに時間が長く何も出来ないこの手足と身体にイラつくことはなかった。
ただイラつくのではない。自身で当たり前のように出来ていたことが何一つ出来ず、衣食住全てを両親に世話してもらっているのだ。ミルクを飲ませてもらうのもその後にげっぷをさせることも。一番辛かったのはそう、オムツだ。中身は花の女子高生だ、恥ずかしくないわけがない。
しかしそうは言っても一向に寝返りすらうてない産まれて数日の私にはその何もかもをしてもらう外ないのだ。恐らく私の意識がハッキリとしているからこんなにも悩まされるのだろう、と頭が痛くなった。どうせなら記憶がなければ良かったかもしれない、と思いつつも生前の家族の事を忘れたくなどなかったので受け入れるしかない。
そしてなんと言っても両親だ。正直自分でも驚くほど綺麗で外国人のようだ。いや、ほんと前世どんな徳を積んだのか、魔王の手から世界でも救ったのか、とでも言いたくなるほど整っていた。
母親はナターシャというらしい。薄い金髪に青い瞳だ。ここまでは理解出来る。とても綺麗な人だな、モデルかな?と思える。
問題は父、ダリルだ。髪も瞳の色も真っ赤なのだ。お前はゲームの中の火のモンスターか、と言わんばかりに燃え盛る赤色でどこか現実ばなれした見た目をしていたのだ。
その後、産まれて間もなく言われたが、”打合せ通り母に似た顔立ちで瞳は父に似てる”と言うことだ。ハッキリ言って赤ちゃんに”自分たちに似てほしい”と思う気持ちはわかるが、どれだけ打合せしてもそうなるとは限らないのに既に断定した言い方なのが気になる。
まぁそうは言っても今からどうなるって事でもないので数分考えていたが頭の片隅に追いやった。恐らく今考えたところでこの身体では解決しない。もう少し身体の自由が利いてきたらにしよう。
そう思いなおすと今度はまた持て余している時間との戦いが再開される。
(本当にすることないなぁ、寝ようかな…身体が鈍って仕方ない~!!!)
そう思ったか否か、意識とは別に身体はあっという間に眠り落ちていった。
ーーーー
今日は仕事で忙しい父の久しぶりの休みで、母と私の家族三人水入らずでピクニックに行く。
そうこうしている内に私は5歳になった。やっとここまできた、と思うと本当に感慨深い。毎日のおむつ替えに嬉々とする父との入浴タイム、本当によく耐えた私…。
父との入浴は言葉が話せるようになってすぐに拒否させていただいた。すまない、精神衛生上よろしくないだけでお父さんのこと嫌いじゃないよ…と思いながらも幼子である私よりも今にもこの世が終わりそうな顔で父に泣かれた。
「もう1人で入れるよ!からだ洗えるもん!」と言ったらどこぞの古き良き妻のように「背中だけでも流させて…」と泣きつかれて笑ったが丁重にお断りさせていただいた。思わず母も苦笑いだ。
そんなこんなで日々すくすくと育ち驚くほどにお人形さんのような5歳の少女が出来上がったのだ。本当にこれが私なのか、と頬を何度も摘まんだが痛みがあるので現実と認めざる負えない。
そう考えながら両親の寝室を開ける。別室からは朝から張り切ってお弁当のサンドイッチを作る母の鼻歌が聞こえる。私はまだ眠っている父を起こすため近づいた。
「おとうさんおきてー!ピクニックいっちゃうよー!」
「んー……、あと5分、いや3分…」
「(典型的な駄々を捏ねる30歳…)おきてくれないの?…おとうさんなんかきらい…」
「はいっ、起きました!!起きたから嫌いにならないでエミリア~!!」
むぎゅっと抱きかかえられる。ほんのり伸びた髭が痛いが私にベッタベタに甘い父にはこうするのが一番有効なのだ。大人しくすぐ起きたのだから少しくらい我慢してやろう、と私が大人な気持ちでいる。
「あなたー、起きたなら顔洗ってらっしゃいな。ほらエミリア、一緒にサンドイッチ作りましょ。」と母の声が聞こえる。
「うん、つくる!」
父の返事を聞かずにするりと腕を潜り抜けて母の元へ走る。後ろから「あぁ~俺の天使が…」などと聞こえるが無視だ、私はもう職務を全うした。
「おてて洗ったらこの玉子にマヨネーズ入れて混ぜてくれる?」
「はーい!おかあさんのタマゴサンドすきー」
「あら嬉しい。」
ふふっと笑いあう、キッチンで母と子が笑いあうよくある仲睦まじい風景だ。そこへ顔を洗って髭も剃り、いつものようなキリリとした顔つきになった父が着替えも終えてリビングに入ってきた。
「おはようナターシャ。起こしてくれてありがとねエミリア。」
「おはよう、あなた。昨日も帰り遅かったけど大丈夫?無理して出かけなくてもいいのよ?」
「何を言ってるんだ!せっかくの休みに愛しい妻と娘を笑顔にさせたいと思うのはいけないことかな?俺の事は気にしなくて大丈夫だよ、いつもありがとうね。」
「ならいいのだけど…。エミリアも楽しみにしてたものね、早くサンドイッチ作っちゃいましょうね」
「うん!おとうさんいっつもいないからおかあさんさびしそうなの。だから今日みんなでおでかけできるのうれしい!」
玉子とマヨネーズが入ったボウルを必死に混ぜながら言うと横から「やだ、この子ったら」と「ナターシャ、エミリア……」と2人の感極まった声が聞こえてくる。
我ながら良い子供だと思う。何度も言うようだが私は両親を亡くしているので親孝行らしいことが何一つ出来なかった。生まれ変わり、新たにこの2人のもとに産まれ、自我まで既にハッキリとしているのだから毎日何かしら返せたらと思う。
早々に混ぜ終えたボウルを母に託してソファでコーヒーを飲みながらテレビのニュースを見ている父の横に座る。
『依然としてブルーコスモスの小規模テロなど事件が後を絶ちません。また先週の事件での負傷者もー』
アナウンサーが直近であったニュースを読み上げていくのを父は真面目な顔で聞いている。
「…なんでみんな同じ人間だと分かり合えないのかねぇ、ナチュラルもコーディネーターも…」
父がコーヒーを飲みながら言う。
この世界は当初感じたように私が住んでいた日本とは違う。生物学等、化学がとても進んでいて、遺伝子情報を操作し、人間の身体能力向上や頭脳までも強化し、見た目も髪色や瞳の色だけでなく肌の色や将来の身長までも遺伝子に情報として組み込み、再度母体へ戻す。
そうして産まれた人間をこの世界ではコーディネーターと呼び、遺伝子操作されてない人間をナチュラルと呼ぶ。私の両親、そしてその娘である私もコーディネーターである。
一般的な赤子よりも何事も上達するのが速かった私は前世でのアドバンテージがあったからだと思っていたが自身がコーディネーターだからであるとすぐ理解した。それほどまでにこのコーディネーターとういうのは恐ろしいほどに人間の全能力値が高いのだ。
今のニュースにあったブルーコスモスというのはナチュラルの中でもコーディネーターへの対抗意識が強く過激な集団のことだ。ザックリいうとコーディネーター反対組織である。
言わんとすることはわかるが先ほども取り上げられていたようにテロを起こしてコーディネーター達を殺すのは間違っていると思う。
政治だの難しいことはわからないが少なくとも父が零した言葉の通り、能力に差があろうとも同じ人間であることに変わりはないのだからお互いを理解し、共存することは出来ないのだろうか、と思う。年端もゆかない子供の綺麗ごとかもしれないが。
「さ、おまたせ。準備出来たから行きましょうか。」
「そうか、公園でたくさん遊ぼうなエミリア」
「うん、おにごっこしたい!おとうさん鬼ね!」
「最初から決まってるのか!?もちろんやるけど!」
「ふふ、じゃあ私は荷物番でもしてるわね。」
そういって父の運転するエレカに荷物を持って乗り込んだ。
ーーー
「あー空気がいいなぁ。こうしてのんびり出来るのはいつぶりだろ…」
「いつもありがとう、きちんと休みを取らないと身体壊しますよ」
「なーに、そんな柔なつくりはしてないよ。それに2人を残してなんて死ねないからね!」
「おとうさーん、やっぱかくれんぼしよ!かくれるから10かぞえてねー!」
「はーい、ちゃんと隠れないとすぐ見つけるからな~」
「みつかんないもん!」
公園に着くなりピクニックシートを引いて母がそこに腰を下ろす。
私は気が変わりかくれんぼにすると告げ一目散に走り隠れる場所を探した。
遠くから父のカウントが聞こえる。急がなきゃ!とあちらこちらを見回す。すると両親からそう離れてはいない位置に小さな小屋があった。恐らく公園内で使う掃除用具か何かが仕舞ってあるのだろう。
近づきドアを引くと簡単に開いてしまった。管理が雑だなぁ、と思いつつここなら両親からそう遠くもないし窓が付いていて父が右往左往するところが良く見える。私を目線で追っていた母と目が合い、しー、と口に指を当てた。母も同じように笑いながら返してくれた。
「きゅーーう、じゅーう!…よし探すからな~!すぐ見つけられたら今日こそは一緒にお風呂入ってもらうからな~!」
なんと悍ましいことを言うんだあの人は!!わずかに聞こえてくる声から顔をゆがませる。
しかしまさかこの小屋に入ってると思わないであろうという思惑通り父は近くの草陰を覗き始めた。私も母もそのあまりにも必死な様にクスクスと笑った。
「どこだ~?ナターシャ教えてくれよ、俺とエミリアのために…!」
「そうねぇ、私はエミリアの味方だから教えられないわねぇ、ふふっ」
「そんなぁ…」
なんて2人が会話しているのを窓からひょっこり見ていると両親の後方からジョギングにしては服装が私服すぎる、といった印象の男性が走ってきた。何故だか父達の方へ向かっているように見えるが知り合いなんだろうか?そう思った次の瞬間その男性が叫んだ。
「死ねぇコーディネータァァァ!!青き清浄なる世界のためにィ!!!!」
両親も目を丸くして振り返ったが遅かった。一瞬にして周囲が光と物凄い爆発音が響き渡った。思わず腕で顔を覆い、目を閉じたがハッとはりもう一度窓の外を見ると焦げた草木の横に少し黒く焦げたような塊が3つ転がっていた。瞬時に分かった。
「お父さん、お母さん!!!!」
急いでその場へ駆けつける。異様な臭いと恐らく男性であっただろう身体の一部が爆散し落ちている中に母を庇うように抱く父と共に倒れる母の変わり果てた姿があった。
「うそ、なんで、こんなこと…お母さん、お父さん…!!」
涙が止まらない。恐る恐る近寄ると小さく呻く声が聞こえた。
「お母さん!!だいじょうぶ!?急いで救急車よぶからね!死んじゃやだよ…!」
「エミリア…まだ何もあ、なたに…教えてあげられなくて、ごめんなさいね…」
「なんでそんなこと言うの!やめてよ、元気になってよぉ…!!」
「…また、私がこの人と出会えたら…その時はまた貴女が子供として産まれてきてきてほしいなぁ…」
「お母さん!!お母さん…!!!」
「…カハッ、ごめ…なさいねエミリア…、ありがとう…大好き、よ…」
「やだ、うそ、死なないで、お母さん、やだ、お母さん…!!」
私の頬に寄せた母の手が滑り落ち、母は瞼を閉じた。
「いやぁぁぁぁーーーー!!!!!」
私の人生2度目、両親を亡くした。なんて世界は残酷なのだろうか。
ーーー
気付けば私は保護されてどこかの一室にいた。最初はZ.A.F.T軍の人に事情聴取を受けたが5歳とは思えないほどスルスルと答える事が出来た。あの光景を思い出すのはあまりにも酷なことだと大人たちは必要最低限の事だけを私に訪ねた後、身寄りが決まるまで施設で預かることになったようだ。
翌日すぐにとある一行が施設に訪れた。
「お前はあの子と話してなさい。」
「はい、お父様。」
簡単に会話を済ませた後、男の子は私の元へ来た。連れの男性は職員となにやら私を見ながら話している。
「こ、こんにちは。俺アスランって言うんだ。君の名前は…?」
「…エミリア。」
「あの…それは何を読んでいるんだい?」
「この部屋に合った絵本。読みたいならどうぞ…」
「あ、そういう訳じゃないんだけど…一緒に読んでもいい?」
「…うん、いいよ」
断る理由もなく2人で読みだす。読みながらも先ほどの男性と職員の会話に耳を傾ける。
「彼女の様子は?」
「会話も出来ますし何が食べたいかとか聞いてもきちんと答えてくれますね。ですがやはり事件のせいか気落ちして食欲はあまりないようです。その他絵本を読みますがそれも棚の端から読んでるようで…。」
「端から、と言うと?」
「読みたいものを読むというよりも事件の事を思い出さないように、内容は二の次で読みふけって気を紛らわしているのではないかと思います…。」
「そうか…。」
男性は少し距離が空いた先で話した通り絵本を読むエミリア達を見た。職員も心配そうに見つめる。
「ねぇエミリア、この子たち可哀想だね…友達と居たいのに反対されちゃうなんて…。」
唐突に話しかけられて意識を戻すとアスランと名乗った男の子が眉尻を下げて絵本を見ていた。
「…そうだね、でも仕方ないんだよ…一緒に居たくてもお父さんがダメって言ってるんだもん。」
絵本の内容は2人で遊ぶ男の子たちの話だ。
その男の子たちはとても仲が良かったが親同士の仲が悪くなってしまい、交友を反対されてしまったのだ。そしてそのまま友達は遠くへ引っ越すことに決まったある日、家を抜け出して友達が男の子の部屋の窓越しに家に訪ねてきたのだ。
訪ねてきたその友達は「僕は遠くへ行ってしまうけど君の事をわすれないよ」と小さなぬいぐるみを渡していた。その友達が大事にしていた物だ。
「うん、僕も絶対忘れないよ。だからずっと僕と友達でいてね…!」それを聞き頷くと友達は去って行き、翌日その町からいなくなる。
…という後味は何とも言えない終わり方をする絵本だ。
「…私こんなこと言ってくれる友達なんていないの。…そしてお父さんもお母さんも、いなくなっちゃった…。」
「エミリア…、じゃあ俺が君の友達になるよ。絶対離れたりなんかしない、君をきっと笑わせてみせるよ。」
そう言ったアスランの顔を見ると俺は本気だぞ、といった顔で手を掴んできた。
「…ほんとに?お家遠くなるかもしれないのに?会えないかもしれないんだよ?」
「大丈夫だよ、俺が君のところまで会いに行くから!」
「……ありがとうアスランくん、私とお友達になってくれますか?」
「…もちろん!」
そう言うとぎゅっと手を握って笑いかけてくれた。私もまだどこか引きつる気がする頬で笑い返した。
するといつの間にか横に先ほどの男性が立っていた。一連の話が終わったのだと察した男性はアスランの肩を軽く叩き距離を開けさせて私に話しかけてきた。
「こんにちは、エミリアちゃん。私はパトリック。君のお父さんの仕事仲間で友達だよ。」
「こ、んにちわ…」
少し威厳のある顔にビビり声が上ずる。
「今アスランと話してるのを聞いてしまってね、悪いとは思ったんだが許してくれるかな」
「…うん、平気。パトリックさん謝らないで…?」
「そうか、ありがとう。ではひとつ君に聞こう。今日から私の娘になってくれないか?」
「…私が、パトリックさんの?」
「そうだよ。私が君のお父さんになるんだ。…そうか、アスランとは兄妹になるね。…どうかな?」
「お父様ほんとうですか!」
「で、でも私が行ったら迷惑じゃ…」
アスランと私の言葉を制するようにパトリックが手を翳して止めて言葉を続ける。
「私は君と家族になりたいんだよ。それ以上はないよ。エミリア、私たちの家族になってくれないか?」
まさか今日会ったばかりの人にそんなことを言われると思っていなかったのだがあまりにも無償で、優しく撫でてくれるこの手に私は頷くしかなかった。
「…はいっ!私と家族になってください」
私の言葉にパトリック、アスランどちらも頷き笑いかけてくれた。
あとから聞いた話、自らに何かあった時は妻と娘を頼む、と父がパトリックへ話していたそうだ。何かなんて起きなければ良かったのに、とは思いつつも母と私を愛してくれた父らしいとも思った。
数分後には身支度を整えてザラ邸へ来た。想像以上にデカイ家で一瞬とんでもない家に来てしまったのでは…?と思ったが今更だったので大人しく車の座席に座っていた。
車を降りて建物へ入っていく。廊下を歩いてゆくと一つの部屋にたどり着く。パトリックとアスランが迷わず入っていくので慌てて後を追うようにして部屋へ入る。中へ入ると部屋のベランダから出て植物に水やりをしている女性が見えた。
「あら、おかえりなさい。」
「あぁ、戻った。この後すぐに職務に戻るからこの子を頼む。」
そういうと私の肩をそっと押してくれた。自己紹介をしろ、ということだろうと察してすぐ背筋を伸ばす。
「き、今日からお世話になります、エミリアです!おねがいします…!」よぉく頭を下げると女性が少し間を開けたのち吹き出した。あれ、と思ってチラッと顔を女性へ向けると女性と目が合い、優しく笑いかけてくれた。
「話は聞いてます。私はレノア。パトリックの妻でアスランの母よ。よろしくねエミリアちゃん。」
ふわりとした表情で「そんなに畏まらなくていいのよ、もうここは貴女の家で私は貴女の母なんだもの。」と笑いかけてくれた。アスランはお母さん似なんだなぁ、なんて思いながらもつい口からは「よろしくお願いします!」なんてまた堅苦しい言葉が出てしまい、今度はアスランにまで笑われてしまった。
ーーー
1年が過ぎ新たな家族にもこのデカイ家にも使用人にも慣れた頃、まだ日中だというのに仕事で忙しいはずのパトリックが帰ってきた。帰ってきて早々に険しい顔のまま使用人たちに指示し各々散っていく。何事かと私とアスランは突然戻った父の元へ駆け寄る。
「お父様、おかえりなさい。どうされたのですか?」
「おかえりなさい。みんなも慌ててるけど何かあったんですか?」
「そうだ、お前たちも急いで準備しなさい。お前たちも知ってるだろうがブルーコスモスがまたテロを起こした。しかも今回は私を狙っての用意周到なものだ。
私もだがお前たちにも危害が加えられるかもしれない、その前に一旦身を隠すんだ。エミリア、荷物をまとめてきなさい。」
「そんな…!わかりました…エミリア、急いで準備するぞ」
「うん!私レノアさんにも知らせてくるね…!」
そう言うか否か私たちはそれぞれの方向へ散り、殆どは使用人の人がまとめてくれたので時間はかからず数分後には少ない荷物を持ち、夜にはシャトルに乗った。行く先は月面都市コペルニクスだ。
正直前世では宇宙をこうも容易く渡る等在り得ないが時代と技術の進化は凄いなと思う。窓の外に光る星を見た。私たちの住んでいたプラントの周辺に数えきれないほどの星々が広がっていた。
プラントから出るのは初めてだったが不思議と不安はなく、何故かどこか見たことがある、と安心感を胸にシャトルはコペルニクスへと向かっていった。
ー馴れとは早いものでー