プロローグ(過去編)
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場所はグランコクマでも貴族の屋敷が建ち並ぶ通称貴族街の一角。フリングス家の屋敷の中の私室に案内され、二人揃ってソファに座らされた。
「さて、ここなら他の奴らには聞かれないだろう。全て話してもらえるか」
「………」
陛下の問いにどう返せばいいのかと思い悩み、俊哉の方に視線を向ける。視線に気付いた俊哉も私の方を向き、困ったように首を微かに傾げた。
途方に暮れていると屋敷の使用人の人が入ってきて、紅茶を用意してくれた。喉が乾いていたのでそのまま飲む。渋味と微かな甘味に思わず安堵の息を漏らすと、目の前の二人が微かに笑った気がした。
「何の疑いもなく飲むんだな」
「………え!?なんか仕込んでたんですか!?」
ぎょっとして二人と手元の紅茶を交互に見やると、更に笑われた。ちょっとショック………。
若干不貞腐れながらも今後について思案する。この世界に味方なんて私と俊哉は互いしかいない。この世界で味方を作るなら、慎重にいかなければならない。
この人達が味方になってくれれば心強い。陛下やフリングス将軍の性格や人となりはゲームで一通り見たし、どちらかと言えばいい人達だ。真剣に頼めば真意を汲んできちんと成してくれる。そこに損得なんて殆ど考えてないんじゃないかと思う程に。
それに七年前といえばアッシュが誘拐されルークが生まれる年。早く強くなって早めにアッシュと接触したい。ヴァンへの信頼が薄らいでいる内に。
ルークとアッシュ、二人の身体と心を救いたい。あの旅の殆どですれ違い、理解し合う機会が少なかった二人を普通の友人のように接することができるように。私が理想とする最低限の関係になればいい。
この世界に来た理由が何であれ、折角のチャンスなんだ。形振り構ってなどいられない。
意を決し、カップをローテーブルに置いた。
「わかりました。一通りの説明はしますが、全て真実です。貴方達の想像を遥か上をいくでしょうが、質問はあとでお願いします」
「わかった」
「わかりました」
二人が頷いたのに安心していると、突如横から攻撃を受けた。俊哉が肘を突き出したのだ。完全に油断していた私は、その肘を避けるどころか。
「ーーーっ」
完全に脇腹に入った。
「お、おい大丈夫か?」
「す、少し………お待ちを………っ」
脇腹を押さえて悶える私が流石に不憫に感じたのか、陛下が私の傍に寄ってきた。そのまま横に座りふわふわと頭を撫でられてしまい、思わず硬直した。頭撫でられるなんて殆ど始めてのようなものだから。
固まったのがわかったのか、俊哉が助け船を出すように私に謝ってきた。本人もまさかクリーンヒットするとは思わなかったらしい。
「わりぃ」
「い、いや悪気があった訳じゃなさそうだから、別にいいけどさぁ。もうちょっと手加減を、してくんないかな………」
「いや、うん、マジで悪かった」
そう言って肘鉄を入れた脇腹を撫で始めた。自分と違う体温だが慣れ親しんだものに、少しずつ痛みが引いてきた。端から見れば男二人に介抱される状態なので、逆ハーレム?に見える。
フリングス将軍も特に何も言うことなく(逆に何か言ってほしい)、用意された紅茶を飲みながら微笑んでいた。仙人か。二十代だろ七年前なら。
「いてて………もう大丈夫ですんで、お戻りください」
「………そうか?無理はするなよ」
最後にぽふぽふと頭を軽く叩かれ、頷くとソファに戻っていった。その間に小声でさっきの肘鉄の意味を正確に理解していた私は俊哉に未来の理想を伝えると、以前同じことを愚痴っていたからか特に反論することなく頷いた。
ソファに座った陛下を見て居住まいを正し、俊哉と視線を合わせて頷く。
そこからはずっと話していただけだった。地球のこと、日本のこと、習慣、政治、文明、言語。高々18の私達が知り得ることは、恐らくほんの一部だろうけど。それでも一生懸命考えながら、時に俊哉と答えを照らし合わせながら話し続けた。