番外編
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グランコクマの屋敷で、陛下とアスランを含んだみんなで食事をとった後。大人組で話しながらお酒を飲んでいた。未成年組はファーズとアリエッタ、シンクと共に不貞腐れつつ別室で遊んでいる。
「このワイン美味しい」
「そうですね。瑠璃はワインは好む方ですか?」
「実は苦手」
ジェイドの質問に茶目っ気を含ませて肩を竦ませると、全員が笑う。出会った当初では、お酒が酌み交わせる程になれるとは思ってもみなかった。
おつまみでカルパッチョやマリネなど健康面を重視したものを作りにたまに席を外すぐらいで、基本的にみんな飲みっぱなしだ。アスランはあまりお酒に強くないからちびちびと飲んでいる。陛下とジェイド、ガイはアスランの軽く三倍速ぐらいで飲み干していて、私と俊哉はアスラン寄りだ。
「そういえば、瑠璃にお見合いの話が来てたぞ」
「げっ。断りましたよね?」
「勿論。可愛い妹を嫁になんぞやらん!!」
陛下の爆弾発言に顔を顰めると、どーんと効果音が付きそうな程胸を張った陛下がきっぱり言い放った。存在を公表してからというもの、立場上皇族になるからか見合いの話がたまに来る。ありがた迷惑だ。
「何件目だ?」
「既に数えるのは放棄したよ。陛下が全部断ってくれてるから助かる」
「当たり前だ。妹を嫁に出したくはないって言うのは本心だが、見た目や立場に惹かれただけの奴等には会わせたくもないからな。瑠璃の能力や預言(スコア)のことを知らんのなら、瑠璃にとっても相手にとっても最悪の事態になりかねん」
既にモースにも知られている以上、できる限り力のない関係者は増やしたくない。身を守ることすらできないのなら、それは既に足を引っ張るどころの話じゃない。邪魔にしかならない相手など不要なのだ、私達には。
「瑠璃の正体を知ってて、尚且つ戦える者でなければな」
「つまり俺達の中の誰かってことですか?」
「………そうなるな」
ガイの指摘に、一瞬詰まった陛下。何故に。
「年齢的にみれば、ジェイドもアスランも普通に入るね。ファーズとシンクはともかく、ルークとアッシュもか」
「こうしてみるとものの見事に姉さん女房の確率高いな」
アスランとジェイドは年上だが、ガイもルークもアッシュも年下だ。確かに確率は高い。
「瑠璃は結婚しないのか?」
「えー。面倒臭い」
「もう25歳だしなー。そろそろ決めろ」
「陛下さっきと言ってること真逆です」
ガイからの指摘をすっぱり切ったにも関わらず、陛下から何故か結婚命令が出た。思わず睨めば、何処吹く風という感じでワイングラスと傾けている。すっとぼけやがったこの人。
「私の相手の理想は、自分より強い男性です。歳は関係ありませんが、万が一私が暴走したときに止められる相手が一番理想的ですね」
「………お前、自分の階級わかってるか?」
「大将ですね」
「軍の中で一番強いってわかってるか?」
「それは私の力を含めた状態でしょう?普通に譜術と剣術での階級であれば、将軍クラスではないなと仰っていたではありませんか」
私の階級は大将ではあるが、それは意識集合体達の力も含まれている。その理由は誰かの下について力を利用されない為なのと、うっかり私に喧嘩を売る馬鹿への牽制だ。階級が上であれば、それだけで効果はある。
「つまりは瑠璃はジェイドとほぼ同一ってことになるのか?」
「互角か私が下じゃないかなぁ。封印術(アンチ・フォンスロット)の影響が今はあるけど、ないときにはマクガヴァン様から昇進しろと言われていたから、少なくとも将軍クラスってことになるよね」
そうなると立場は逆転するわけで。そうなると、条件としてはジェイドとアスランの二人になる。ガイは階級がないからわからない。
ルークとアッシュに至っては、ティアとナタリアがいる。
アッシュとナタリアは幼少期からの許嫁だし、私に対しては純粋に姉と思ってくれている。
ルークとティアは互いが鈍い為、ろくに言いはしない。けれど誰がどう見たってルークもティアも両思いだ。
そうなると、ほぼ三人に絞られてしまうわけで。
「………なんだかなぁ」
「そんなに嫌か、結婚」
「俊哉が先にしてくれたら考えるよ」
「しないって言ってるようなものだからなそれ。あと俺を巻き込むな」
あわよくば巻き込んでやろうという思惑は早々に断念された。残念。
まあ結婚に憧れがないとは言わないけど、力のこともある。それに元が異世界人だから、ここで家庭を持つことに抵抗があるのも理由だ。
「ま、早めに考えとけよ。それよりジェイド、お前それなんだ?」
陛下が何となく察してくれたのか、話題を結婚からジェイドが先程から手にもって眺めていたりしていた小瓶に移した。他も気にはなっていたようで、今までもちらちらと視線を投げていたのだ。その視線をあえて全部無視していたのは、流石と言えばいいのか。
「ああ、これは新薬ですよ。思い付きで作っていたのですが、完成間近で失敗したことに気付きまして。処分しようにも少しもったいないので、誰かに飲ませてみようかと」
それを聞いた瞬間、私はジェイドが持っていた小瓶を奪った。一瞬にして消えた小瓶に呆気にとられながらも、何故という風に私を見てくるジェイドに、少し不機嫌な表情で返した。
「仲間を実験体にすんな」
「貴女は相変わらずの過保護ですねぇ」
からかうような風に笑われたことにムッとして、小瓶の蓋を取った。そしてそれを。
「他の人に飲ませるなら私が飲んでやる!」
「「「はぁ!?」」」
一気飲みした。その様子に声をあげたのはガイ・陛下・俊哉で、アスランは驚いた表情のまま固まっており、ジェイドはといえば驚いてはいるもののどちらかといえば面白がっているように見えた。
ごくり、と嚥下(えんげ)すると同時に俊哉と陛下が私の肩を強く掴んだ。
「阿呆かお前は!吐き出せ!」
「飲んじゃった★」
「飲んじゃった、じゃない!ジェイドがどういう奴なのかお前も知ってるだろう!」
「わかってはいますが、このまま放置してたらこの中の誰かのグラスの中に投下されていたかもしれませんよ?」
私の言葉に一瞬沈黙が降りる。恐らくやりかねないとでも思っているのだろう。思わず笑うと、少し気分が悪くなった。そういえばお酒飲んでた。
………あれ?
「お酒と薬って一緒に飲んでよかったっけ?」
「あ?駄目に決まってんだろ。薬が余計な働きをして、人体に危険が、およ、ぶ………」
私の素朴な疑問に、顰めっ面しながら返してきた俊哉が段々青くなっていく。他も思い至ったのだろう、少し心配そうに見てきた。
元々の効果がわからない薬を、アルコールと一緒に摂取した。それは最悪、死に至る可能性があるということで。
ちょっと自分でもまずいなと思っていると、不意に視界が揺れた。最初は微かな揺れだったが、段々酷くなる揺れに真っ直ぐ立っていられなくなる。
ふらついた身体を受け止めてくれたのは、陛下だった。謝ろうとするも、口から出たのは微かな呻き声だけ。マトモに喋れないことに気付いた。
「おい、大丈夫か?」
「瑠璃?返事できますか?」
「おい瑠璃!」
誰かが口々に話しかけて来るものの、誰が誰だかわからない。
遂には目を開けていられなくなり、すっと瞼を下ろす。そうして私は周りから絶え間なく話しかけられながらも、意識を闇に落とした。