外殻大地編 3
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「俺達が未来に望むことは、一緒なんだ。だからこそ二人でできることをし、時に別々に行動してやれることを増やして、そうして本当に信頼できる仲間を増やしていった。数は少ないが、個々の能力で俺達を助け、また俺達も助ける」
「今一緒にいないってことは、基本別行動なのか?」
「ああ。基本的な行動は個人の判断に任せてある。たまに俺達が頼んだり、逆に忠告したりするけどな」
そう言ってちらりとアリエッタを盗み見る。今回はアリエッタが動揺してしまいフーブラス川に来てしまったが、仲間は全員頼みも忠告も聞いてくれる。俺達の方も個々の能力の値を的確に把握し、見合った内容の依頼をするのでほぼトラブルは起きていない。例外は天候や個々の感情故の行動だ。
「あいつの命は俺が預かっているし、俺の命はあいつが預かってる。他の仲間の命も、俺達は預かってる。それだけ信頼してるってことだ」
「即答できる、本当に信頼できる相手………」
そう言ってルークは黙り込んだ。まあルークの場合は、バチカルまではそう考え込まなくてもいいだろう。ルークを必ず護ると断言できるであろうガイがいる。前線に出してる時点で少し不安ではあるが、少なくとも死にはしないだろう。瑠璃もいるしな。
「ま、これから過ごしていくうちに見つければいい。誰かに指図されることなく、自分の意思でな」
「ああ。さんきゅな、フレイ。なんかすげー勉強した気分だ」
「人生なんて日々勉強の繰り返しだ。俺達だって学ばなきゃならないことは沢山ある。学ぶ意思があるかないかで、自分の今後の人生が変わってくるんだ」
今はまだわからないことだらけだろうから、ほんの少し多く知っている俺達がフォローに回るだけ。それだけでこいつの成長は目覚ましい結果となるだろう。今までは教える側に問題があっただけだ。
「さて、話しながらでも飯は食い終わったし。そろそろ明日に備えて寝てこい」
「食った後に寝たらブウサギになるんじゃねーの?」
「日頃運動してるんだから少しぐらいなら平気だよ。なんなら稽古してやろうか?」
「遠慮しまーす………」
そう言ったルークの表情は、少し引きつっている。恐らく原因は瑠璃と話してた組手のことだろう。あれは瑠璃とやったからこその結果であって、他とやって山を吹っ飛ばすことはない………多分。
「本気でやると本気で吹っ飛ぶから、ちゃんと手加減はするよ。手加減し損ねてお前に怪我させたらウィンからの報復が怖いからな」
「報復?なんで?」
「姉様、気に入った人に怪我されるの、一番嫌う、です。前、今の仲間の一人に兄様が怪我させたとき、一ヶ月ぐらい毎日殴られてた」
アリエッタがつまりながらも説明すると、ルークは意味を理解したのか少し顔を赤くした。
瑠璃は仲間でない人間でも、気に入れば庇護対象にする。それは子供を護る母のようで。だからこそ瑠璃を母と呼ぶのだろうか、子供は。アリエッタですら最初はママと呼んだのだ。瑠璃が必死に直したから今の呼び方にはなったが。
「ま、そんなわけだから怪我云々はさせねえよ。どうする?」
「やる!ウィンもフレイも強いから、ぜってー強くなれるって思ってたんだ!」
「んじゃ、ガイも呼んでこい。あいつも剣士だし、あいつも俺とルークが二人では不安だろうし」
「なんでだよ?フレイ強いじゃねーか」
首を傾げながら言うルークは、本当にわかっていないらしい。今現在も俺だけに向けられている敵意を。ある意味羨ましい。
「いいから、呼んでこいよ。俺はここにいるから、準備ができたら言え」
「わかった!」
そう言って駆けていくルークの背を、終始会話に参加せずただ微笑んで俺達を見ていたイオンが見送る。それに疑問を持ちつつも、あえて突っ込まずに放置していた。
しかしルークがいなくなったことで逆に俺達と話しやすくなったらしく、俺達に向き直ったイオンの表情はどこか緊張感があった。
「一つだけ、確認させてください」
「なんだ?」
「ウィンの庇護対象にならず、仲間とも言えない人達にはどう対応しているのですか?」
ずっと気になっていたらしい、瑠璃の対象外の人物への対処。それを俺の口から伝えてもいいものか。瑠璃は大概のことは自分の口で言うのが常で、今でもそれは健在だ。オブラートに包むことなくズバズバ言うので、一部から反感を買いかけたこともある。
「その質問は、本人に聞け。俺の意見は所詮参考にしかならないからな。まあ共通で言えることは、分かりやすい態度だな」
「分かりやすい、態度、ですか?」
「ああ。一言で言えば、相手に対する言動と距離だ。一番分かりやすいのは距離だな。ウィンはスキンシップが好きだから、頭撫でたりは当たり前だし」
「抱き締めてくれたり、一緒に寝てくれたりもする、です。あとお風呂も一緒に入ってくれたりする、ですよ」
「え、俺それ知らない」
本気で初耳だった。屋敷に来るのは仲間だけで、屋敷自体が広いから来訪者は把握していても誰と何をしているのかとかは流石に把握しきれない。
ちょっと悔しくて詳細を聞き出せば、なんと緑五人とアリエッタと瑠璃とで混浴だったらしい。俺は除け者。酷い。
「そういうときは誘ってくれ………地味に凹む………」
「ごめんなさい、です。でもファーズが呼ばなくていいって………」
「あの野郎………帰ったらシメる」
瑠璃から仲裁という名の拳骨を食らいそうだが、一矢報いないと腹の虫が収まらない。こっそりやるか。どうせ混浴ったって水着着用か脱衣所別々のタオル装備のどちらかだろうし、ハブられた理由は母を独り占めしたい子供心からだろう。俺の立ち位置はどこなんだ、父なのか?兄なのか?未だに不思議に思う。
「………ふふっ」
「「?」」
突然笑い出したイオンに、俺とアリエッタは揃って首を傾げた。その様子も可笑しかったらしく、イオンの笑い声は収まるどころか大きくなっていく。その様子を見ている内に、アリエッタも笑いだして。段々俺も可笑しくなってきて、遂に三人で笑ってしまった。
「なにやってんだ?」
そのとき、ガイを連れたルークが帰ってきた。笑う俺達を不思議そうに眺めているルークとガイにも少し笑い、立ち上がる。
「よし、じゃあやるか」
「おう!あ、ジェイドからの伝言で、やるならウィンが起きてからやれだって」
「は?なんで?」
歩き出そうとした矢先に伝言を伝えられ、出鼻を挫かれる。怪訝に思いジェイドの方へ視線を向けると、口パクでアリエッタとウィンをどうするのかと言われた。それに大丈夫だと口パクで返し、アリエッタ達の方へ向き直る。
「ウィンはアリエッタに任せる。イオンもな。俺達はそう離れない場所でやってるから、何かあれば言えよ?」
「はい、です」
「わかりました」
「よし、やるぞ」
「おう!」
立ち上がりジェイド達とは逆の方向に歩き出せば、ルークとガイもついてくる。すると後ろから溜め息が聞こえてきた。振り返るまでもなくジェイドだろう。だが気にしない。
そんな俺を不思議に思ったのだろう、ガイが聞いてきた。
「なあ、本当に大丈夫なのか?」
「何が?」
「ウィンのことだ。障気を吸ったのに傍を離れていいのか?」
フーブラス川から夜営までの道程で、戦闘以外傍を離れなかったからなのか。振り向いてガイを見れば、探ろうという思惑がないどころか本気で不思議がっていた。ので、こちらも普通に答えた。
「流石にずっと傍にいるのも気色悪いだろ、兄弟でもないのに。回復はしてきたし、付きっきりの看病はもう必要ない」
「そんなもんか?」
「そんなもんだ。さて、ここらへんでいいだろ。やるぞ」
ある程度離れたところで足を止め、二人の方に身体の正面を向けた。鞘が抜けないように紐で固定して、確認の為に数回軽く振る。確認し終わった後二人の方に視線を向ければ、何故かぽかんとしていた。
「どうした?」
「………鞘から抜かねえの?」
「ルークに怪我させたらウィンからの報復で殺されそうだから、とりあえずの安全対策。打撲なんて生死のやり取りよりはずっとマシだろ」
「そりゃそうだけどさ」
抜き身の剣でルークに掠りでもしてみろ、烈火の如く瑠璃に責められるだろう。安全対策の不備、思慮の浅さ、配慮の無さ、短絡的、等々。事実な分反論できないし、怒っている瑠璃の話を遮るだけで説教時間が約二時間増える。説教中は正座させられてるから時間が延びるのは避けたい。
すっと腰を落として構えると、二人も応じて構えた。二人に頷けば、目配せしたあと先に来たのはガイだった。上段から降り下ろされた剣を軽く弾く。次いで現れたルークの剣は横に流した。
「ガイ、あまり上段から降り上げるな。体ががら空きだから、突っ込まれたら怪我をする。剣劇に重みを持たせたいなら、腕を鍛えて瞬発力を上げるか、踏み台を使って飛んで降り下ろせ。ルークはガイの影から出てくるのはいいが、一歩間違えればガイを斬るぞ。影から出るならその人から少し離れたところになったら振れ」
「成る程な、覚えておくよ」
「わかった。離れてからな」
「ん。まだ続けるか?」
普通に頷く二人にフッと笑い、剣を構えようとした。ら。