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Fall


──みなさんの応援が、平原さんの山を登る力になっているんでしょう?

 そう平原が雑誌で聞かれたとき、平原はこう答えていた。

『違います。人の応援によって前に進めるという人間は、今まで自分を過小評価していたか、今まさに自分を過信し始めたかのどっちかです。人間の力は、応援によって倍増したりしません。でも、金銭的な面では、そうです。』

 平原は、他の登山家たちよりも顔と名前が知れている。
 しかしよくこれで、ここまで注目される登山家になれたな、と高峰は思う。十年か二十年前までは、応援される人間の種類が違っていた。だんだんと世の中は変化していく。

 僕は頑張るので、夢を与えたいと思っているので、みなさん応援をお願いします、という人間が注目を受けるのではなく、平原が奇妙に耳目を集める。『頑張る!』とにこにこする人間を応援することの是非や危うさのようなものをみんな知っていって、それを避けた結果かもしれない。

 平原が迎合しないことはクールだと言われたり、炎上することを目的にやっているのではないか、と思われたりした。
 平原のことを好きな人間も多くいたし、嫌いだという人間もたくさんいた。平原はそれを気にしなかった。


 なんでそんなこと、言っちゃうのかな。でも、本当にそう思っているんだろうな。
 こいつはほんとすごいよ、馬鹿みたいにすごいんだよ。
 本当はそんなにすごい奴じゃないよ、持ち上げられているだけだよ。

 どんなことを言われても、平原はただ山だけを見ていた。
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