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海を仰いで

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ガンダムSEED/DESTINYの夢小説です
イザーク/トリップ夢です。
最初のみ固定の名前がありますが話に支障はありません。
お名前変更時にはSEEDの世界で使用される名前を入力ください。
名前
名字


「おかえり。なぁお菓子ある?コーラも!」

「コーラは聞いてないから買ってないわよ。」

別荘へ戻って早々草むしりしていたラスティが庭から顔を出して出迎えてくれた。「ポテチと一緒ならやっぱコーラがなきゃ始まらないでしょ〜」と生活習慣病まっしぐらな組み合わせを言ってきたがイザークも「それが食えるのはお前が勉強出来てからの話だからな」と袋から取り出して抱え持っていたラスティからお菓子を取り上げる。

「おかえりなさい、2人とも。買い出しありがとうございます。」

「なぁもう昼だし飯にしねーか?俺腹減ったわ。」

ニコルが袋を受け取ってくれ、キッチンへと運ぶとちょうど水を飲んでたディアッカが腹が減ったと申し立ててきた。大きな子供か、と思いながら「はいはい、じゃあ作るからみんな手伝ってよね」と一先ず食材を冷蔵庫へしまっていく。

「本当に沢山買ってきたんだな…」

「何度も帰ると言ったがコイツは話を聞かずにドンドン買い込んだんだ。俺の腕が折れるところだったんだぞ!」

「それでも持ってあげたんでしょ、イザークやっさしー!」

「うるさい!」

買った荷物の量を見て呆れるアスランとイザークを茶化すラスティ。相変わらず仲良いんだか悪いんだか、と思いながらそのラスティへ「お昼ご飯はあなたのリクエストのナポリタンにするよ」というと元気よく「やったー!」と喜ぶ。

本当にまるで子供だな、と思いながら喜ぶラスティへ料理に使う調理器具やお皿を一度洗うように指示する。この別荘が久しぶりに使われたのなら皿なども一度洗っておくべきだし大人数ではキッチンに立てないから役割分担しなければ、と判断したからだ。

アスランにはラスティの洗い物の見張り兼手伝いをお願いしたし、買った食材はニコルとディアッカがしまってくれている。そこで手が空いているので軽く濡らして絞った布巾をイザークに渡して机を拭いてくるように伝えると俺が拭くのか!?と反復して言うので「貴方以外に誰がいるのよ」と言えば他の面々が作業してるのを見て仕方なしとダイニングテーブルを拭きに行った。

エミリア、食材仕舞い終わったぜ」

「ありがとう!2人の洗い物が終わったら作るからそれまで少し休憩してていい?」

「ええもちろん。買い出しから帰ってきて2人は休んでないですもんね。」

そう労ってくれるニコルの言葉通り有り難く休む事にした。ナポリタンだからすぐ出来るし、と休むため一先ず出かける際に持っていたカバンを置きに個室へと行く。部屋に入ると朝ベッド脇へ置いた荷物が変わらずそこにあった。そういえば服を出しておかねば皺になるな、と持ってきたカバンから数着服を出して部屋のクローゼットにあるハンガーへかけていく。すると部屋にノック音が響いた。

エミリア〜洗い物終わったよ!」

「ありがとう!すぐ行く!」

荷物はその他には大したものはないのでそのままにしよう、と見切りをつけて部屋まで呼びに来てくれたラスティに返事をしながら片付けてキッチンまで戻る。調理まで休むつもりが結局作業してたな、と思いはしたがまぁ大して疲れていたわけでもないし、と考えながらキッチンに入るとニコルが「僕でよければ調理手伝いますよ」と申し出てくれた。

「ニコルありがとう。その健気さをあそこの野郎共にも見習ってほしいわ…」

「ふふ、それはあと何年か経たないと無理でしょうね。結婚でもすれば落ち着くんじゃないでしょうか。」

「それじゃいつまで経ってもあのままね。」

そうですね、なんて2人で軽口言いながら早速必要な材料を取り出して調理し始める。途中ディアッカが「俺ら何かする事まだある?」と顔だしてくれたが「すぐ出来るから大丈夫。お昼以降の予定でも相談してて」と伝えるとりょーかい、と手をヒラヒラさせて去っていった。

「では始めようか。因みにニコルは料理した事ある?」

「そのレベルの確認はイザークにするべきですね。僕は簡単な物なら作れますよ、母の手伝い程度ですけどね。」

「それで十分。むしろ一番ニコルが料理出来ると思ってるから頼りにしてるよ。」

そうキッチンから見えるダイニングの向こうのリビングで騒いでる男たちを顎で指しながら野菜を洗っていく。洗った食材をニコルに渡して「これ細めの短冊切りにしといて」と言えば当たり前のように「わかりました」と返ってくる。恐らく他の男達では成り立たないであろう会話だ。

「そういえば付け合わせはどうしますか?何か考えてます?」

「簡単なものだけどサラダとスープもつけようかなって。コンソメスープでいいかな」

「良いと思います。それに彼らに出てきた食事に文句なんて言わせませんよ」

「本当頼りになるわー」

ニコル本当いい子!と思わず頭を撫でたくなる気持ちをグッと抑えて自分もサラダを作るために引き続き野菜を洗ってボウルに入れていく。横で切っていたニコルも終わらせたのか次はどうします?というのでウィンナーも切るようにお願いした。私はというと洗った野菜を一口サイズに葉物は千切っていく。
横で切り終えたニコルがスープを作るために鍋に水を入れて火にかけてくれている。何も言わずとも何をすればいいか把握して行動してくれるニコルに頭が上がらない、と思いながらもそのままスープはニコルに任せる事にしようとスープへ入れる野菜も切るようにだけ伝える。

「コンロが3つ口で良かったですね。一度に沢山調理出来ますし。」

「それね。私もパスタ茹でたいからお水沸かさないと。」

別荘のキッチンなんてそんなにしっかりした設備はないかもしれない、と高を括ってたが意外にもコンロの数だけでなく大きな冷蔵庫や食洗機まで付いていて喜んだ。ちなみにその食洗機の存在は今気付いたので先ほどラスティとアスランには手で洗ってもらったので少し悪いな、と思ったが今気づいたんだ、許してほしい。
そうこうしてる内にパスタを茹でる用の鍋が温まってしまうので先ほど切ってもらった食材を炒め始める。その横でスープ用に火にかけていた鍋の湯が沸騰したようで、すかさずニコルが刻んだ野菜をスープに入れた。

「10分もすればいいですかね」

「うん、十分だと思うよ。その間にサラダとお皿もお願いしていい?」

「もちろんです。」

テキパキと指示通り準備してくれるニコルは将来さぞ優しいパパになるに違いない、と思いながら一旦パスタ用の野菜を炒めていたコンロの火を止める。真横で沸騰した鍋に塩を入れてパスタも入れる。ボコボコと湧き上がるお湯の中で踊るように畝る麺を何度か混ぜながらスープ鍋にコンソメの素を入れる。ニコルは水を切り終えたようでお皿にサラダをよそっている。

そこへ「うわ、良い匂い!」とラスティが来たので丁度良い、とサラダとシルバーを運ぶようにお願いしたら「まかせて!」と意気揚々と運び出していく。すると横でスープの鍋がクツクツいってるのを聞いてニコルにスープもよそって運ぶようにお願いすると既にそのつもりだったようでレードル片手に二つ返事でしてくれた。

そういう自身もそろそろだ、とパスタの茹で具合をチェックして問題ない事を確認して湯から上げる。その後6人分も一気に炒めることは重くて出来ないので先ほど茹でるために使っていたコンロにもう一つフライパンを出して野菜を半分にする。
パスタも半分ずつ入れて一気に炒めていく。順番に鍋を振りながら味付けもしていくとスープをよそい終えたニコルに「流石、慣れてると違いますね」だなんて言われ、「そんなことないわよ」とだけ返す。

戻ってきたラスティにスープも運ぶように指示したニコルが作業台の上にパスタをよそうお皿を並べてくれたのでそこへ出来上がったナポリタンを盛り付けた。味が心配だな、と各々の好みを心配しながらも出来上がったナポリタンを見たニコルが「とっても美味しそうです。さぁ、冷めない内にいただきましょう」とダイニングへと持ち出してくれた。エミリアも続いて持っていくと既に着席していたディアッカが待ってました!と言わんばかりにワクワク顔で迎えてくれた。

「はい、おまたせ。言っとくけど味の保証はしないからね」

「そこは保証してほしかったな〜」

「そもそも食えないもんをこれだけ堂々と作れる方が凄い。」

「何か言った、イザーク」

すぐ口を出してくるイザークにじゃあイザークだけ食べなくていいですー、と言えば「食べれるか判断するのは俺だ」と持ってきたナポリタンの皿をひったくるように持って行って着席した。後ろから残りのお皿もニコルが持ってきて全員分食卓に揃ったところでアスランが「じゃあ食べようか」と言ったのを皮切りにラスティが元気よく「いただきまーす」と言って食事が始まった。

「え、想像してたより全然美味いんだけど!」

「俺はサラダもきちんと出してくれたことに驚いたよ。」

「2人は私のことなんだと思ってたのよ…」

ラスティとディアッカの少し失礼な物言いに呆れながらもお気に召したようだったので安心してエミリアも食べる。アスランは口には出さなかったが久し振りにエミリアの作るご飯を食べた事に懐かしさを感じていたことだろう。

「というかニコルにも感謝しなさいよね。何も言わなくたってどんどん用意してくれたんだから!」

「そんな。エミリアの手際も良かったですよ。」

「ご謙遜すんなって!2人とも良いお母さんとお父さんになりそうだよな〜」

「確かに!嫁さんには美味い飯作ってもらいたいもんな」

「やだ、突然なに、やめてよ。」

茶化すラスティとディアッカに慌てるもののニコルにまで同じように「エミリアは良いお嫁さんになりますね」なんて言われて萎縮してしまう。

「そもそも貰い手がいればの話だろう」

「何よ、いないとでもいいたいの?」

「そんな態度を取ってるようじゃ当分ないだろ」

「イザークには言われたくない」

相変わらずの売り言葉に買い言葉で言ってしまったがアスランに「2人とも食事中くらい仲良くしてくれ」と半ば飽きられてしまった。そこへ「なぁおかわりある?」とラスティが言うので「まだスープならありますよ」とニコルが返せば一目散にスープカップ片手にキッチンへ駆け込んだ。

「ニコル特製スープがお気に召したようで。」

「元気なお子さんだな」

「ラスティが子供なら明るくて賑やかな家庭になりそうですね。」

ニコルが否定せずにいるところへ「何?俺の話?」とラスティが戻ってきたので別に〜と食事に戻る面々になんだよー!気になるだろ!とディアッカの肩を揺らせば「バッ、おま、溢れるだろ!」と2人で暴れ出したのを見て笑った。

数分後、全員食べ終えるとこのタイミングを待っていた、という雰囲気でアスランが話し出した。

「さっきエミリアとニコルが作ってる間に話したんだが、とりあえず今日はこの後当初の予定通り勉強会をしようと思う。小テストの復習をしてからじゃないとラスティへ何を教えたらいいかわからないからな。」

「なるほど、わかりました。じゃあその間に食器洗いします。」

「いや、今度はディアッカとイザークにやらせておけ。その間作ってくれた2人は休憩しつつ各自勉強だな。洗い物終えたら2人も合流して勉強会しよう。」

「俺が洗うのか!?」

「じゃなきゃ誰が洗うんだよ。うちの別荘には妖精さんはいないぞー。」

アスランの提案にイザークが反発するもさっきも話しただろう?と切り返される。「俺は承諾してない」と言うがじゃあ食事作ってくれたニコルやエミリアにまたやらせるのか?と言われて黙ったのち「やればいいんだろう、やれば!」とズカズカ音を立てながらイザークはキッチンへ消えていった。

「じゃあお言葉に甘えて勉強しようかな。」

「帰ってきてから殆ど休んでませんしエミリアも少しはゆっくりしてくださいね?」

「うん、ありがとね。」

そう簡単に話したのち勉強する事になった4人は一度部屋に戻り、それぞれ文房具や教材を取りに行きリビングへ再度集合した。

「では!アスラン先生よろしくお願いします!」

正座して頭を下げるラスティにアスランは呆れながら「わかったからペンを持て」と言う。大丈夫かな、ラスティより先にアスランがギブアップしそうな気もしたがそれを横目に見やりながら自身も教科書を開いて小テストの復習をする。

今回の小テストは直近に行われた実地訓練の前に教わった箇所だったため、ラスティが忘れたり思った点数が取れなかったのも納得だった。エミリアも今回のテストの結果がとても良かったとまでは言えない。すると数分後、ニコルが早速少し寄り気味に聞いてきた。

エミリア、今いいですか?ここの距離目算する時の場合なんですけど…」

「あぁ、それ頭こんがらがるわよね。確か先に手前の物から推測して…これかけるこれで…」

「なるほど!そういえばそうでしたね、ありがとうございます!」

「いえいえ。私も復習出来てよかった。」

互いの見解を話しながらノートに忘れないようにメモを取っていると後ろから洗い物を終えたイザークが「おい、そこを開けろ」と言い放った。

「なによ、席は他も空いてるんだからそこ座りなさいよ。」

「その席は俺が使おうとしていたんだ。」

「席の1つや2つ違いなんてないし別にどれでもいいでしょ。」

「ならば貴様がどけば済む話だ。」

「まぁまぁ2人とも。僕がズレるのでそれで問題ないですよね、イザーク?」

「…ふん。」

何故だが文句を言ってきたイザークが別席へ座るならともかくニコルが気を効かせて席を譲ってくれた。後から来たイザークにわざわざ譲らなくても!と思うものの「別に構いませんよ」と言うニコルは優しく、どこまでも天使のようだ、とすら思えてしまう。逆にイザークと来たらなんだ。突然来たと思えば席を譲れだなんてどの席も変わらないのに。そう思うもののニコルが良いと言うならば私が口出しすることでもない、と黙る他なかった。
その後も途中でラスティの呻き声やアスランの「何がわからないのかがわからない…」なんて言葉をBGMにしながら勉強会は割と静かに続いた。

すると突然横から「おい、それ間違えてるぞ」とイザークからノートに書き出した答えをペンでトントンと指摘された。

「え、嘘。自信あったのに。」

「そこはaではなくbが正解だ。aは流動的に動くものへ対してならば妥当な答えだが今回の問題では断続的に動くわけではない、それならばbだろう。」

「なるほどね。イザークありがとう」

「別に。今回はそう言うことを指摘する会なんだろう?」

「指摘するんじゃなくて教えあう、ね…」

まぁあながち間違ってはないけど、と付け加えるがイザークにとってはどちらにしても変わりない、という様子だ。むしろ間違いに気付き教えてくれるとは思ってもみなかったので感謝してはいるが普段の様子からは想像もつかないので驚いた。

「イザーク、俺にも教えてくれよ。射撃お前得意だろ?」

「貴様には言うだけ無駄だ。」

「酷えな、俺だって赤着てるんですけど?」

「…お前は頭で考えるより身体で覚えるタイプだろう。そんな奴に言うだけ今は無駄だ。テスト前に暗記するんだな。」

「なるほどね。流石イザーク、俺のことよくわかってんじゃん」

気持ち悪い言い方はやめろ!と言うがディアッカは嬉しそうで茶化すのをやめない。そうこうしてる内にラスティがとうとう電池切れしたようで「もうだめだー!休憩!」と両手を広げてその場にパタリと倒れた。

「おい、まだ1/3しか終わってないんだぞ!」

「だってアスランスパルタなんだもん、俺疲れたよ」

「まぁ少し休憩にしましょうか。息抜きも大事ですし。」

「ほらね!ニコル父さん大好き!」

「冗談はやめてください」

なんでー!と声が聞こえたが本人も本心で言ったわけではないし、ラスティ自身も気にしていない様子。じゃあ今のうちに、とエミリアはキッチンへ行く。キッチンで作業していると飲み物を取りに来たディアッカに「あれ、また何か作ってるの?」と言われた。

「まぁね。簡単なものだからすぐ出来るし私が好きでやってるだけだから気にせず戻ってていいよ」

「そう?じゃあ先戻ってるわ」

そう言って人数分のグラスと飲み物のボトルを持っていくとリビングからラスティの声が聞こえる。大凡勉強からの逃げ道が出来て喜んだのだろう、と思いながら自身の作業を進めていく。数分後出来上がった物をオーブンへ入れて焼いている間に今晩の夕食の下準備も進めておこう、とお米を炊き始めた。

お米やその他下準備を終えた頃にオーブンがチンっと出来上がりを知らせてくれる。オーブンの扉を開けるとキツネ色にうまく焼きあがっていたのを確認し、「よしよし」と1人満足する。リビングから「今の音なにー?」とラスティが首だけキッチンへ向けて発したので「今持ってくから勉強してて」と返す。まだアツアツだがペーパーを敷いたバスケットへ焼いた物を入れてリビングへ戻る。

「良い匂い…あ、クッキーじゃん!」

「ラスティの集中力が切れてアスラン先生が大変そうなので差し入れ作りました。」

「より一層母ちゃんっぽくなってきたな、エミリア

「やめてよ、アスランじゃあるまいし。」

そう言えば「なんで俺が母親なんだ」と口を挟んできたがその場にいた全員否めない、と言った様子で黙るので「おい、なんで黙るんだ!」と続ける。

「焼きたての内に食べようぜ。」

「そうですね、いただきます。」

ディアッカの言葉に一同一斉にクッキーに食いつく。するとラスティは真っ先に「うまー!」と食べ進めていく。

「お昼もそうだけどお味がお気に召したようで何よりだわ」

「いや、マジで美味いよ。エミリア俺と結婚してよー」

「「それはダメだ」」

ディアッカの冗談に軽く返そうとしたところに何故かアスランとイザークが口を挟む。なんで私じゃなくてお前達が否定するんだよ、と思っているとアスランは「ディアッカは遊んでそうでダメだ。本当に好きな人と結婚してクッキー作ってもらえ」とのこと。アスランの意見を聞いたのちイザークは「とにかくダメなものはダメだ」とダメの一点張りだった。

「なんだよ、じゃあ貰い手なかったら俺のとこ来てね。歓迎するから。」

「はいはい、考えといてあげる。」

「何これ、俺がフられたみたいじゃん」

と気にもしてない様子で笑うディアッカにラスティもざまぁ!と笑い出す。そこへニコルが話し出した。

「そういえば明日以降はどうします?」

「そういえばそうだね。もう決まってるの?」

「いや、決めてねえよ。とりあえず今日はいろいろしたから早めに寝ようかなーってぐらい。」

「それなら今日は勉強会のあと夕飯食べ終えたらお風呂入って即就寝。明日は朝早く起きて勉強会、昼食後に対人戦の練習をしよう。朝の方が勉強は効率良い、と言うからな。」

「貴様の話に従うわけではないが効率で言うならばそれがいい。余力があるやつは夕食後にもまた勉強すればいい。」

アスランの提案に従ってばかりだったイザークは物申したいようだが異議を唱えようにも理にかなっていたようで否定はしなかった。じゃあそうするか!とディアッカの一言にみんな賛成し、明日の予定は決まった。

「因みに明後日はどうすんの?」

「明後日は夕方には帰るだろうし朝から夕方まで勉強会かなー。」

「OK、そうしよう。」

ディアッカの提案にエミリアは完結的に返事をする。改めて今回の勉強会は3日とはいえあっという間だな、と思いながら勉強のために来たというのに楽しんでいる自分がいた。学校へ通っていた時でさえ部活にも所属せずにいた引きこもりの学生時代とはえらい違いだな、と自身の2度目の人生に関心しつつも勉強に戻ることにした。その返事と姿を見た面子も教材や机へと向き直る。
ラスティは今のうちに、と口にありったけのクッキーを詰めてから改めてペンを握った。

ーーー

「は〜〜、今日この辺りにしねぇ?」

意外にも先に音をあげたのはディアッカだった。失礼ながらラスティが先に脱落すると思っていたが監視付きで勉強してたせいかそうもいかなかったようだ。ディアッカの言葉に一同ペンを進める手を止める。

「そうですね、そろそろいい時間ですし夕食にしましょうか。」

「あー!やっと解放される…」

「解放されるのは俺もだ」

なんだか少しやつれたラスティとアスランの姿に苦笑いしてるとニコルのセリフを聞いたディアッカが母親に尋ねるように「今日の夕飯は何?」と尋ねてきた。

「今日の夕飯は寿司よ。」

「スシ?」

「スシって何?」

そう言うだろうと確信していたイザークが待ってましたと言わんばかりに説明しだした。自身も書物で読んで知った物だが米と魚を使った見た目はシンプルな料理だと伝えた。しかし実際の寿司は職人の良し悪しでかなり美味しさに差ができる。その為今回はエミリアが寿司の派生料理を作ってくれることになった、と自分のことのように話した。

「へぇ〜。何だか知らないけどイザーク嬉しそうだね。」

「スシって聞いたことあるけど何だっけなー」

「お前は日舞やってたから知ってるのかもしれんが日本の伝統料理の1つだ。」

「あーだからか、俺が何となく聞いたことあんのは。」

「そのスシがどんな物かわからないですが楽しみですね」

各々今から期待しているようで、中でもイザークはそのワクワクが隠しきれてはいなかった。そんなに気になってたのか、とその姿に思わず可愛いなと思いながらも口に出せば怒られることが目に見えていたので黙ってキッチンへ向かう。すると珍しくイザークがキッチンへ着いてきた。

「作る過程も気になるし俺が言ったからな、手伝ってやろう。」

「あーなるほどね。じゃなきゃイザークから手伝いになんて来ないか。」

「それで、何からすればいいんだ。そもそも寿司の派生料理とはなんだ。そろそろ教えろ。」

「じゃあお米からやってもらおうかな。派生料理って言ったけど今回は手巻き寿司よ。簡単に言えば自分で寿司を作って食べるの。」

「自分で!?そんなに簡単にできるものなのか!」

そう告げたのち昼過ぎにクッキーを焼く時に仕込んでおいた炊飯器を開くと見事にふっくらと炊けた白米がそこにあった。普段彼らは洋食を食べるので米を見ることが中々無いようだがこれならば和食馴れしていない彼らも箸を使わず食べられるのでいいだろう。とりあえず一番は炊飯器があったことに感謝した。

そしてイザークは驚いていたが寿司を作るのが難しい、と解釈していたのか自分達で寿司が作れるのかと狼狽えていた。その反応も想定内ではあったので「そうだよ、腕が試されるねイザーク。」といえば絶対俺の作る手巻き寿司が美味いと言わせてやる!といきり立っていた。

「じゃあまずそのお米をおひつ、…がないからバットに引いて冷ましてもらおうかな。ディアッカー!団扇ある?」

「扇子ならあるけど何に使うんだ?」

ご飯冷ますだけだからちょっと貸して、と言えば今持ってくる、と部屋を出て行った。その会話に何事かとキッチン外から覗き込むようにラスティが顔を覗かせる。アスランやニコルもどんな物になるのか、とそわそわしてるようだった。

「ほい、扇子。イザーク壊すなよ〜」

「わかっている」

そうして平たく敷くようにしたお米の上からお酢と砂糖、塩を混ぜたものを少しずつ回しかけ、その上から扇子で扇いでもらう。イザークが扇ぐ中エミリアがしゃもじで切るように米を混ぜていく。

「なぁ、これお酢かけてたけど酸っぱくてベシャベシャにならない?」

「ならないわよ。お酢をかけたことでご飯が混ぜやすくなるし、しっとりツヤっとしたご飯になるの。」

「へー、エミリア物知りだな」

「前にお婆ちゃんから教わっただけよ。」

そう返せばラスティは納得してくれたのかもう興味が逸れたのか、ひたすら扇いでるイザークを見て笑っていた。数分経って混ぜ終えたのと粗熱が取れた頃合いだったのでイザークの手を止めてバットからボウルに酢飯を移し、濡れ布巾をご飯に被せておく。

「なんでタオルを乗せるんだ!?」

せっかく俺が冷ましたのに、とイザークが怒り出したが「こうするとご飯美味しくなるからよ!黙ってて!」といえばそ、そうか…とあっさり引いていく。きっと寿司への興味が高いばかりに寿司を作れる私の意見を無下になんて出来ないからだろう。珍しく大人しく引き下がったイザークだが「次は何をすればいい?」と聞いてきた。

「じゃあここからは具を作っていきます。イザーク、流石に切るのは出来るわよね…?」

「馬鹿にするな、その程度出来るに決まってる。」

その発言はやったことないけど出来るはずだろ、って事かな…なんて不安に思いながらも謎の自信に満ち溢れていたので任せることにした。

「野菜洗って全部細切りにしていって。魚介類はこのあとね。」

「わかった。」

冷蔵庫から出した野菜を洗って次々と切っていく様があまりにも不釣り合いでつい吹き出してしまい、「貴様、何を笑ってる!!」と怒られたが別に、と返して自身は薄焼き卵を作る。薄く広げるようにしては片面焼けたものをひっくり返していく。その様を横で見ていたイザークから度々「おぉ…」と声が漏れていたのが面白くてこんな事でそんな喜ばなくても、と思うが彼にとっては新鮮なんだろうな、と笑いを堪えるのに必死になりながらもこの後も数枚卵を焼いていった。

「おい、野菜切り終わったぞ。」

「ありがとう、そしたら私もそこ使いたいから少しいい?」

あと冷蔵庫から魚介類出してくれる?と伝えると素直に出してくれたそれを受け取る。それらと薄焼き玉子、大葉も千切りにしておく。取り出してもらった魚介類、その中でもいくらは醤油漬けを調達したし、魚は市場で捌いてもらったので柵を短冊切りにしていくだけだ。斜めに切れ目を入れていきどんどん大皿へと具を盛り付けていく。

全部乗せ終えたところで酢飯のタオルを取り払い、もう一つ取り出したボウルに酢飯を半分と千切りにした大葉を入れて軽く混ぜて2種類の酢飯を作ったところで出来上がり、と告げれば「運んでくる」と嬉々と具の乗った大皿を運び出したイザークに続いてエミリアも酢飯の入ったボウルを2つ持ってダイニングへと行く。

「お、出来たか」

「なんだか不思議だな、手巻き寿司というのは」

「これで完成ではないからな!!」

まだ手を出すなよ、と何故かディアッカやアスランの言葉にイザークが仕切っているのがおかしくてまた笑いそうになるが堪えて他にも必要なものを取りにキッチンへ戻る。人数分の取り皿や海苔を持ってダイニングへ戻ると全員席に座って待て、と躾された犬のようになっていた。

「そんなに楽しみなの?手巻き寿司。」

「当たり前だ、新たなことを知れるのは良い事だし滅多に食べられないからな。」

「はいはい、じゃあ食べ方レクチャーするからみんなちゃんと聞いててねー。」

そう言ってみんなが頷いたのを確認してそれぞれを見せながら説明し始めた。

「まず手巻き寿司は自分で作る簡易的なお寿司の事で、自分で具を選んで海苔に巻いて食べる、というシンプルな料理です。じゃあまずみんな海苔とって。」

そこから海苔にご飯をひいた上に具を乗せて巻くだけだと言えばみんな驚いた表情をしていた。
普通の酢飯と大葉入りの2種類を作ったから好きな方を選ぶよう伝えると「ハーフでもいいかな!?」とラスティはピザ感覚でいるようでそれぞれの酢飯を縦半分隔てるように海苔の上に敷き、具を多く入れた人は苦戦しながらも巻いていた。

「みんな巻けた?そしたらあとは醤油を上に垂らしてかぶりつく!」

「えっ、このまま食べるんですか?」

「そうよ、ホットドッグみたいなもんだと思ってくれればいいかな。」

そう言えばみんなも食べ始めるが零しそうになったり頬張りすぎて口いっぱいにしてたりとそれぞれだった。一番初めに食べ終えたラスティが「俺次これ乗せよっと」と2つ目の手巻き寿司作りを始めてからはあっという間に酢飯も具もなくなった。

「いやー食ったわ」

「意外とご飯がお腹にたまりますね」

「自分で作って食べるというのが斬新だったがこれはこれで面白くていいと思う」

「アスランから面白いって聞けるの珍しいわ」

「そんなに珍しいか?」

なんて各々感想を口にして膨らんだお腹に満足そうにしていた。そこへディアッカが話し出す。

「じゃあ今日は一番色々頑張ってくれたエミリアが一番風呂な。」

「そうですね、その間に洗い物しておきますよ」

「じゃあ俺も手伝う!」

「それじゃあ俺はラスティに教えている間出来なかった勉強を少しやるか…」

え、俺のせい!?と言いながら空いたお皿をキッチンへ運ぶラスティ。冗談でもあったが勉強する事に変わりないようで「俺は後回しでいい、あとで声かけてくれ」と個室へ戻っていった。それに続いてイザークも俺も戻る、と言い残して続いてリビングを出ていった。

「んじゃエミリアは俺についてきて。風呂場まで案内すっから。」

「みんなありがとね。お言葉に甘えて入らせてもらうね。」

「気にせずごゆっくりどうぞ」

キッチンから手を振るニコルとラスティを残しリビングを後にする。廊下に出てからまっすぐ突き当たりまで進むとここが風呂ね、と開けてくれた。

「中にあるやつ、好きに使っていいからな」

「ありがとう」

一度着替えを取りに行かねば、とディアッカと別れて部屋へ戻り服やお風呂セットを持ち出してお風呂場へと向かう。
初めて使う風呂場に少し緊張しつつも中に入るとそれはそれは広い浴室だった。みんなも使うだろうとお湯をはり、その間に体や髪を洗う。
何だかんだ買い出しでは海辺を通ってきたので髪が軋んでいるな、と思いながら洗い終えるとタイミングよくお湯がはり終わったようなので止めて湯船に浸かる。

「は〜生き返る〜」

独り言だとわかってはいるがつい言いたくなってしまった。こりゃ何時間でも半身浴していられるな、なんて思いながらも後ろに5人も風呂待ちがいるから、と浸かって僅か数分ではあったがすぐ浴室を出た。
着替え終えて髪を乾かす。昼間買い出しの帰りに髪の話したなぁ、なんて思い返しながら丁寧にブローも済ませてリビングへ向かう。中に入ると既に着替えやお風呂セットを持ち、スタンバイしていたラスティが立ち上がる。

「おかえりエミリア、湯加減どうだった?」

「とっても良かったよ。あと1人で入るにはもったいないくらい広くて快適だった。」

「そりゃ良かった。」

「なぁ、次俺入ってもいい?」

「いいよ。つかその気満々だろソレ」

「おっしゃ、いってきまーす」

ディアッカに一番風呂ありがとうと伝えれば「どういたしまして、俺何もしてねーけど」と返ってきた。そこへ準備万端だったラスティが問いかけるがここでNOとは言えない雰囲気で、GOサインを出せばラスティはすぐにリビングを飛び出した。

「ただの風呂だってのに何がそんなに楽しみなんだかね。」

「いいじゃないですか、なんでも楽しめるというのは長所ですよ。」

「捉え方次第ってか。」

ディアッカは肩をすくめながら机に向き直る。ニコルも向かい合って座っている。ラスティが抜けた場所を見るとトランプが散らばっていた。

「あれ、なんかしてたの?」

「3人でババ抜きをしてました。」

「そうだ、エミリア入ってくれよ。ラスティ途中で居なくなったからラスティの手札で参加してくれ。」

「いいけど…これでババ入ってたら嫌なんだけど。」

「ま、そういうなって。どっちにしろ運次第なんだからさ。」

そう言われて渋々席へついて伏せて置かれた手札を拾い見るとジョーカーのカードは見当たらない。ホッとしつつも表情に出してはならない、と持ち直すがわざとらしく「どうだった?」と聞いてくるディアッカに「さぁね」とだけ返した。

「では引きますよ。時計回りですからね」

「はいどーぞ」

そうしてニコルが私のカードを引く。もちろんのようにセットが出来上がり数字の揃ったカードを2枚捨て山に置く。それに続いて私がディアッカから引こうとすると「お」「それでいいのか〜?」と煽ってくるのでやめてよ!と言いながら一枚勢いよく引き手元に入れる。

見てみると数字のカードだったので探すも手元にはない。チッと舌打ちしそうになりながら手札に加えるとニコルが「え、エミリアのところにジョーカーが?」と聞かれてエミリアとディアッカは「さぁね」と意味ありげに返した。


数分後、ラスティがリビングへ帰ってきた。

「ただいま。風呂凄い良かったわ」

「それは良かったですね。」

「次誰入る?」

「それならアスランじゃない?多分ラスティの世話で疲れてるし、後回しでいいなんて言ってたけどまだ後ろに誰かいるってわかってればお風呂後回しにしないでさっさと入ってくれるでしょ。」

アスランのことだからきっとお風呂入るのが最後ならそれまで勉強するし、いざ自分の番が回ってきてもキリがいいところまで、と言って後回しにしかねない。何かに没頭すると周りや時間に気付かない、そういう人なのだ。そう言うと同室であるニコルも納得のようで「じゃあ僕声かけてきますね」と部屋を出ていった。

「あー、俺ババ抜き途中だったよな、ごめん」

「大丈夫、あの後勝ったから。」

エミリアが代わりにやってくれたの?あんがとな」

大した事でもないし、と思いながらどういたしまして、と返す。するとディアッカが「じゃあもう一戦やる?」と言い出したのを皮切りにアスラン、引いてはニコルも続けてお風呂に入ったその後までババ抜き大会は続いた。


「あー、もう当分ババ抜きはいいわ」

「勝ったからってずるいぞディアッカ!」

「いや、お前顔に出過ぎなんだって」

ラスティに呆れながらディアッカは困り顔を浮かべる。そこへお風呂から出てきたニコルが「残りはディアッカとイザークですよね」というとディアッカが「俺風呂入ってくるわ。そのあとイザークにも声かけしておくしみんなも好きなように寝ていいからなー」と申し出てくれた。

「じゃあ私そろそろ寝ようかな」

「僕もそうします。」

「えっじゃあ誰が俺とババ抜きしてくれるんだよ!」

「ラスティ、お前も寝ろ。忘れてないと思うが明日は朝から勉強するんだからな?」

も、もちろん忘れてないですよ、とラスティの声が小さくなっていく。まぁしないで済むならせずにいたい気持ちも分からなくはない。今日の昼間にラスティに赤にこだわる理由を聞いたら「だって赤かっこいいじゃん!」と言っていたがなんだかその理由もラスティらしいな、と思った。まぁ理由は人それぞれだし恐らくラスティの理由はそれだけじゃないだろう、と察してその時は勉強に戻ったのだった。

じゃあおやすみ、と声をかけるとみんなからもおやすみ、と返ってくる声を背中に受けながら個室へと向かう。部屋に着いてすぐ立った状態から倒れこむようにベッドに乗る。ふかふかだなぁ、なんて寮のベッドとの違いを噛み締めながらいそいそと布団に潜り込むと気付けばいつのまにか眠ってしまった。

普段とは違う一日に思った以上に疲れていたようで、エミリアはぐっすりと朝まで眠った。


ー続、勉強合宿ー

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