外殻大地編 3
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セントビナーを朝に出発してから五日。フーブラス川に着いた。
ルークを励ますミュウがうっとおしいのか、ミュウは基本的にティアの腕の中だ。川を渡る手前でジェイドによる術技講座が行われたが、それは私と俊哉が早々に乗っ取った。嫌みパーティーの講座なんぞ誰がやらせるか。
という魂胆で乗っ取ったのだが。
「そうそう、上手いよ。初めてにしては掴めてる。もしかしたらフレイより上手いかもなー♪」
筋としては中々いい線を行くので、教える私としても楽だ。ヴァンが師というのがなんとも気に食わないが、これに関してはほぼノータッチと言っていい。助かった。
「はあ?フレイは強いんだろ?」
「こいつの場合は第五音素のしかできんのだよ。他の属性は片っ端からからっきし」
ルークの隣で剣を構えている俊哉を指差しながらからからと笑う。
元々俊哉は第五音素しか恩恵受けてないから仕方ないんだけども。私のフォローを受けても全く駄目。第五音素以外の音素集合体達に嫌われてんのと疑いたくもなる。
「じゃあウィンは?」
「私?普通にできるよ。六属性全部」
ふりふりと右手に持った刀を軽く振る。
(今のところローレライ以外の)音素集合体に愛された女神と預言に詠まれてんだし。今はもう私達に関する預言を知る者は少ないだろうけど、一番危険なのはモースかな。本名でない限り気付かないとは思うけど。
内心の心配は表に出さず、へらりと笑って誤魔化した。
「ちなみに」
「ん?」
「私がFOFを作るとこうなる」
そう言ってルークの足元に発生させる。勿論色がついた状態のを。
「双牙斬やってみ」
「さっきみたいになるんじゃねーの?」
「いーからいーから」
訝しむルークを促してやらせる。納得しないままのルークはFOFの中に入り、剣を構えて。
「襲爪雷斬!」
技を出した。
すると、さっきティアが出したFOFのときよりもより強力な雷を伴った剣技が敵を直撃した。思わずといった感じにぽかんと呆けるルーク・ティア・ガイに思わず笑ってしまった。
一番早く回復したのは、技を放ったルーク。興奮状態で私の傍に駆け寄ってきた。何故だろう、ルークの頭に犬耳が見えるよ(幻覚)
「すげえ!威力倍増!?」
「ははは、丁度いい感じの風が吹いてたから掴んでみた」
「すげー!!」
私の周りにまとわりつくルークに頬が緩む。こんなこと本当であれば習得してもらいたくはなかったが、ルーク自身が望むならと苦渋の決断をしたわけだ。
まあ今後ずっと傍にいられるかと言われれば、ノーとなる確率も無きにしもあらずだ。まだ私達がいるときにであればフォローはしやすいからまあいいか。
「他のことは追々教えていくよ。バチカルまではまだ距離があるからな」
「俺ともたまに組手しろよ」
「フレイとやると山ひとつ吹っ飛ぶからやだ。それで半年前散々怒られたの覚えてないわけ?」
ルークに指南方針を話していると、俊哉が割り込んできた。どうやら久々の組手がご所望らしいが、やる訳にいかなかったので即叩き落とす。
あのときの陛下のお怒りようは、過去最高の怒髪天だった。セントビナーとアクゼリュスの間の山々の一つを完璧に吹っ飛ばしていたので、仕方がなかったのだけど。マクガヴァン様は笑ってらしたな。
「山ひとつ吹っ飛ばすって………何やったんだよ」
「ただの組手」
「途中から殺気纏った殺し合いに発展した、な」
恐る恐る聞かれたからか殊更さらっと流そうとした俊哉に補足を入れると、分かりやすいぐらいみんなが固まった。仕方ないじゃん、お互い本気になって負けず嫌いが発動しちゃったんだから。
一日中戦って気付いたら夜更けだよ。しかもあった筈の山が一個消えててさ。自分達でも何やってんだと思った。
「組手禁止令出されてるだろ。破ったらまた罰則受けなきゃならないんだから勘弁しろよ」
頭の後ろを撫でながら先を進む。罰則は様々で、陛下の気分によって決められるので事前の心構えなんてあるわけもないんだから。そこに不意打ちみたいな内容持ってこられるから、勘弁してほしい。
そう考えながら歩く私の後ろで俊哉が指南終了の合図を出す。そうしてあとを追ってくる彼らには、俊哉に対して今のところ目立った警戒はない。俊哉が初対面時に不機嫌丸出しだったからか、多少なりとも思うところがあったのだろうか。
まあただ警戒することに疲れただけかもしれないけれど。
そのまま何事もなく進み、浅瀬になった部分を渡る。全員がカイツール側の岸に渡りきり、もうすぐフーブラス川の付近から離れると思った、そのとき。
「ウィン姉様!!」
「「「「!」」」」
「この声は………」
「え………!?」
「おいおい、この声まさか………」
その場に突然響いた叫び声に、嫌な予感がした。この場所に来ないようにと言ったのに、何故。
「ウィン姉様!」
「駄目だアリエッタ!来るな!」
ライガと共に駆け寄ってくる桃色の髪の主に、やはりと思いつつ制止をかける。しかし気が動転しているのかいつもなら聞いてくれるのに、今日は聞いてくれなかった。
「アリエッタ!止まりなさい!」
「駄目だウィン、あいつ聞こえてない!」
俊哉の言葉に思わずアリエッタの方に駆け寄った。止めようと手を伸ばす俊哉に気付いていたけれど、足元の揺れに気付いてしまえばアリエッタのみに集中した。
「きゃあ!」
「うおっ!」
「うわっ!」
「地震か………!」
嫌な予感なんて、本当当てになるから嫌だよ。
アリエッタが地震で倒れてしまった。咄嗟にそれに覆い被さり、顔を胸に埋めさせる。ライガの方を少し乱暴に風で遠くに吹っ飛ばした。直後に吹き出した障気はアリエッタに影響はない筈。代わりに、防ぎようがなかった私が吸い込んでしまった。
「ウィン!!」
俊哉が私の偽名を呼んだ。けれど、猛毒である障気を吸い込んだ私は、その声を最後に意識を闇に落とした。