外殻大地編 4
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そんなやり取りにくすりともせず、悩んでいる様子のティア。そのとき、突如として出現した頭上の気配に双剣を抜く。それに驚いたガイが、走り出した私を引き留めようと腕を伸ばしたみたいだが、俊哉が止めたらしく私の邪魔は入らなかった。
「ところで、どうやって国境を越えますか?私もルークも旅券を持ってません」
「ここで死ぬ奴にそんなものは不要だ!」
怒鳴り声と共にルークの上に降ってきたアッシュの剣を、双剣を交差して受け止める。ルークから引き離す為に一度弾き飛ばして距離をとると、アッシュに走り寄って再び剣を交わらせた。
力の拮抗で耳障りな金属音が鳴り響く中、私とアッシュは視線を交わす。にっと口許を緩ませ無言でいると、男の声が私達の間に割り込んできた。二人してその声の方に視線を向けると、予想に違わずヴァン・グランツがそこにいた。
「退け!アッシュ!」
「………ヴァンか!」
私と剣を交えた状態のままアッシュがヴァンを視認した。私もそこまでの力は入れてないし、できないことはないだろうけど。
「どういうつもりだ!私はお前にこんな命令を下した覚えはないぞ!退け!」
「………っち」
舌打ちしたと同時にその場から飛び退いたアッシュは、一瞬こちらに視線を投げたあとそのまま飛んでどこかへ消えた。
「師匠!」
「ルーク、仲間に護られるとはな。もう少し鍛練が必要だな」
「ちぇっ。会っていきなりそれかよ………」
嬉しそうにヴァンに駆け寄るルークは、ちらりとこちらに視線を寄越したあとルークを叱った。叱られながらも会えた嬉しさからか、ルークの顔全体は緩んでいる。
双剣を鞘に納めてそれを眺めていると、ヴァンに向けて殺気を放つティアが投擲用のナイフを構えた。
「………ヴァン!」
実の妹に殺気を込めて睨まれるのは多少なりともショックなことだろうに、ヴァンは少しの動揺も見せないままティアを宥めた。
「ティア、武器を収めなさい。お前は誤解をしているのだ」
「誤解………?」
武器を構えないまま諭すヴァンの姿に、多少冷静になったのかティアは構えた腕を少し下ろす。頷いたヴァンはそのまま何の躊躇いもなくティアに背を向け、視線だけを後ろに流した。
「頭を冷やせ。私の話を聞く気になったら、宿まで来なさい」
そのまま歩き出すヴァンの背を追いかけるルーク。さながら親鳥についていく小鳥だ。
「ヴァン師匠、来てくれて………ありがとう」
素直に礼を言うルークに驚いたのはガイ・私達以外の人間だ。ガイは屋敷での態度で知っているだろうし、私達はルークが優しい青年(少年)であることを知っている。
「ここまで苦労したようだな、ルーク。しかしよく頑張った。流石は我が弟子だ」
「へ、へへ!」
褒められたルークは、だらしなく表情を緩ませる。それほど嬉しいのだろう。
けれど、私達はヴァンの裏の顔を知っている。だからこそフード下で睨み続けた。
「ティア、ここはヴァンの話を聞きましょう。わかり合える機会を無視して戦うのは、愚かなことだと僕は思いますよ」
「そうだよ。いちいち武器抜いて、おっかねー女だな」
「イオン様のお心のままに」
イオンがティアを宥めるのに便乗してルークがティアに怒るものの、肝心のティアは完全にルークの発言を無視してイオンに礼をとる。そのことに憤慨したのかルークは不機嫌になるものの、何も言わずに宿へ歩き出した。背中から滲み出る不機嫌オーラはそのままに。
「じゃあヴァン謡将を追っかけるか」
ガイの合図を背中に、私はルークの傍に走り寄った。そのことに気付いたらしいルークがちらりと私の方に視線を向けると、ぼそぼそと何事かを呟く。確かに距離は近いが、全てを聞き取れるわけではないので首を傾げると、今度は少し大きな声で言ってくれた。
「さっきは、サンキュな」
「なんだ、気にしてるの?護衛として同行してるんだから当たり前でしょ」
とはいえ来ることがわかってたからの行動ではあるが。それに現時点でアッシュの顔がルークにバレるのも避けたかった。ヴァンがいる手前、下手な言葉もかけることができなかったし。アクゼリュスまでは行動が制限されるのは仕方ないか。
「ルークに怪我がなくてよかったよ」
「………おう」
照れ臭そうに笑うルークに、頭を撫でたい衝動が込み上げてきたがぐっと我慢して宿に入る扉を開けた。