外殻大地編 2
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瑠璃side
あれからセントビナーに向かう道を歩いているのだが。
「何でお前らまで後衛に行ってんだこらぁ!」
「いやですねぇ、貴女が真っ先に突っ込んでいくから出番がないだけですよ」
最初の一戦以降ずっと私だけが前衛に立たされていて、イオンを含む全員がその後ろで突っ立っている状態だ。
イオンは仕方ないからまだいい。ルークに関してもまあ願ったり叶ったりだから別に問題はない。ティアも女の子だしどちらかといったら中・遠距離タイプだから立ち位置としては普通だ。問題なのは他二人だ!
「何もしようとしないとかアンタはそれでも軍属か!」
「………えっと、それ私にも余波が来るのだけど」
「あ、ごめんティア」
あっさり謝った。だって基本飛び道具か術だぜ?前線に出す方がおかしいよ。
仕方ない。
「抜けようかな………」
「駄目だ!」
「行かないでください!」
「おわっ!」
ボソッと呟いた脅しに、速攻でルークとイオンがくっついてきた。思わずビクつく。
ここまで懐くか普通。
「冗談だよ………」
「本当か?」
「本当本当。まず抜けるって言ったって、ジェイドから逃げるのは難しそうだしー、それにこの先のセントビナーでフレイと待ち合わせてるんだから今抜けてもデメリットしかないでしょ」
にーっこり笑うジェイドを視界に入れつつ、落ち着かせるようにぽんぽんと肩を撫でる。
俊哉の格好も私と同じだろうから、勘違いされて近付かれても都合悪いし。あいつに連絡する時間がなかったから驚くだろうし。
「そういえばフレイとの待ち合わせ場所は何処なの?」
「ん、大樹の近くって言ってある。移動するときは伝言頼めともね」
陛下から用事なければ移動はない、と信じたい。なにせ任務を出されるのは唐突だ。本当に。
振り回されるこちらの身にもなってほしい。
「あいつ側に何かない限りは移動してないと思うけど。突然依頼が来るからなー。私に連絡ができないからあいつにいってる可能性あるな」
「依頼?誰からだ?」
「一般市民からだよ。たまに貴族。相手によって金額を変えてるから、民間人の受けは上々」
暇な休日には傭兵擬きをしているから、嘘ではない。金額も平民や貧困層だったら破格の値段だったりボランティアだったりするので、次の予定がいつかをわざわざ聞きに来る人もいるぐらいだ。
逆に貴族達からは怪しまれない程度に値段を上げている。貴族からの報酬に限らず傭兵での報酬は全て孤児院や貧困層に分けている。軍での給与が十分すぎるから、使えないならあげてしまえと言うのが私達の共通の思いだ。
「お、魔物」
また現れた魔物に呆れる。この世界に来てから鍛練は欠かしていないから、ここら辺の魔物では完全な役不足だから正直物足りない。だが今は一人旅でも俊哉との二人旅でもないから。
仕方ない、と諦めて刀を抜いた。
一体目は蜂に似たビー。飛んでいる敵には刀一本で十分だ。居合い抜きのように縦に振れば、両断されたビーが地に落ちて音素(フォニム)に還る。
二体目はプチプリ。小さく気の弱い魔物だが、戦闘になったら敵には向かってくる。チマチマした歩幅で向かってこようとしているがもう一本を抜いて横に凪ぎ、頭に生えた葉を切断すれば攻撃する術をなくす。慌てたプチプリは上から叩きつけるように斬りつければ、またも両断された。
ぱたりと力なく地に伏せる様を見ることなく前を見れば、三体目のチュンチュンが来ていた。
チュンチュンは素早く、気を付けなければ上空から突然来ることもある。チュンチュンの体が降下してきたところを狙い片方の羽を切り落とす。突然羽を切り落とされたチュンチュンは悲鳴のような鳴き声をあげて墜落する。地面に落ちる前にもう一度刀を振れば、胴体を斬られたチュンチュンが一鳴きして絶命した。
四体目のサイノックスは猪なのかサイなのかよくわからないがそっちの方に似ていて、突っ込んでくる辺り猪寄りだ。向かってきたところを軽く避け、振り向き様に一閃。怯んだところにもう一閃。動きが鈍くなったところで眉間に一突き。
これで終わり。
「はー、鮮やか且つ手際よくだな」
「弱すぎて話にならない」
「嫌味か」
ガイが感心したような声をあげたが、物足りないという意味を込めて呟けばルークに突っ込まれた。いや、嫌味ではないよ?本当に。思わず言っちゃっただけで。
「さて、さっさとセントビナーに入ろう。フレイを待たせ過ぎてもグチグチ言われそうだからな」
「さんせーい。もう歩き疲れたぜ」
「ルーク、お前何もしてないだろー?」
「まったく、もう………」
「はっはっは、さあ行きましょうかー」
白々しいジェイドの笑いをスルーしながら、既に視界に入るセントビナーの城壁を見つめた。
もうすぐだ、やっとここまで来れた。私達の目的を果たす、最初の布石を手に入れれた。