外殻大地編 2
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街を出ようとしたところでイオンが休みたいと言い、そろそろ夕暮れになる頃だったので休むことに賛同したジェイドが、ついでに俊哉に今までの事情を話すことを言われた。まあどうせこうなるだろうとわかってたので、素直に頷いておいた。
部屋を四つ取った後、イオンとジェイドの部屋に集まった。各々思い思いの場所に立ったり座ったりしながら、イオンの話を聞いていた。
「タルタロスから連れ出された後は、セフィロトに行きました」
「セフィロト………?」
ルークが疑問の声を上げる。それに答えたのはティア、わかりやすく解説したのはガイだった。
「大地のフォンスロットの中で、最も強力な十ヶ所のことよ」
「言うなれば、星のツボだな。記憶粒子(セルパーティクル)っていう惑星燃料が集中してて、音素が集まりやすい場所だ」
立て続けに説明されたのが気にくわなかったらしいルークは、拗ねたように文句を呟く。そんな三人には頓着せずにイオンに何しに行ったかを聞き出そうとしたジェイドだが、機密事項だとして跳ね退けられる。
「そればっかだな。むかつく」
「ルーク、組織には色々あるものだよ。明るいことも、暗いこともね。ましてやイオンは組織のトップ。軽々しく口にしていいことばかりじゃないんだよ」
「なんだそれ。がんじがらめで苦しくねーのかよ」
「苦しいよ。でもそれが人の上に立つということさ。組織のトップでも国のトップでも、言葉一つで事態が急変しかねない。それを重々わかってるからこそ、軽々しく機密事項を開示できないんだよ」
「ふーん。………あ、そうだ。ジェイド、お前封印術(アンチ・フォンスロット)は体に影響ないのかよ?」
私の説明で拗ねかけたルークは、思い出したようにジェイドに話しかけた。そういえばタルタロスでそんなもん喰らうんだったっけ。忘れてた。
「多少は身体能力も低下します。体内のフォンスロットを強制的に閉じられた訳ですから」
ルークに心配されたのが意外だったらしいジェイドは、少し目を見開いた後少し微笑んで答えた。ミュウとガイが照れるルークをからかう中、ティアが全解除できるかと問えば、時間がかかると返された。
「まあ元の能力が違うので、多少の低下であれば戦闘力は皆さんと遜色ないかと」
最後に嫌味を入れる辺りがジェイドらしい。ルークがむすりと顔をしかめた後、ジェイドがこっちに顔を向けてきた。
「それで、彼がフレイですか?」
「ああ。ほら自己紹介しろ」
肘で隣にいる俊哉をつついて促すが、嫌そうな雰囲気を醸し出しながら私に向かって首を振った。
「何処まで喋るんだよ?」
「あー………やっぱ私から話すわ」
話すことを嫌がった理由がわかった。私がまだ話していないことをうっかり漏らすのが嫌だったかららしい。加えて俊哉は初期のジェイドが嫌いだ。苦手ではない、嫌いだ。
そんなジェイドの視線を受けながら話したくないのだろう。
「こいつがフレイ。男。譜術と剣術を得意としてる。前にも言った通り、私とこいつでロニール雪山に一週間籠ることができる」
「まあ実際いた期間は一週間半だけどな」
「余計なことは言わんでいい」
すぱんと勢いよく頭を叩けば、いてっと呟いて頭を抱えて踞った。そんなに力強くは叩いてねーよ。なので放置。
「こいつに私達の素性を聞こうとしても無駄だ。こいつは何でか私が許可を出さない限りは余計なことは話さないし、無理に聞こうとするなら排除しかねない程短気なんだよ。あんまり深く掘り下げて、返り討ちで殺されないことだね」
特にジェイド。
そう締め括った後、ちらりとルークとイオンを見た。私に対して結構な懐き具合だったから、俊哉に対してもそうかと思ったが予想は外れて近付こうとはしなかった。脅したからかな?
「んで、こいつも連れてくならある程度の事情も説明しておいた方がいいと思うんだけど」
「ああ、そうですね」
頷いたジェイドが俊哉に説明する中、俊哉纏うオーラは不機嫌そのもの。何が楽しくてこいつの説明なんか受けなきゃならないんだ知ってるっつーの。言葉にしたらそんな感じ。
その雰囲気を感じ取っているからか、説明はやけに簡潔に済まされた。補足は私から聞けばいいとでも思っているんだろう。知ってるから別に不要だしいいんだけどね。
「では明日の八時にロビー集合ということで」
「了解」
「じゃあまた夕飯でね」
不機嫌丸出しのまま無言で部屋を出ようとする俊哉に続いて、ルークとイオンに軽く手を振りながら退室する。
私達の部屋は二つ隣。最初はティアと同室にされそうだったが、俊哉の「俺と一緒じゃないならウィンを連れて街を出るからな」の一言でルークとイオンが部屋決めを覆した。最終的には三人も同意したので、何事もなかったのだが。中々の横暴。
部屋に戻って真っ先にしたのは、マントを剥ぎ取ること。ずっと羽織ってると蒸れるのだ。頭が。
「ふぅ………」
「暑い!蒸れる!禿げる!」
「お前は死活問題だよな」
半泣きの俊哉に笑いつつ、カーテンを閉める。話し込んでいる内に夕日が照るようになっていた。その夕日がお互いの髪に反射して、目が痛い。
カーテンを閉めればある程度薄暗くなった。暗い方だと、たとえ扉から覗かれていても見えにくい。いつもこの格好のときにやっていることだった。
暫くバタバタ髪を払っていた俊哉が、漸く気が済んだのか勢いよくベッドに転がった。
「はー、やっと気持ち悪くなくなった………」
「髪が短いくせに何で私より時間かかってんの」
「俺は早い段階で禿げるなんて嫌だ………」
「男は大変だね………」
まだ25だよ。なのに生え際気にするなんて………アッシュもだったか。でもあいつの場合は髪型直せば大分改善されると思うんだ。まだ時期じゃないからって直しゃしないんだけど。
「んで?」
「んあ?」
隣のベッドでぐったりしていた俊哉が何かを促してきた。咄嗟のことに何のことだかわからずハテナマークを飛ばしていると、呆れたような溜め息を吐かれた。
「あいつらに着いていくのかよ?」
「まあね。嫌?」
「嫌じゃねえけどよ。お前も知ってるだろ?俺がこの段階で嫌いなの」
「知ってるけどさ。あの子を放っておくってのもなぁ」
私が気にしているのはルークだ。愚かな仲間とやらの所為で孤立してしまう。教えることを面倒臭がり自分達のペースで進んで、遅れることをよしとしない。
そんなのは仲間だなんて言わない。ただ同行しているだけ。自分の命を預けられる存在ではない。
「あの子の傍にできるだけいてやりたい。けどそれは私のわがままだから、無理に付き合う必要は………」
「何言ってんだよ。お前が行くなら俺も行くに決まってんだろ?何の為の相棒だよ」
「そうは言ってもな………」
「それにあの方からは許可は頂いてある。必然に迫られて帰るまでは俺達の判断で自由にしていいそうだ」
その言葉に驚いたのは当然のこと。私達の本来の仕事を放り投げてもいいと言われたようなものだからだ。普段からサボり癖のある陛下の抑止力として宮殿に積めることもある。
アスランになんか買っていこう………胃薬も。
まあ許可が出ていたのなら話は早い。
「んじゃ、お言葉に甘えますか。幸いにして私達の名前は、ダアトやキムラスカにも知れ渡っている。バチカル後はそのときに決めよう」
「了解」
顔を見合わせて笑い合った後、二回ハイタッチをして話を終わらせた。丁度扉の外から気配を感じたから。
「おーい、ウィンとフレイー、飯だってよー」
「今行くよ」
先程脱いだばかりのマントを羽織り、ぶつくさ言いながらフードを被った俊哉を確認して扉を開いた。そこにいたルークとガイと共に食堂に下り、全員で食事をした。
終わった後すぐに部屋に引っ込んだ私達は、離れていた間のことを話していた。その際うっかりルークを庇って負った怪我まで言ってしまったので、風呂に入るまで延々説教されてしまった。
ちくしょー。