Story.2 the fashion show
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月曜日の就業後、事務所に行くと、私は初めて他のスタッフの人たちに出会った。2人とも女性で、私のことを満面の笑顔で出迎えてくれる。
「苗字さんが土日に来てくれたお陰で、本当に助かりました。本当に有難うございます。しかもモデルまでやって頂けることになるなんて」
「本当にそうです! 私たちだけではきっとムリでした」
「いえ、そんなことは。それよりモデルなんてやるのは初めてなので、色々ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
2人と試着室へ行くと、ドレスのサイズは完璧だった。それにこんなに素敵な衣装を着るのは初めてなので、私は鏡の中の自分にビックリしてしまう。
「わぁ、やっぱり苗字さん、可愛いからよく似合いますね! サイズも完璧ですし」
「ほんとに! これなら何も問題ないですね。完璧なモデルさんですよ」
改めて着てみてわかった。この衣装は本当に、小柄な人しか着られない。こちらのスタッフの2人は長身だから、やっぱり私がやらせてもらって良かったと思った。
チェックが終わると、今日やることは終わったので、また三ツ谷さんに送ってもらい、土曜の本番のことを打ち合わせながら歩く。
「……ってな感じで、当日はもうぶっつけでやってもらうしかねぇから、悪いけど頼むよ」
「はい! 一応これまで、数えきれないほど見てきてはいますので、出来る限り頑張ってみます」
もうマンションに着いてしまった。本当はもっと、三ツ谷さんと居たかったのに。私はどんどん、彼と別れたくないなぁと思う自分になっていく。
土曜日。ショー本番。私は出番がくると、緊張しつつも、出来る限りの笑顔でランウェイを歩いた。こんなに素敵なドレスで大勢の人の前に立つのは、きっと一生に一度だろう。それに何より、このドレスを皆んなに見て貰いたい。三ツ谷さんの思いが込められているからだ。
出番は無事に終わり、ショーは滞りなく続いた。私は衣装を返し、しばらく休憩したあと、会場からショーを眺めることにした。後方で見ていると、突然声をかけられた。
「苗字さん、君の出番、すごく良かったよ」
「ほんとほんと!! 君、ほんとのモデルになれるんじゃない!?」
振り向くと、スマイリーさんとアングリーさんだ。
「見てて下さったんですね……」
嬉しいけど、なんだかすごく恥ずかしい。それに前方の席には、千冬さんと場地さん、一虎さんもいる。マナちゃんとルナちゃんも。わぁ、私、皆んなに見られちゃったんだ……
ショーが終わると、初めて三ツ谷さんに会えた。彼は今日、色々と大忙しだったから、挨拶すら出来ていなかったのだ。
「苗字さん、ほんとに有難う。君のキャットウォーク、めちゃくちゃ良かったよ。皆んなも絶賛してた。完全にプロのモデルだったよ」
「お役に立ててよかったです」
あぁ、もう本当に本当に、嬉しい! 今日のことは一生の思い出だ。
「なぁ苗字さん、このあとオレらは会場の片付けで遅くまで帰れねぇけど、明日はスマイリーや場地たちも呼んで、昼から飲み会やるんだ。良かったら君も来ないか?」
「私も行っていいんですか? 是非ぜひ行きたいです!」
私はまた彼らに会えることになり、心から嬉しくなった。
けれどもその夜のことだった。カタン、と玄関のポストに何かが入れられる音がして、私は怖くて震え上がった。こんな夜遅くに配達なんてあるわけがない。
まさか、また……?
心臓の鼓動音が大き過ぎて痛い。身体中もこわばっているし、冷や汗も流れてくる。それでも長い時間かかって、私は郵便受けを確認した。
そこには一枚の写真が入っていた。それは先ほどのショーに出ていた、私がうつっているものだ。私は素晴らしいドレスを着て、メイクも完璧で、颯爽とした笑顔でランウェイを歩いている。それはたった数時間まえの私で、一生の思い出に残る幸せな瞬間だった。それなのにいまの私は、もう完全に別人だろう。怖くて震えて、顔面蒼白に違いなかった。
「苗字さんが土日に来てくれたお陰で、本当に助かりました。本当に有難うございます。しかもモデルまでやって頂けることになるなんて」
「本当にそうです! 私たちだけではきっとムリでした」
「いえ、そんなことは。それよりモデルなんてやるのは初めてなので、色々ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
2人と試着室へ行くと、ドレスのサイズは完璧だった。それにこんなに素敵な衣装を着るのは初めてなので、私は鏡の中の自分にビックリしてしまう。
「わぁ、やっぱり苗字さん、可愛いからよく似合いますね! サイズも完璧ですし」
「ほんとに! これなら何も問題ないですね。完璧なモデルさんですよ」
改めて着てみてわかった。この衣装は本当に、小柄な人しか着られない。こちらのスタッフの2人は長身だから、やっぱり私がやらせてもらって良かったと思った。
チェックが終わると、今日やることは終わったので、また三ツ谷さんに送ってもらい、土曜の本番のことを打ち合わせながら歩く。
「……ってな感じで、当日はもうぶっつけでやってもらうしかねぇから、悪いけど頼むよ」
「はい! 一応これまで、数えきれないほど見てきてはいますので、出来る限り頑張ってみます」
もうマンションに着いてしまった。本当はもっと、三ツ谷さんと居たかったのに。私はどんどん、彼と別れたくないなぁと思う自分になっていく。
土曜日。ショー本番。私は出番がくると、緊張しつつも、出来る限りの笑顔でランウェイを歩いた。こんなに素敵なドレスで大勢の人の前に立つのは、きっと一生に一度だろう。それに何より、このドレスを皆んなに見て貰いたい。三ツ谷さんの思いが込められているからだ。
出番は無事に終わり、ショーは滞りなく続いた。私は衣装を返し、しばらく休憩したあと、会場からショーを眺めることにした。後方で見ていると、突然声をかけられた。
「苗字さん、君の出番、すごく良かったよ」
「ほんとほんと!! 君、ほんとのモデルになれるんじゃない!?」
振り向くと、スマイリーさんとアングリーさんだ。
「見てて下さったんですね……」
嬉しいけど、なんだかすごく恥ずかしい。それに前方の席には、千冬さんと場地さん、一虎さんもいる。マナちゃんとルナちゃんも。わぁ、私、皆んなに見られちゃったんだ……
ショーが終わると、初めて三ツ谷さんに会えた。彼は今日、色々と大忙しだったから、挨拶すら出来ていなかったのだ。
「苗字さん、ほんとに有難う。君のキャットウォーク、めちゃくちゃ良かったよ。皆んなも絶賛してた。完全にプロのモデルだったよ」
「お役に立ててよかったです」
あぁ、もう本当に本当に、嬉しい! 今日のことは一生の思い出だ。
「なぁ苗字さん、このあとオレらは会場の片付けで遅くまで帰れねぇけど、明日はスマイリーや場地たちも呼んで、昼から飲み会やるんだ。良かったら君も来ないか?」
「私も行っていいんですか? 是非ぜひ行きたいです!」
私はまた彼らに会えることになり、心から嬉しくなった。
けれどもその夜のことだった。カタン、と玄関のポストに何かが入れられる音がして、私は怖くて震え上がった。こんな夜遅くに配達なんてあるわけがない。
まさか、また……?
心臓の鼓動音が大き過ぎて痛い。身体中もこわばっているし、冷や汗も流れてくる。それでも長い時間かかって、私は郵便受けを確認した。
そこには一枚の写真が入っていた。それは先ほどのショーに出ていた、私がうつっているものだ。私は素晴らしいドレスを着て、メイクも完璧で、颯爽とした笑顔でランウェイを歩いている。それはたった数時間まえの私で、一生の思い出に残る幸せな瞬間だった。それなのにいまの私は、もう完全に別人だろう。怖くて震えて、顔面蒼白に違いなかった。