外殻大地編 4
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結論から言えば、ヴァンの話は右から左に流した。だって本性知ってる私達からすれば茶番だし。途中の第七譜石の説明はきちんとしたけども。
私と俊哉がいるからか、旅券の段階でヴァンが少し表情を歪めた。恐らくファブレ公爵から預かっている旅券の数が足らないのだろうが、世話になる気はないので即座に自分達のを提示した。安堵の息を吐いたヴァンはルークに旅券を渡し、宿を出ていく。
その扉の前にいた私達にしか聞こえない言葉を残して。
「(『必ず迎えに参ります』ねぇ………やっぱりこの程度の変装では誤魔化されなかったか)」
基本的な体のパーツはそのままなのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだけれど。あのときうっかり出会ったのは誤算だった。秘預言(クローズド・スコア)を知っているヴァンであれば、外見だけで私達だと判断することができると思ってなかったあのときの自分を悔いる。そのまま考えに耽っていると、そのまま宿に泊まることがいつの間にか決定していた。
今回は国境で、部屋の区切りがないと言うことで全員が同室となった。流石に全員がベッドというわけにはならなかったので、私と俊哉、ガイが簡易ベッドで寝ることになった。
「アニス、はじめましてだね?私はウィン。アニスがいないときに同行することになったんだ。よろしく」
「よろしくー。………あれ?」
名前を名乗り握手したところでアニスが首を傾げた。どうしたのかと私も首を傾げる。ティアの方からぼそりと何かを呟く声が聞こえたが、内容は聞き取れなかった。
「ウィンって確か六神将がよく雇ってる傭兵だよね?負け知らずの猛将って言われてる」
「あー………うん、まあね」
ダアトの人間でアリエッタと繋がりのあるアニスだからこそなのか、他の人達が知らなかったことを言い当ててきた。てか不満なんだけど、猛将って。
「そんな人がルーク様達についてたなんてラッキー!譜術とか教えてね!」
「それはまあ構わないけど」
強くなるのに努力をするなら、協力は惜しまない。確かに職務怠慢気味ではあるが、将来私達の力になるなら別に問題はないだろう。
「俺はフレイ。ウィンより少し後に入った。ま、よろしく」
「よろしくー。二人はフード取らないの?」
「んー、まあな。事情があるから取れない。寝たときを見計らって見ようとか思うなよ。気配でわかるからな」
「はぁーい。フレイもウィンと同じく強い?」
純粋に気になったらしく、こてりと頭を傾けて聞いてきた。俊哉は私より六神将に雇われた回数が少なく、依頼内容も基本的に任務地に直接赴くことが多かったことから基本的にダアトにいたアニスは知らないのだろう。
「今のところ、私と互角なのこいつだけ」
「へー!じゃあ相当強いんだー」
どうやら私基準であれば力量を推し量りやすいらしい。六神将と一緒に行動しすぎたかな。変な目立ち方してるんだけど。
「ウィンとフレイのあとだと、自己紹介しづらいな………。俺はガイ・セシル。ファブレ公爵家の使用人で、今回のルークの捜索を任されたんだ。アニスの話はジェイドやイオンから聞いてたんだ。よろしくな」
「(ルーク様の使用人………!)えー、イオン様はともかく大佐からってなんか不安ー」
「(わかる)」
思わず頷く。どうしたって嫌みが付いて回るジェイドが、まともに人物紹介ができるイメージなんてない。アニスが不安がるだけの性格の持ち主だ。
「自己紹介が終わったところで、もうそろそろ休みましょう。明日も朝早くから歩き通しですからね」
「次はカイツール港だったな。ここから何日かかる?」
何故かガイは私の方に向いて問いかけてきた。お前ここを通ってきたんじゃないのか。そう聞くと、ガイは首を振った。なんでも基本的に陸路を辿ったので、ケセドニアから陸路でマルクト入りしたらしい。タタル渓谷からローテルロー橋まではともかく、どうやって橋を渡ったのか。
ケセドニアからローテルロー橋を渡ろうとしたが、漆黒の翼により橋が破壊されたから一旦ケセドニアに戻り、先に向かったヴァンとは別の船をケセドニアから手配するのに時間を食ったと聞いた瞬間、申し訳なくなったのは内緒だ。漆黒の翼を呼んでたのは私だし、馬車の提供をしたのも私。でもまさか火薬積んでくとは思わなかったが。ケセドニアで会ったら説教しとこう。ちなみにカイツール港に着けた訳ではなく、エンゲーブ近くの砂浜に着けたらしい。あくまで陸路の選択だったようで、そこから更に歩いて探していたらしい。なるほど。
「順調に進めば大体三日から四日。天候は悪くなさそうだから、問題なく進めると思うよ」
そう言ってから窓の外を見る。フードを少し上げて空を見上げると、そこには雲一つない満点の星空。ここから雲が生成され雨が降るまでにバチカルに着ければいい。フードから手を離して室内にいるメンバーに向かって微笑んだ。
「明日からバチカルに着くことだけに集中しよう。妨害行為は私とフレイで引き受ける。ルークとイオンは着くことだけを考えて、ガイ・ジェイド・ティア・アニスは二人の護衛。後ろのことは考えないでいていいから」
後からルークに聞いたら、怖かったらしい。何がと思うが、涙目だったので問い詰めるのを控えておいた。
翌日、朝早くに国境を越えた。
旅券をキムラスカ兵に見せた途端、慌てられた。なんでも国王から勅命が出ており、その証がこの旅券なんだそうで。とにかく、無事に国境越えができたとあってルークは少し安堵したような表情になった。
「ようやくキムラスカに帰ってこれたのか………」
「駄目駄目、家に帰るまでが『遠足』だ」
「こんなヤバい遠足、勘弁って感じだけどな」
多少気の抜けたようなルークを諭すのはガイ。私も流石に苦笑して少しだけ咎めると、多少表情を引き締めたようだが雰囲気的にはゆるゆるだった。自国だからって駄目だぞ、そんな気の緩ませ方は。
「キムラスカに来たのは久々ですねぇ」
「ここから南下すればカイツール軍港でしたね。行きましょう、ルーク様♡」
ジェイドの言葉には敢えて反応は返さず、ルークのみに媚を売るアニスに俊哉が溜め息を吐いた。疲れるなよこんな程度で。これから約二年間一緒なんだぞ。
その期間を思い出し、私も思わずつられて溜め息を吐いてしまった。